甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【柏崎市】番神堂

今回は新潟県柏崎市の番神堂(ばんじんどう)について。

 

番神堂は柏崎市の海岸沿いの住宅地に鎮座している神仏習合の堂で、同市内にある日蓮宗・妙行寺の境外社(境外仏堂)になります。

創建は鎌倉時代で、佐渡に流されていた日蓮が嵐に遭いながらも当地に上陸し、無事に上陸できたことを感謝して八幡神などを祀ったのが由来です。番神堂は明治期の造営で、神社建築における「権現造」と類似した様式となっているほか、本殿に相当する箇所には派手な彫刻で埋め尽くされた欄間や腰羽目を見ることができます。

 

現地情報

所在地 〒945-0853新潟県柏崎市番神2-10-42(地図)
アクセス 鯨波駅から徒歩30分
柏崎ICから車で15分
駐車場 30台(無料)
営業時間 随時(※堂内は08:00-18:30)
入場料 無料
寺務所 あり
公式サイト なし
所要時間 20分程度

 

番神堂

拝殿

番神堂拝殿

駐車場から境内までは石灯篭などが立っていましたが、周辺は住宅地となっており、番神堂のほかはこれといった伽藍・社殿はありません。

番神堂は東向きで、建築様式は広義の「権現造」(ごんげんづくり)です。権現造については石の間の項にて後述します。

造営年は1878年(明治10年)。宮大工は四代目・篠田宗吉が棟梁とのこと。市指定文化財。

表向きは仏堂ということになっていますが、八幡神を中心に計30柱が合祀されています。

 

写真は、権現造の拝殿に相当する部分。

拝殿は桟瓦葺の入母屋(妻入)、軒唐破風(のき からはふ)の向拝1間。

 

拝殿向拝

向拝(こうはい)の軒下。

向拝柱は几帳面取りの角柱。木鼻の彫刻は、正面が唐獅子、側面が象。

虹梁(こうりょう)の中備えは竜。その上にはハト(あるいはカモメ?)の彫刻が見えます。

唐破風の中央から垂れ下がる兎毛通(うのけどおし)は鳳凰。

写真上端に見える鬼瓦には、文字どおり鬼の顔。

 

案内板(柏崎市教育委員会)によると、「三階節」なる民謡に“番神堂がよく出来た 向拝(ごはい) 向拝の仕掛けは 新町(しんまち)宗吉(そうきち) 大手柄”と唄われているとのこと。

 

拝殿向拝の梁

向拝柱(右)と母屋柱(左)は、あまり曲がりのついていない梁でつながれています。

梁の上方では植物(題材不明)が彫られた手挟(たばさみ)が垂木を受けており、明治期のものなのでとても良い造形です。

母屋柱は円柱で、柱上の組物は出組。軒桁を一手先に持出ししています。

 

拝殿母屋正面

母屋の正面は開き戸になっており、内部にあがることができます。

扁額は「普益殿」。

扁額の字の意味については、堂内の授与所のかたが解説してくれたのですが失念してしまいました...

 

授与所のかたの話によると、この番神堂は近辺ではかなりメジャーな寺社仏閣で二年参りや初詣はかなり混雑し、「ゆく年くる年」で放映されたことが何度もあるらしいです。

あいにく私(長野市出身)は今回の旅行で初めて番神堂を知ったのですが、新潟県内では著名なのでしょうか?

 

拝殿側面

母屋の右側面(北面)。

軒裏は二軒(ふたのき)の繁垂木。

柱についた木鼻は、頭貫だけでなく台輪にも木鼻がついていて禅宗様の意匠。

写真右下の柱間に見える扉は桟唐戸(さんからど)。

 

石の間

番神堂石の間

拝殿(左)と本殿(右)のあいだは、屋根と床が低くなった「石の間」と呼ばれる構造物でつながれています。

このように、拝殿と本殿を石の間でつないだ建築様式を権現造(ごんげんづくり)と言います

しかしこの番神堂は拝殿・石の間・本殿の屋根が一体化していないうえ、拝殿が妻入の入母屋(ふつうは平入の入母屋)という点を考えると、正式な権現造とは言えません。よって、「広義の権現造」と言ったところでしょうか。

 

なお、権現造という様式名は、徳川家康(東照大権現)を祀った久能山東照宮(静岡市)の社殿が由来のようです。私見になりますが、権現造は神仏習合の性質が強い神社(東照宮や天満宮など)で採用される傾向にあります。

 

本殿

番神堂本殿

番神堂本殿

石の間の後方は本殿があり、ガラスの壁で保護されています。写真は左側面(南面)。

本殿は桟瓦葺の入母屋(平入)。側面3間・背面3間。向拝の間口は不明。

縁側は切目縁が4面にまわされており、欄干は跳高欄(はねこうらん)。脇障子はなし。縁の下は四手先の腰組。

 

ご覧のように欄間や壁面(腰羽目)は派手な彫刻で満たされ、非常に華やか。題材は鳳凰や雲。

正面のほう(写真右)の柱間は桟唐戸が立てつけられていますが、桟唐戸の羽目板も抜かりなく彫刻で飾られています。

非常ににぎやかで見栄えのする本殿となっているものの、ガラスの映り込みのせいでいまひとつ写真映えしないのが玉に瑕。

 

彫刻は脇野町の池田甚太郎、出雲崎の原篤三郎、直江津の彫富の3人の作。案内板(設置者不明)によると“桃山狩野派の最後の逸品”だそうです。

また、彫刻の中に蝶が1匹だけおり、これを見つけられると幸せになれるらしいです。残念ながら私には見つけられませんでしたが、堂内の授与所のかたから「蝶というよりは蛾に見えるかも」とヒントらしきもの教えてくれたので、これから訪問されるかたは探してみて下さい。

 

本殿床下

左側面の縁の下。

縁の下を支える腰組は四手先で、持ち出された桁の上にはびっしりと巻斗(まきと)が並べられています。

組物の間の彫刻は、波に亀。立体的かつ繊細で、良い造形だと思います。

 

母屋の柱は円柱ですが、床下は八角柱。ほとんど見えない箇所なので、円柱の成形を手抜きしてあります。

こんな柱の床下にけちをつけているようでは、幸せの蝶など到底見つからないでしょうね...

 

以上、番神堂でした。

(訪問日2020/05/01)

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