甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【富士吉田市】北口本宮冨士浅間神社 その1(参道、福地八幡社)

今回は山梨県富士吉田市の北口本宮冨士浅間神社(きたぐち ほんぐう ふじせんげん-)について。

 

北口本宮冨士浅間神社は富士登山道の吉田口の市街地に鎮座しています。

草創はヤマトタケルの時代とされ、東征の折に当地で富士山を遥拝したのが始まりらしいです。実質の創建は788年で、甲斐守紀豊庭(きの とよひろ)によって社殿が建立されたようです。

境内は山梨県内でも最大規模の広さで、雰囲気も良好。社殿については本殿をはじめ4件(計11棟)が国重文に指定されていて、きわめて充実した内容です。

 

当記事ではアクセス情報および参道と福地八幡社について述べます。

随神門、神楽殿、手水舎、拝殿については「その2」を、本殿、東宮本殿、西宮本殿、諏訪神社については「その3」をご参照ください。

 

現地情報

所在地 〒403-0005山梨県富士吉田市上吉田5558(地図)
アクセス 富士山駅から徒歩30分
富士吉田ICから車で10分
駐車場 50台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト 北口本宮冨士浅間神社
所要時間 30分程度

 

境内

参道

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北口本宮冨士浅間神社の境内は北東向き。

めずらしい方角を向いていますが、これは神社の向こう(南西方向)にある富士山を遥拝するためでしょう。山体は社叢にさえぎられて見えないですが、地図を確認すると参道の延長線上に富士山があることがわかります。

 

境内入口は車通りの多い車道に面しています。

一の鳥居は銅板でカバーされた明神鳥居。扁額は「冨士山」。

社号標は「富士淺間神社」。

 

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境内は深い社叢の中にあり、参道の両脇には灯篭が並んでいます。

このような参道が数百メートルほど伸び、厳かな雰囲気が漂います。この先にどんなすばらしい社殿があるのか楽しみになってくる参道です。

 

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参道の途中には仁王門の礎石。

幕末まではここに仁王門があったようですが、明治初期の神仏分離・廃仏毀釈により、寺院の要素が強い仁王門は破却されてしまっています。なお、境内には三重塔と鐘楼もあったらしく、これらも同様に破却されています。

仮に現存していたらいずれも国指定重要文化財になっていた可能性が高いと思います。

 

仁王門の規模については“梁間一丈八尺(約5.5m)、軒高六間(約11m)という記録が残されている”と案内板(富士吉田市教育委員会)に書かれています。

この規模と礎石の配置から仁王門の往時の姿を予想すると、三間一戸の楼門だったと思われます。

 

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仁王門礎石の隣には「角行の立行石」。

角行は戦国期から江戸期の行者で、富士講の開祖。数々の荒行で伝説を残した人物らしく、この石も彼の荒行にまつわる物件とのこと。詳細は割愛。

 

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二の鳥居(大鳥居)は木造の両部鳥居。扁額は「三国第一山」。

山梨県でも一二を争う規模の大鳥居。県内でこれに敵いそうなのは浅間神社(笛吹市一宮町)の鳥居くらいでしょう。

真偽のほどは謎ですが、拝殿にあったパンフレットによると日本最大の木造鳥居らしいです。

 

福地八幡社

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大鳥居をくぐった先には随神門がありますが、その手前の参道左手の若干目立たない場所に境内社の福地八幡社(ふくち はちまんしゃ)があります。

桁行正面1間・背面2間・梁間1間、一間社流造、向拝1間、銅板葺。

1740年再建。後述の拝殿などとともに国重文に指定されています。

 

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黒い向拝柱は角面取りされています。

赤い虹梁は唐草が彫られ、下面には錫杖彫り。中備えは蟇股。

 

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向拝柱の木鼻は正面が唐獅子、側面が獏の彫刻。

柱上の組物は連三斗。

 

案内板(設置者不明)によると、1684年に「古吉田」なる場所の氏神として建立された社殿を解体し、古材の一部を再利用してこの福地八幡社が造られています。この木鼻の彫刻や後述の母屋頭貫木鼻は、再建前のオリジナルの社殿の古材である可能性も考えられるとのこと。

 

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向拝柱と母屋は湾曲した海老虹梁でつながれています。

海老虹梁の母屋側は頭貫木鼻と一体化していて、軒裏をかすめながら降りて行き、向拝側は手挟と一体化しています。

頭貫木鼻、海老虹梁、手挟の3つが一体になった例は初めて見ました。意匠としての完成度はともかく、パーツ点数を少なくできるので合理的(解体・修理しやすそう)だと思います。

 

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母屋柱は円柱。母屋正面には黒い板戸。

板戸の上の中備えは蟇股。はらわたは木にとまる鳥が彫刻されています。

 

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正面と同様、側面もあっさりとしています。

縁側はくれ縁が3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き、床下は縁束。背面は脇障子でふさがれています。

 

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頭貫の上の中備えは蟇股。

頭貫木鼻は拳鼻、柱上の組物は連三斗ですが、背面側(写真左)は彩色されておらず素木となっています。これは前述したオリジナルの社殿の古材でしょう。

妻壁には妻虹梁がわたされ、その上では大瓶束が棟を受けています。

 

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破風板は黒い金具で装飾されています。

拝みには蕪懸魚が下がり、桁隠しには菊の花のような彫刻が施されています。

 

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背面。こちらは中央にも柱があり、背面2間となっています。

中央の柱の上には平三斗。中備えはありません。

見切れてしまっていますが、母屋柱の床下は八角柱になっていました。

 

参道と福地八幡社については以上。

その2では隨神門、神楽殿、手水舎、拝殿について述べます。

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