甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【甲州市】諏訪神社(日影)

今回は山梨県甲州市大和町日影(ひかげ)の諏訪神社(すわ-)について。

 

諏訪神社は旧大和村の日影集落に鎮座しています。

創建は不明。伝承によると、1582年の甲州征伐で織田氏の軍勢に追われた武田勝頼が当地に旗を立て、小山田信繁が岩殿山城から迎えに来るのを待ったとのこと。『甲斐国志』(1814年)には、当社について記述があり、三社が合祀された神社だったようです。

境内は拝殿と本殿だけの簡素な内容ですが、本殿は江戸中期の造営とされ、市の文化財に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒409-1204山梨県甲州市大和町日影1079(地図)
アクセス 甲斐大和駅から徒歩20分
勝沼ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

拝殿

諏訪神社の境内は東向き。入口は急坂の生活道路に面しています。

入口には石造明神鳥居。

 

扁額は「三社宮」。

額縁には猪目(ハート形)の窪みや渦状の絵様がついています。

 

鳥居の先には拝殿。

寄棟、鉄板葺。

正面と背面は格子がはめられていて、後方にある本殿がのぞいて見えます。

 

本殿

拝殿の後方には、屋根付きの鉄柵に囲われた本殿が鎮座しています。祭神はタケミナカタ、スサノオ、カヤノヒメ。

本殿は、桁行3間・梁間2間、三間社流造、向拝1間、銅板葺。

1737年(天文二年)造営。市指定有形文化財。

 

本殿の前方には、石橋の屋根を兼ねた幣殿があり、拝殿とつながっています。

 

向拝の下の階段は7段。昇高欄がついています。

階段の下に浜床はありません。

 

向拝柱は面取り角柱。面幅は小さく取られています。側面には象鼻。

柱上の組物は出三斗。

海老虹梁の向拝側は、組物の上から出ています。

 

海老虹梁の母屋側は、母屋の組物の肘木と一体化しています。頭貫木鼻と接触してはいますが、別部材のようです。

母屋柱は円柱で、頭貫木鼻は拳鼻。柱上の組物は出三斗で、実肘木ではなく通肘木が使われています。

 

母屋の前面には建具がなく、1間奥まった位置に3組の扉が設けられています。

 

側面は2間。

柱間は横板壁。壁板の損傷した部分を、ベニヤ板で補修してあります。

縁側は切目縁が3面にまわされています。欄干は擬宝珠付き。背面側には脇障子を立てています。

 

組物のあいだの中備えはありません。

妻飾りは大瓶束。上端に木鼻がついています。

破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚がありますが、破損してしまっています。

 

背面は3間。

こちらも中備えはありません。

 

本殿の基部には大谷石らしき石材が置かれ、その上に横木(土台)を置いて柱を立てています。母屋柱は円柱ですが、床下は八角柱になっています。

 

大棟は小さな切妻屋根が乗った箱棟で、鬼板には鬼らしき顔の彫金があります。

大棟の鬼面は山梨県ではよく見かけますが、このように彫金で表現した例は初めて見ました。

 

以上、諏訪神社(日影)でした。

(訪問日2023/04/22)