甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【笛吹市】甲斐奈神社(一宮町)

今回は山梨県笛吹市一宮町(いちのみやちょう)の甲斐奈神社(かいな-)について。

 

甲斐奈神社は笛吹市南部の住宅地に鎮座しています。別名は橋立明神。

創建については詳細不明。笛吹市国府や甲府市にある同名の神社とともに式内論社に比定されています。戦国期には、天正壬午の乱で徳川家康の軍勢によって社殿を焼失したとのこと。

境内には拝殿・本殿のほか随神門と神楽殿があります。また、自転車のお祓いやお守りがあることでも知られています。

 

現地情報

所在地 〒405-0075山梨県笛吹市一宮町橋立84(地図)
アクセス 山梨市駅または春日居町駅から徒歩1時間
一宮御坂ICから車で5分
駐車場 20台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道と随神門

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甲斐奈神社の境内は南向き。

鳥居は木造の両部鳥居。前後の稚児柱は屋根がつながっていて、主柱が屋根を突き破っています。扁額は「甲斐奈神社」。

 

12月の前半なのに初詣の幟が上がっていて、なんとも気が早いです。

この神社は自転車で訪問したいと前々から思っていたので、今回は輪行で山梨市駅から来ました。駅から少々距離がありましたが、平坦な農道や住宅地を走るだけなので快適です。

 

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随神門は一間一戸の八脚門、切妻、鉄板葺。

正面側の1間は吹き放ち。

柱はいずれも角柱で、正面は中間の柱をとばして1間となっています。

 

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虹梁は唐草が彫られています。中備えは中央が蟇股、左右は束と肘木。

柱上に組物はなく、肘木で軒桁を受けています。

軒裏は一重のまばら垂木。

 

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右側面(東面)。

背面側の柱間は壁板が縦方向に張られています。

妻虹梁の上の妻飾りは、笈形付き大瓶束。笈形はシンプルですが渦巻いた雲の意匠が彫られています。

 

神楽殿

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参道の右手には神楽殿。

入母屋(妻入)、鉄板葺。

 

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柱は几帳面取り角柱。木鼻は拳鼻。

正面(写真右)の虹梁は中央に武田菱が描かれ、中備えは木鼻のついた平三斗。

側面(写真左)の虹梁中備えは平三斗が2つ置かれています。

軒裏は一重のまばら垂木。

 

拝殿

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拝殿は入母屋(平入)、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。

向拝の垂れ幕には武田菱。

 

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垂れ幕やしめ縄のせいでわかりにくいですが、向拝柱は角面取りの角柱。

木鼻は象鼻。柱上の組物は出三斗。

 

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水引虹梁は唐草が彫られ、中央には武田菱。中備えは木鼻のついた平三斗。

唐破風の軒下は、笈形付き大瓶束と蟇股のハイブリッドといった趣の独特な意匠。

破風板からは兎毛通と桁隠しが下がっています。

 

本殿

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拝殿の後方には塀に囲われた本殿が鎮座しています。

桁行正面1間・背面2間・梁間2間、一間社入母屋、向拝1間、銅板葺。

造営年は不明。江戸中期あたりのものと思われます。

祭神は国之常立神、タカミムスビ、イザナキ、イザナミの4柱。

 

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正面側には通路(幣殿?)があり、向拝正面はほとんど見えません。

向拝柱は角面取り。側面(写真手前側)には象の木鼻がついています。柱上の組物は連三斗。

向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。母屋側は組物の上部というかなり高い位置から出ていて、向拝柱の組物の高さまで降りています。

丸桁の桁隠しは菊の意匠。

 

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母屋柱は円柱。扉は母屋の前面から少し奥まった個所に立てられていてよく見えません。

正面の頭貫の上には、中央に組物、その左右に蟇股。題材は花鳥と思われます。

 

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右側面(東面)の軒下。

側面(梁間)は2間で、真ん中の柱には金色の紙垂がついています。

頭貫木鼻は拳鼻。組物は木鼻のついた出組。

中備えは蟇股。花鳥が彫られています。

持ち出された桁の下には軒支輪。

軒裏は二軒の繁垂木。

 

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背面。こちらは2間となっています。

縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き、床下は縁束、背面は脇障子でふさがれています。

軒下の意匠は側面と同様。

母屋柱は床下も円柱に成形されていました。

 

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入母屋破風の妻には木連格子。破風板の拝みには鰭のついた蕪懸魚。

大棟は箱棟。鬼板には特に紋などは描かれていません。

 

以上、甲斐奈神社(一宮町)でした。

(訪問日2020/12/12)