甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【稲沢市】尾張大國霊神社

今回は愛知県稲沢市の尾張大国霊神社(おわり おおくにたま-)について。

 

尾張大国霊神社は稲沢市街に鎮座しています。別名は国府宮(こうのみや)

創建は詳細不明。当地に尾張国府が置かれたころに創建されたようなので、奈良時代と思われます。平安期の『延喜式』に記載がある式内社です。

現在の境内は市街地に長大な参道が伸びています。社殿は楼門と拝殿が国重文となっているほか、屋根はほとんどが桧皮葺で非常に豪華な造りをしています。また、拝殿や本殿などは尾張造という当地に特有の配置で造られ、尾張国府宮の名にふさわしい風格を備えています。

 

現地情報

所在地 〒492-8137愛知県稲沢市国府宮1-1-1(地図)
アクセス 国府宮駅から徒歩3分
一宮ICから車で10分
駐車場 50台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト 尾張大國霊神社 国府宮|ご祈祷 はだか祭
所要時間 20分程度

 

境内

参道

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尾張大国霊神社の境内は南向き。写真は一の鳥居で、社頭までまっすぐな参道が数百メートルほど伸びています。

一の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「国府宮」。社号標は「尾張大國霊神社」。

 

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二の鳥居は木造の両部鳥居。扁額はなく縁束になっています。反りかえった笠木の曲線が空に映えます。

前後の柱は角柱で、主柱は内に転びがついています。

奥に見えるのは楼門と社叢。

 

楼門

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尾張大国霊神社の社頭は車道に面しています。

楼門の様式は、三間一戸、楼門、入母屋、檜皮葺。

国指定重要文化財

造営年代については下層の大部分が室町後期のもので、上層は江戸初期の改変によるもの。詳細は下記のとおり。

楼門の建立年代は、建築様式から判断すると腰組以下は室町時代後期の建立と考えられ、上層は昭和33年(1958)の解体修理の際に、中備巻斗(まきと)上端および東南隅木尻に正保3年(1683)3月吉日の墨書銘が発見され、上層柱盤以上はすべて新造されたことが知られる。また、下層でも蟇股(かえるまた)・彫刻・扉構などが改変されている。

文化財ナビ愛知「尾張大国霊神社楼門」より引用

 

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下層。

室町期のものだからか、太めの柱が使われています。

通路の左右の間には「國府宮」の大ちょうちん。随神や仁王などは置かれていないため、この門は「楼門」という少々味気ない名称となっています。

 

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頭貫木鼻は拳鼻。繰型は巻き数がやや多めで、丁寧な造形だと思います。

柱上の組物は出三斗。頭貫上の中備えは間斗束が使われています。

この部分は室町期のもののようです。

 

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中央通路上の蟇股と、内部の中備え。

蟇股は透かし彫りで、梅の木と水鳥(鴨?)が彫刻されています。

内部の中備え彫刻は、菊に戯れる唐獅子。

これらの彫刻は江戸初期の改編によるもの。言われてみると、題材や造形に室町期らしさはありません。

 

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右側面(東面)。

柱は礎石の上に立てられています。

壁面が横板壁になっているほか、各所の意匠は正面と大差ありません。

 

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上層。

腰組までが室町期のものなので、縁側の桁と床より上は江戸初期のものです。

縁側は切目縁、欄干は跳高欄。

柱は円柱で、見づらいですが中央は板戸、左右には連子窓が設けられています。中備えは中央が板蟇股(彫刻なし)、左右は蓑束。

組物は和様の尾垂木三手先。桁下には軒支輪。軒裏は二軒繁垂木。

屋根は当初こけら葺だったようですが、後述の社殿と統一したのか檜皮葺に改められたとのこと。

 

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斜め後方(北東)から見た図。

側面は連子窓と蓑束が使われています。背面は正面とほぼ同じ造り。

 

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破風板の拝みには蕪懸魚。入母屋破風内部は虹梁大瓶束。

大棟鬼板には五七の桐の紋。

 

拝殿などの社殿

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楼門と拝殿のあいだにある藩塀。裏側(拝殿側)は絵馬掛けになっていました。中央奥に見える妻入の屋根は拝殿。

 

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柱は円柱で、前後に控柱が立てられています。

長押の間には連子、柱の上部では腕木が桁を受けています。破風板の拝みには猪目懸魚。

小さな塀ですが豪勢に檜皮が使われ、細部の意匠も凝っています。

 

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拝殿の左手には手水舎。切妻、檜皮葺。

柱は角柱。とくに目立った意匠はありませんでした。

 

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拝殿は梁間3間・桁行5間、切妻(妻入)、檜皮葺。

江戸初期の造営国指定重要文化財

 

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柱は円柱。しめ縄のかかった貫の上にある板蟇股は、五七の桐が彫られています。

妻飾りは豕扠首。

破風板からは猪目懸魚が下がっています。

 

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左側面(西面)。こちらは柱間5間。

柱上の組物は舟肘木。頭貫に木鼻はありません。古式な和様の意匠です。

内部は床板が張られ、天井は格天井でした。

 

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拝殿の後方に立ち並ぶ社殿。

右が拝殿、中央の高い屋根が祭文殿、左の低い屋根が回廊。中央奥にわずかに屋根だけ見えるのが本殿。いずれも檜皮葺。

このように祭文殿や回廊で本殿を囲う社殿配置を尾張造(おわりづくり)といい、尾張国(愛知県西部)周辺に特有の様式です。

 

本殿を見たいので回廊の左右にまわり込もうとしたり境内裏まで行ってみたりしたものの、立入禁止の柵や社叢の茂みに阻まれ断念。尾張造は本殿を鑑賞しづらいのが玉に瑕ですね...

推測になりますが、本殿は三間社流造と思われます。

 

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最後に境内東側にひっそりとたたずむ国府宮六末社。

いずれも一間社流造、見世棚造、檜皮葺。

 

以上、尾張大国霊神社でした。

(訪問日2021/05/15)

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