甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【甲州市】観音堂(横吹観音)

今回は山梨県甲州市の観音堂(かんのんどう)について。

 

観音堂は国道20号沿線の山間に鎮座しています。通称は横吹観音(よこぶきかんのん)。

創建は不明。伝承によると京都の清水寺から勧請された観音像を祀ったらしいです。その後の沿革は不明ですが、養蚕の守護神として信仰されたようです。

境内は旧甲州街道に面しており、急な山道の先の境内に観音堂だけが鎮座しています。江戸後期のものと思われる観音堂は、多数の彫刻で飾られており、市の文化財に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒409-1203山梨県甲州市大和町初鹿野(地図)
アクセス 甲斐大和駅から徒歩30分
勝沼ICから車で5分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
寺務所 なし
公式サイト なし
所要時間 20分程度

 

境内

参道

観音堂の入口はいくつかあるらしいですが、今回はこのトンネルの右脇にある通路から登って行きました。

写真は国道20号線の長柿洞門の南側で、奥が下り(甲府方面)、手前が上り(大月方面)です。

観音堂の入口を示す看板や、駐車スペースなどはありません。

 

参道は草が刈られていましたが、階段が整備されているのはごく一部で、ほとんどは幅員がせまいうえに欄干もない崖道です。

長柿洞門から観音堂までの所要時間は、片道5分程度。

 

観音堂

参道の先には観音堂が西面しています。周辺は灯篭が何基かあるだけで、ほかの伽藍はありません。

観音堂は、梁間3間・桁行3間、入母屋(妻入)、向拝1間、瓦棒鉄板葺。

造営年不明。私の予想になりますが、江戸後期のものかと思います。市指定有形文化財。

 

向拝は1間。

向拝と母屋をつなぐ梁はありません。

 

虹梁は絵様が彫られています。

中備えの蟇股には竜の彫刻。蟇股の上は実肘木ではなく通肘木が使われ、左右の組物と肘木を共有しています。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。側面には唐獅子の木鼻。

柱上の組物は連三斗。大斗に皿が付き、唐獅子の頭に乗った皿斗で持ち送りされています。

 

向拝の軒下を側面から見た図。

組物の上の手挟は、波の中に鹿らしき獣が彫られています。

写真上端に見切れている桁隠しは雲の意匠。

 

母屋は正面側面ともに3間で、前方の1間通りが吹き放ちの外陣となっています。

仏堂ではありますが、中央の柱間には紙垂(白い稲妻形の神)のついた縄がかかっています。

 

側面は3間ありますが、前方の1間は広く、後方の1間は狭くなっています。

外陣と内陣の境界は、格子の入った引き戸で仕切られています。

 

外陣部分、正面中央部。

柱はいずれも円柱。上端が絞られています。

組物は三手先。

台輪の上の中備えは蟇股。彫刻の題材は十二支で、上の写真は午(馬)。

蟇股の上には巻斗が並べられ、持ち出された桁の下には軒支輪が配されています。

 

向かって左手前の柱。

頭貫と台輪には禅宗様木鼻がついています。

 

側面および背面。

壁面は白壁ですが、落書きが目立ちます。

縁側は切目縁が4面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。

 

背面の隅の柱。

背面(写真左)の中備えは、間斗束が使われています。側面(写真右)には中備えがありません。

軒裏は二軒繁垂木です。

 

外陣内部は、板の天井が張られています。

内陣外陣の境界部の梁の上には欄間彫刻があります。

 

中央部の欄間の彫刻は鳳凰。

台輪の上の蟇股には牡丹の彫刻。

 

左右の柱間の欄間には天女の彫刻。

 

内陣には、四天柱に囲われた場所に厨子が置かれています。おそらく本尊の観音像が収められていますが、訪問時は閉扉していました。

暗くて詳細がよく見えないですが、厨子は透かし蟇股やシンプルな出三斗が使われ、和様の意匠で造られていました。

 

以上、観音堂でした。

(訪問日2023/04/22)