今回は長野県の超メジャー観光地ということで、北向観音(きたむきかんのん)について。
北向観音が鎮座する別所温泉(べっしょ-)は、安楽寺八角三重塔の記事でも書いたように"信州の鎌倉"と呼ばれるほど多数の寺院が存在しています。その中枢とも言えるのが北向観音です。
たいていの建物は南を正面にして造られるものですが、この北向観音は長野市の善光寺と向かい合う、という名目で北を正面にして建てられており、これが名前の由来になっています。実は善光寺と向かい合ってはいないのですが、善光寺を拝んで北向観音を拝まないのは"片参り"だということで、正月は参拝客でごった返します。
今回は安楽寺八角三重塔をじっくり見たくて別所温泉に来たのですが、拝観受付まで時間があったので北向観音で時間をつぶすことになりました。そうした経緯もあって、今回は建築の解説は少なめで、わりと普通の観光記事となっております。
現地情報
所在地 | 〒386-1431長野県上田市別所温泉1656(地図) |
アクセス |
上田電鉄別所線 別所温泉駅から徒歩15分 上田菅平ICまたは坂城ICから車で30分 |
駐車場 | 40台程度(500円) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 北向観音・常楽寺 |
所要時間 | 15分程度 |
駐車場から北向観音までは、温泉街のゆるい坂道を10分くらい歩くことになります。
なお、温泉街のほうまで車で乗り入れることもできますが、駐車場はほとんどが宿泊客向けのもののうえ、温泉街は道が狭くて歩行者が多いので要注意です。
境内
仲見世
北向観音の仲見世。川床のような地形になっています。
温泉街なので各所にお湯の湧く井戸があり、この下り階段の辺りから湯の花(硫黄)の香りが漂ってきます。
階段の下から見た北向観音。
訪問時は朝の08:00頃だったので閑散としていましたが、もう少し時間がたつと仲見世も賑やかになってきます。
北向観音の周辺
手水舎。
例のごとくここもお湯が出るので、初詣など寒いときは有り難いです。
手水のほか、北向観音の周囲には鐘つき堂や仁王像など、多数の見所があります。
また、開けた高台にあるため、見晴らしもまずまずです。
北向観音
そしてこちらが北向観音。
勘の良い人ならわかると思いますが、この建物、シルエットが善光寺とよく似ています。
似ているのは正面だけではありません。
こちらは背面。
正面は妻入、背面は平入になっており、棟がT字の形状になっているのです。これを“撞木造”(しゅもくづくり)と言い、善光寺と同じ構造です。なお、撞木造になったのは1961(昭和36)年の増改築のときで、それまでは今とは異なる形状だったとのこと。
向拝の近辺を側面から見た図。
一見すると2階建てですが、1階の屋根に見えるのは裳階(もこし)という庇(ひさし)です。屋根ではなく、装飾を兼ねた雨よけなので簡易的な造りになっており、屋根の下と裳階の下とで組物の構造がぜんぜんちがいます。
また、屋根の下と裳階の下とで垂木の本数を見比べてみると、屋根の下は垂木が密であるのに対し、裳階(もこし)の下は垂木がまばらで簡易的に造られているのが解ると思います。
瑠璃殿
北向観音そのものの解説はこの辺にして、最後に、北向観音にお参りの際にぜひとも見ていって欲しい建物を紹介いたします。
こちらは瑠璃殿(るりでん)といい、崖を背にして骨組みの上に建物が造られた“懸造”(かけづくり)です。
画像からは分かりにくいですが、瓦葺きの入母屋で、正面には唐破風の向拝と千鳥破風がついています。1809年の再建とのこと。
東信地方には懸造が多数ありますが、この瑠璃殿は規模が大きく、骨組みがしっかりと木材で造られている点が素晴らしいです。
初詣など、混んでいるときに来るとつい見落としがちですが、瑠璃殿も一見の価値のある面白い建物ですので、忘れずに見ていって下さい。
ちなみに、私は毎年のように初詣で北向観音に来ていたのですが、この瑠璃殿の存在に気づいたのは割と最近だったりします...
以上、北向観音でした。
(訪問日2019/04/29)