今回は新潟県村上市の西奈弥羽黒神社(せなみ はぐろ-)について。
西奈弥羽黒神社は村上市の市街地の裏山に鎮座しています。
創建は687年とされ、『延喜式』に記載された「西奈彌神社」に比定される論社です。戦国期に本庄繁長が庄内地方を平定し、現在の出羽三山神社から勧請・合祀したようです。
社殿は拝殿・本殿が明治期の新しいものですが、旧本殿を移築した神明宮は桃山時代の作風をとどめており、県指定文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒958-0851新潟県村上市羽黒町6-16(地図) |
アクセス | 村上駅から徒歩20分 村上瀬波温泉ICから車で5分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | なし |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道
西奈弥羽黒神社の境内入口は北向き。
入口は車道に面していますが、少し奥まったところに鳥居が立っています。
鳥居は石造の明神鳥居。扁額はなく、額束になっています。
社務所の前を通って進むと、社叢と石段が現れます。
石段は、案内板によると133段あるとのこと。
参道の左側には棟に置く鬼板が展示されています。
二の鳥居は木造の赤い両部鳥居。扁額なし。
社叢の中は薄暗く、いかにも神社らしい雰囲気。二の鳥居と手水舎のところで参道は右に曲がります。
参道の左手には手水舎。桟瓦葺の入母屋。
梁の上には繊細な彫刻がほどこされた蟇股(かえるまた)が置かれています。
拝殿
三の鳥居および拝殿。
三の鳥居は赤い両部鳥居。
拝殿は桟瓦葺の入母屋(平入)で、正面千鳥破風(ちどりはふ)、向拝1間。
向拝の軒先を支える柱は、几帳面取りの角柱。
虹梁(こうりょう)の木鼻には、こちらを振り向く唐獅子が彫刻されています。
虹梁の上の中備えには竜の彫刻。非常に繊細な造形なのは良いのですが、ぱっと見て何が題材なのか解りにくいです。
ちょうちんや垂れ幕の紋は三つ巴。
向拝柱(右)と母屋(左)は、大きく湾曲した海老虹梁でつながれています。
向拝柱の柱上では、梅と思しき木が立体的に彫られた手挟(たばさみ)が垂木を受けています。
母屋の軒裏は、二軒(ふたのき)で放射状に延びた繁垂木。
放射状の垂木のことを扇垂木といい、ふつうは寺院建築に使われる意匠です。
正面の千鳥破風。
破風板の拝みの懸魚には、波の意匠の彫刻。棟の鬼板には魚のひれや鱗のような装飾がついています。どちらも良い造形だと思います。
右側面の入母屋破風。
破風の内部には妻虹梁があり、その下には3本の松を図案化した彫刻が2つ並んでいます。
本殿
拝殿の裏には本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。
祭神は奈津比売大神(なつひめのおおかみ)、ウカノミタマ、ツクヨミの3柱。奈津比売大神は村上の開拓神のようです。
案内板によると造営年は1881年(明治14年)。仏海上人(のちに即身仏となって戦後に発掘され、同市の観音寺に安置される)の発願で造られたとのこと。
本殿の周囲は灌木が茂っているため、ほかのアングルから鑑賞するのは難しいです。
柱上の組物は出組。持ち出された妻虹梁の下には軒支輪。
妻虹梁の上には皿付きの大斗をベースにした平三斗(ひらみつど)が3つ並んでいます。
神社本殿としては大きめで、縁側がかなり高いです。
神明宮(旧本殿)
拝殿の右手には赤い境内社が鎮座しています。
これは神明宮で、もとは西奈弥羽黒神社の本殿だったのですが、現本殿の造営にともなって現在地に移築されて神明宮の社殿となったとのこと。
神明宮は銅板葺の三間社流造。
案内板によると1670年(元禄3年)の造営で、村上藩の2代目・榊原政邦(式部大輔勝乗)の発願。日光東照宮の造営にかかわった職人を招いて造営されたと伝えられています。
向拝。左の角柱が向拝柱、右の円柱が母屋柱。
向拝柱と母屋柱はまっすぐな梁でつながれ、柱間には極彩色の蟇股が配置されています。題材は「竹林に虎」と思われます。
柱上の組物は白を基調とした極彩色で、ここは日光東照宮と同様に安土桃山から江戸初期の作風が色濃くあらわれている箇所といえるでしょう。江戸中期後期の組物は、極彩色で塗り分けるようなことはしません。
母屋の妻壁。
蟇股の彫刻は、2つとも菊水が題材のようです。
妻虹梁の上にある妻飾りは、大瓶束(たいへいづか)と豕扠首(いのこさす)を組み合わせた形式のもの。
母屋の下部。
神社本殿にしてはめずらしく、縁側がありません。おそらく移築するさいに撤去されたのでしょう。
縁側がないせいで、母屋柱の床下を八角柱に手抜きしている様子が丸見えになってしまっています。
以上、西奈弥羽黒神社でした。
(訪問日2020/08/12)