今回は福井県の観光地ということで、鯖江市の舟津神社(ふなつ-)について。
舟津神社は鯖江市の市街地の山際に鎮座しており、延喜式内社にも記載がある県内屈指の古社です。歴史ある神社のだけに境内は非常に広く長く、うっそうと茂った社叢に覆われています。
社殿についてはいずれも県重文指定にとどまっていますが、普通の神社とは社殿の配置が異なるうえ、本殿はとても神社のものとは思えないような造りをしています。
現地情報
所在地 | 〒916-0054福井県鯖江市舟津町1-2-32(地図) |
アクセス |
鯖江駅から徒歩10分 鯖江ICから車で10分 |
駐車場 | 20台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道と鳥居
正面側から境内に入ると、一の鳥居があります。扁額は「舟津宮」。
ご覧のように境内は非常に縦長で、社叢の樹木の密度もかなりのもの。写真は二の鳥居。
境内の周辺はわりと街中っぽい住宅街で、木立の隙間から境内の外がのぞいて見えたりするのですが、写真だと深い森の中みたいな雰囲気になっています。
更に進むと三の鳥居があります。こちらは県重文の「大鳥居」で、1800年再建とのこと。
案内板(設置者不明)によると「笠木の上に屋根を付ける越前型の典型」だそうですが、“越前型”という言葉を聞くのは初めてですし、笠木に屋根が付いた鳥居は全国的にあると思います。
本殿の前まで来ると、最後の鳥居があります。こちらは「赤鳥居」という名前で、県重文に指定されており、1774年に奉納されたとのこと。
扁額には「舟津神社」とあり、笠木には屋根がついています。
本殿
写真左にある社殿は、拝殿ではなく本殿です。
本殿の前には門の跡のような土台が残っていますが、これは割拝殿(わりはいでん)の跡。1991年に台風で倒壊してしまったそうです。割拝殿は現存しているものが少なく貴重なだけに、非常に惜しいです。
ちなみに、割拝殿というのは中央部が土間の通路になった拝殿のことをいいます。
そしてこちらが本殿。屋根はこけら葺。向拝は3間あります。
大棟には石材が使われているようです。1816年再建、1820年竣工とのこと。
では、母屋の間口はどうなっているでしょうか。
母屋の正面側の図。中央に扉があり、そのほかの柱間は格子状の建具がつけられています。扁額は「船津宮」。
柱間は5つあります。つまりこれは五間社(ごけんしゃ)です。五間社の神社本殿は非常に少なく、貴重です。
側面の柱間は4つ。奥行きのある社殿なので屋根が高いです。
出三斗(でみつど)というタイプの組物で持ち出された梁の上に、貫(ぬき)の通った束(つか)が並び、その上にさらに組物と梁を配置した、非常に凝った造りをしています。
縁側は壁面と直行に板を張った切目縁(きれめえん)。案内板では木口縁(こぐちえん)とありましたが、言わんとしていることは同じでしょう。
縁の下を見ると、母屋の柱は「床上は円柱だが床下は八角柱」という、お馴染みの手抜きがなされています。
また、ピンボケで見づらいですが縁側を支える組物も独特で、ふつうなら肘木を配置する場所に梁を渡しています。このような造りは初めて見ました。
本殿を左前から見た図。木のせいで見づらいですが、正面側の屋根が長く伸びており、これは流造(ながれづくり)という様式です。
よって、この本殿はこけら葺の五間社流造、正面5間・側面4間、向拝3間。
流造は神社建築ではメジャーな様式なのですが、正面5間・側面4間という平面は、本殿としては異常なほどに大きいです。
本殿の背部を、左後方から見た図。ご覧のように、母屋の後方に側面2間・背面3間の小屋(?)がついており、この社殿の平面構造は「凸」の字のようなシルエットになっています。この突き出た部分は、案内板を読む限りだと、神座と思われます。
最後に、本殿を正面から見た図。
参道に鳥居が4つもあったり、割拝殿の跡があったり、神社とは思えないような大型本殿があって、しかも凸字型の平面構造になっていたりと、普通の神社とは一味もふた味もちがった境内になっていて驚きの連続でした。
当たりまえですが、私が普段から慣れ親しんでいる長野・山梨の神社とはまったく趣がちがっており、見るものすべてが新鮮に感じられました。
以上、舟津神社でした。
(訪問日2019/08/12)