今回は長野県長野市の恵妙寺(えみょうじ)について。
恵妙寺は松代地区の南東の山際に鎮座する黄檗宗の寺院です。山号は象山(ぞうざん)。
創建は1677年(延宝五年)。松代藩3代藩主・真田幸道によって開かれ、境内には幸道の正室・豊姫の墓所と霊屋が造られています。1825年(文政八年)に火災で山門以外の伽藍を焼失し、1833年(天保四年)に8代藩主・真田幸貫によって現在の主要な伽藍が再建されました。
現在の境内伽藍はおもに江戸後期のもので、本堂をはじめとする3棟が国の登録有形文化財となっています。山門については、江戸前期の創建当初のものと考えられます。また、境内には豊姫(あんず姫)の霊廟が鎮座しています。
現地情報
所在地 | 〒381-1232長野県長野市松代町482(地図) |
アクセス | 長野ICから車で10分 |
駐車場 | 5台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
山門と鐘楼
恵妙寺の境内は東向き。入口は川に面した場所にあり、南に50メートルほど行くと象山地下壕(松代大本営)が、北へ200メートルほど行くと象山神社があります。
入口の山門は、一間一戸、切妻、桟瓦葺。
寺伝によると1677年(延宝五年)の造営で、当寺が開かれた当初のものらしいです。長野市文化財データベース*1によると“中備の蟇股の造りや肘木・木鼻・梁の造りなど江戸前期の様相を窺え”、創建当初の建築と考えられるとのこと。
国登録有形文化財。
内部、向かって右側。写真右が正面です。
柱は角柱。角面取りされ、上端が絞られています。
柱の前後には腕木が突き出し、桁を介して軒裏を受けています。腕木の先端には繰型。
柱上の組物は出三斗。
門をくぐると、左手に鐘楼があります。
入母屋、桟瓦葺。
1883年再建。国登録有形文化財。
柱は内に転び(傾斜)がつき、母屋部分は上に向かってすぼまった台形のシルエットとなっています。
上層。
柱は角柱で、組物はなく、桁を直接受けています。
軒裏は一重のまばら垂木。
破風板の拝みには懸魚が下がっています。
本堂と豊姫霊屋
境内の中心部には、禅宗様建築の仏殿*2とよく似たシルエットの本堂が鎮座しています。
入母屋、裳階付、桟瓦葺。
鐘楼と同様に、1883年再建、国登録有形文化財です。
扁額は「恵妙禅寺」。
下層は正面5間。中央の柱間は、桟唐戸の上に虹梁がわたされています。
柱間には桟唐戸や火灯窓など、禅宗様の意匠が使われています。
柱は角柱で、柱上は舟肘木。
下層の軒裏(裳階)は、並行の一重繁垂木。
内部は土間で、中央に4本の角柱を立てています。柱のあいだには虹梁がわたされ、笈形付き大瓶束や、唐獅子の木鼻が使われています。
天井は中央部が鏡天井で、外周部は化粧屋根裏。
奥には本尊の釈迦如来が祀られています。
上層。こちらも角柱と舟肘木です。
上層の軒裏は、放射状の一重繁垂木。
大棟には青海波のような文様がつき、真田家の六文銭が描かれています。大棟両端には鯱。
左側面(南面)。
側面は、縦板壁や土壁となっています。
入母屋破風。
破風板の拝みには、鰭付きの蕪懸魚。
妻飾りには、笈形付き大瓶束。
本堂向かって左手前には、豊姫(あんず姫)の霊屋が北面しています。霊廟の右にある宝篋印塔は、豊姫の墓標です。
霊屋は、宝形、向拝1間。
豊姫は松代藩3代藩主・真田幸道の正室。伝承によると、嫁入りの際に実家の伊予宇和島から杏の鉢植えを持参し、これが当地の杏栽培のはじまりとなったらしいです。
以上、恵妙寺でした。
(訪問日2023/10/07)