甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【栗東市】宇和宮神社

今回は滋賀県栗東市の宇和宮神社(うわみや-)について。

 

宇和宮神社は国道8号沿線の住宅地に鎮座しています。

創建は不明。社伝によれば717年(養老元年)、玉岡宿禰広国という人物により勧請されたとのこと。

境内社殿は本殿が室町期のもので、滋賀県内に多く見られる前室のある三間社流造。国重文に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒520-3021滋賀県栗東市蜂屋231(地図)
アクセス 栗東駅から徒歩35分
栗東ICから車で3分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道と拝殿

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宇和宮神社の境内は南西向き。裏路地といった趣の生活道路に面しています。

社号標は「宇和宮神社」。

鳥居は木造の両部鳥居。稚児柱の上に宝形の屋根が載っています。扁額は「正一位 宇和宮」。

 

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拝殿は入母屋(妻入)、檜皮葺。

滋賀県内でよくある神楽殿風の拝殿ですが、この拝殿は全方向の柱間にいっさいの建具がなく吹き放ちで、非常に開放的な造り。また、床が低くて安定感のあるバランス。

 

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破風板の拝みには梅鉢懸魚。入母屋破風は縦板でふさがれています。

大棟には鬼瓦。

 

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拝殿の右手には手水舎。

切妻、桟瓦葺。

 

中門と透かし塀

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拝殿後方には中門と透かし塀に囲われた本殿が鎮座しています。

中門は一間一戸、唐門、檜皮葺。

透かし塀は銅板葺。大きく反った軒が印象的。

 

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中門の柱は角柱。室町あたりの作風を再現したのか、大きく面取りされています。

柱から男梁を伸ばし、舟肘木を介して軒桁を受けています。男梁の下部には女梁が添えられています。

 

本殿

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本殿は三間社流造、向拝1間、檜皮葺。

棟木の墨書より、1505年(永正二年)の上棟とのこと(滋賀県教育委員会の案内板より)。国指定重要文化財

祭神はウカノミタマ、オオヤマツミ、土祖神。

 

3間四方の母屋の前方の1間を外陣(前室)とし、その前方へ向拝を伸ばしています。滋賀県内にある室町期ごろの神社本殿でよく見られる形式。

 

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向拝は1間。

向拝柱は角面取り。面取りは幅が広くとられています。

虹梁は唐草が彫られ、中備えはくり抜かれていない蟇股。

木鼻は象鼻で、巻斗を介して連三斗を持ち送りしています。

柱上の組物は連三斗。

 

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虹梁の唐草や木鼻の繰型があまり室町期らしくない作風で、木材も妙に木目の目立つものが使われています。

案内板によると向拝は江戸中期の1751年修理によるもので、柱や虹梁などが取り替えられているとのこと。

 

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向拝軒下には角材の階段が7段。

昇高欄の親柱は擬宝珠付き。

階段の下には浜床が前方にのみ設けられています。

 

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母屋前方の1間は前室として、床が低く造られ、正面にはすだれがかかっています。前室の柱は角柱が使われています。

前室の側面には通用の板戸が設けられています。

 

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前室に対して母屋本体(内陣)は円柱が使われ、床も高くなっています。

見切れてしまっていますが組物は大斗と舟肘木が使われ、妻壁は豕扠首でした。

縁側は切目縁が3面にまわされていて、欄干は跳高欄。縁の下は縁束。後方は脇障子でふさがれています。

 

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背面。

母屋柱は床下も円柱に成形されています。

頭貫木鼻は使われておらず、柱間には中備えもありません。

向拝部分は若干新しい作風が入っていますが、母屋のほうは鎌倉~室町前期の古い作風。室町後期の造営にしては古風に感じます。

 

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破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚。

大棟と鬼板の紋は五三の桐でした。

 

以上、宇和宮神社でした。

(訪問日2021/03/12)