今回は京都府京都市の知恩院(ちおんいん)について。
知恩院は市東部の山際に鎮座する浄土宗の総本山です。山号は華頂山、寺号は大谷寺。
創建は1175年(承安五年)。比叡山を下りた法然が、現在の御影堂付近に草庵を開いて浄土宗を布教したのがはじまりです。のちに法然は流罪となりますが、免赦されて帰京し、その後は大谷禅房(現在の勢至堂付近)に住み1212年に没しました。法然の死後、弟子たちによって法然の廟が造られましたが延暦寺との抗争で破壊され、1234年(文歴元年)に再建されました。再建後、四条天皇から「華頂山知恩教院大谷寺」の号を下賜されました。
室町時代は火災や戦災で境内伽藍を焼失しています。江戸時代は幕府の庇護を受けて境内が拡張され、徳川家光の寄進で現在の大伽藍が再建されました。
現在の境内伽藍は江戸前期に再建・整備されたもので、巨大な三門と御影堂が国宝に指定されているほか、勢至堂をはじめとする9棟の伽藍が国重文となっています。
当記事ではアクセス情報および総門、三門について述べます。
経蔵、唐門、勢至堂については「その3」をご参照ください。
現地情報
所在地 | 〒605-8686京都府京都市東山区林下町400(地図) |
アクセス | 東山駅から徒歩10分 京都東ICから車で20分 |
駐車場 | なし(※周辺にコインパーキングあり) |
営業時間 | 06:00-16:00(※季節によって変動するため公式サイト要確認、拝観は09:00から) |
入場料 | 境内は無料、方丈庭園の拝観は400円 |
寺務所 | あり |
公式サイト | 浄土宗総本山知恩院 |
所要時間 | 1時間程度 |
境内
総門(古門)と新門
知恩院の境内は南向きですが、参道は山の斜面に沿って西向きに伸びています。境内より200メートルほど西の川沿いの、華頂道という道路には総門(古門)があります。
総門は、一間一戸、薬医門、切妻、本瓦葺。
安土桃山時代の造営*1。府指定文化財。
柱はいずれも角柱。
主柱(写真左)から前方に梁(男梁)を突き出し、桁を介して軒裏を受けています。
梁の下側には、先端に繰型のついた腕木(女梁)が添えられています。
右側の妻面(南面)。
主柱の上から冠木が突き出ています。
見づらいですが妻飾りは板蟇股。
破風板の拝みには梅鉢懸魚。
総門をくぐらず南の八坂神社のほうへ向かうと、知恩院道という道路に新門が西面しています。この門をくぐって進むと、後述の三門があります。
新門は、一間一戸、高麗門、切妻、本瓦葺。
柱は太い角柱が使われ、面取り部分の周辺は銅板で覆われています。
側面には大きな木鼻が付き、前面からは腕木を伸ばして軒裏を受けています。
後方から見た図。
控柱には低い屋根がかかっていますが、高いほうの屋根の軒先と接触しています。
三門
新門から東へ200メートルほど進むと知恩院境内に到着し、巨大な三門が現れます。
三門は、五間三戸、楼門、二重、入母屋、本瓦葺。
1621年(元和七年)再建。国宝。
下層の壁面に打ち付けられたプレート*2によると、桁行(母屋部分の横幅)は26.6メートル、左右の山廊も含めると横幅は約50メートルあり、棟高は約24メートルとのこと。同様式の門(五間三戸二重楼門)の中では最大の規模らしいです。
下層。
正面5間で、中央の3間は広く、左右両端の各1間は狭く取られています。
柱はいずれも円柱。
柱間には飛貫と頭貫が通り、2本の貫のあいだには板壁が張られています。
向かって右の柱間。
柱は上端が絞られた粽です。
頭貫と台輪には禅宗様木鼻があります。
組物は二手先。柱間にも詰組が置かれ、禅宗様の意匠が目立ちます。
下層の軒裏は平行の二軒繁垂木。
右側面(南面)。
側面は2間で、前方の1間は横板壁、後方は吹き放ち。
下層内部。天井は板張り。
柱の前後方向は虹梁でつながれ、虹梁の下部には挿肘木の斗栱が添えられています。
上層。扁額は山号「華頂山」。
正面の柱間は5間あります。
柱は円柱で頭貫と台輪に禅宗様木鼻が付き、柱間は藁座に吊った桟唐戸があります。
組物は尾垂木三手先で、上層も柱間にびっしりと詰組が置かれています。
右側面。
軒裏は、下層が平行垂木であるのに対し、上層は放射状の二軒繁垂木。禅宗様建築でよく見られる造りです。
三門の左右には、上層へ上るための山廊が並んでいます。こちらは向かって右(南側)のもの。
山廊は、桁行3間・梁間2間、切妻、本瓦葺。
柱は面取り角柱。頭貫と台輪に禅宗様木鼻があります。
柱上は出三斗。
内側の妻面。
側面は2間ですが、内側は中央の柱を1本とばして虹梁をわたしています。虹梁の中央部には大瓶束を立て、棟木を受けています。
右側面(南面)。
外側の側面は2間。妻飾りは内側と同様の虹梁大瓶束です。
柱間は火灯窓と縦板壁。
左側(北側)の山廊については、右側のものを左右反転しただけの構造のため割愛いたします。
三門などについては以上。