甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【大館市】大館神明社

今回は秋田県大館市の大館神明宮社(おおだて しんめいしゃ)について。

 

大館神明社は花輪線・東大館駅の近くに鎮座しています。

創建は不明。社殿によれば、878年(元慶二年)には確立されていたとのこと。当初は同市泉町に鎮座していましたが、1675年(延宝三年)に佐竹氏によって現在地に移転され、近在の村の総鎮守となりました。

現在の境内社殿は、明治以降のものと思われます。神明造の本殿のほか、境内には多くの摂社・末社が鎮座しています。

 

現地情報

所在地 〒017-0867秋田県大館市中神明町1-5(地図)
アクセス 東大館駅から徒歩3分
大館南ICから車で10分
駐車場 20台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

参道

大館神明社の境内は西向き。

境内入口は線路の踏切に面した場所にあります。

社号標は左が「大館神明社」、右が「大館総鎮守」。

 

一の鳥居は銅板でカバーされた神明鳥居。

参道には玉砂利が敷かれています。

 

橋の先には石造の冠木門。

その先には二の鳥居。

 

拝殿

拝殿は、入母屋、向拝1間 軒唐破風付、銅板葺。

 

向拝柱は几帳面取り。柱上の組物は、平三斗を2つ並べたもの。向拝柱の側面には波の意匠の木鼻。

向拝の両脇には、軒桁を支える柱が左右各1本追加されています。積雪対策でしょうか。この支柱は几帳面取りで、柱上は皿斗と舟肘木。

 

中備えは出三斗と蟇股。

唐破風の小壁には笈形付き大瓶束。

破風板の兎毛通は雲の意匠の彫刻。

 

向拝柱の組物の上からは海老虹梁が伸びています。軒裏のかなり高いところをカーブして通過しています。

中備えの組物の上には手挟。

 

海老虹梁の母屋側は、頭貫の下に取り付いています。

母屋からは木鼻のついた腕木が突き出て、巻斗を介して海老虹梁を持ち送りしています。

 

母屋柱は角柱。

柱上には台輪が通っています。

組物は出三斗と平三斗。頭貫には象鼻。

中備えは蟇股。

 

側面は3間。

前方の2間はガラス戸、後方の1間は横板壁。

縁側は3面にまわされ、背面側は脇障子を立ててふさいでいます。

 

本殿

拝殿の後方には幣殿と思しき社殿(左)と本殿(右奥)。

 

本殿は、三間社神明造、鉄板葺。

祭神はアマテラス、大歳神、ウカノミタマ*1

 

柱は円柱、柱上は舟肘木。妻飾りは豕扠首。

軒裏は一重。

母屋の外には、細めの棟持柱が立てられています。

 

屋根には千木と鰹木。

千木は屋根から突き出ています。長方形に開口され、先端が水平にカットされた形状。いわゆる女千木。

大棟の上には、紡錘形の鰹木が4本載っています。

 

境内社

境内の北側(参道右手)には多数の境内社が鎮座しています。

こちらは右端(東)にある松尾金神神社。

 

屋根は流造ではなく、切妻。

柱のかなり低い位置に長押と台輪が使われています。

 

古四王神社。

こちらは流造です。

 

虹梁の絵様や蟇股の彫り方が独特。

組物の肘木もおもしろい形状です。

 

母屋柱は角柱。柱上は出組。

中備えは蟇股。妻飾りは笈形付き大瓶束(?)。

 

古四王神社の左側は大館天満宮。

こちらは覆い屋で、内部に本殿が収められています。

覆い屋は、入母屋(妻入)、銅板葺。

 

頭貫と台輪には禅宗様木鼻。

組物は出三斗や平三斗を2つ重ねたもの。中備えは蟇股。

 

正面の妻面。

破風板の拝みには鰭付きの蕪懸魚。

入母屋破風の奥には虹梁と蟇股が見えます。

 

内部の本殿は、一間社流造、銅板葺。

総ケヤキ造と思われます。

 

向拝柱は几帳面取りで、側面には見返り唐獅子の彫刻。

虹梁中備えは竜の彫刻。

向拝柱上の組物は、皿付きの出三斗。

母屋前面には桟唐戸が設けられ、その上下左右に彫刻がはめ込まれています。

 

縁側は3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。

正面の階段の下にも彫刻が入っています。

基壇は大理石のような石材が使われています。

 

大館天満宮の左には神輿殿。

内部には、このような六角形の神輿が置かれていました。

 

以上、大館神明社でした。

(訪問日2022/04/10)

*1:境内案内板より。