甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【甲州市】雀宮神社

今回は山梨県甲州市の雀宮神社(すずめみや/すずめのみや-)について。

 

雀宮神社は勝沼地区の果樹園が広がる地帯に鎮座しています。

創建は不明。社伝によると610年(推古天皇十年)、天橋立から祭神を勧請したらしく、古くは橋立明神と呼ばれたようです。当初は、現在地より500メートルほど北西の、勝沼支所の近辺に鎮座していました。その後の沿革は不明ですが、室町から江戸時代にかけて、武田氏や徳川氏の崇敬を受けたとのこと。1866年(慶応二年)に本殿以外の社殿が暴風で倒壊しますが、明治維新の政変の影響で再建されず、1965年(昭和四十年)に現在地に遷座されました。

現在の境内や社殿は戦後に整備されたものですが、本殿は江戸後期のものが移築され、市の文化財に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒409-1316山梨県甲州市勝沼町勝沼2107(地図)
アクセス 勝沼ぶどう郷駅から徒歩20分
勝沼ICから車で5分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

拝殿

雀宮神社の境内は南向き。入口は旧甲州街道に面しています。

拝殿の手前にある鳥居は、石造明神鳥居。扁額は「雀宮神社」。

 

鳥居の左手には、金毘羅社が西面しています。

切妻(妻入)で、前方の1間通りを庇とした構造。

 

庇の柱は几帳面取り角柱。側面には大きな象鼻。

組物は出三斗の上に連三斗を置いた構造のもの。

 

妻飾りは二重虹梁になっています。虹梁の上には出三斗や大瓶束が置かれています。

 

拝殿は、入母屋、銅板葺。

 

正面中央の軒下の中備えは、板蟇股。

 

左側面(西面)。

縁側は3面にまわされ、側面後方には孫庇がついています。

 

柱は面取り角柱が使われ、柱上に台輪が通っています。

組物は皿付きの出三斗。

 

入母屋破風。妻面には木連格子が張られています。

懸魚はありません。

 

本殿

拝殿の後方には、金網に囲われた本殿が鎮座しています。

桁行正面1間・背面2間・梁間2間、一間社入母屋、向拝1間 軒唐破風付、銅板葺。

1810年(文化七年)造営*1、1965年(昭和四十年)移築。市指定有形文化財。

棟梁は下山大工の佐野喜内歌虎という人物。

祭神はイザナキとイザナミ。

 

正面の軒唐破風。

棟の鬼板には、鬼面がついています。

唐破風から下がる懸魚は、兎毛通は鳳凰、桁隠しは松が彫られています。

 

向拝の唐破風の下の虹梁。

虹梁には若葉の絵様が彫られています。

中備えの組物は、平三斗を2つ重ねたもの。手前と両側面に木鼻が出ています。

写真上端に見切れている小壁には、波の彫刻が配されています。

 

向かって左の向拝柱。

向拝柱は几帳面取りで、正面(写真右)は唐獅子、側面(手前)は象の木鼻がついています。

柱上の組物は、出三斗と連三斗を組み合わせたもの。

柱の後方(写真左)には斗栱が出て、海老虹梁の下面を受けています。

 

海老虹梁は、向拝の虹梁の高さから出て、母屋の頭貫の位置に取り付いています。

向拝柱の上の手挟には、獣を題材にした彫刻があります。題材はよく解りませんが、猿と桃に見えます。

 

反対側(東面)。

向拝の縋破風には、雲の意匠の懸魚があります。

 

向拝の下には、ゆるやかな傾斜の階段が5段。

階段の下は、向拝柱の周りに長押が打たれ、浜床が張られています。

 

母屋の正面の建具は板戸。

板戸の左右の欄間には彫刻があります。向かって左は降り竜、右は昇り竜。

 

母屋柱は円柱。

側面は2間。前方の1間は舞良戸、後方は横板壁。

縁側は切目縁が4面にまわされ、背面側は脇障子を立てて仕切られています。欄干は擬宝珠付き。

 

頭貫には象鼻がついています。

組物は三手先。中備えは蟇股。

桁下の支輪板には、波の彫刻。

 

正面は1間でしたが、背面は中央に柱が入り、2間となっています。

柱間は横板壁。

 

右側面。

こちらも前方の1間に舞良戸があります。

脇障子に彫刻はありません。

 

大棟は箱棟になっています。

鬼板には、正面の唐破風と同様に鬼面があります。

 

以上、雀宮神社でした。

(訪問日2023/04/22)

*1:棟札より