甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【長野市】大英寺

今回は長野県長野市の大英寺(だいえいじ)について。

 

大英寺は松代地区の住宅地に鎮座する浄土宗の寺院です。山号は皓月山。

創建は1620年(元和六年)。真田信之が正室・小松姫の菩提寺として、上田城下に寺を開いたのがはじまりです。1622年の真田家の松代移封にともない大英寺も移転し、1624年(寛永元年)に旧藩主酒井家の菩提寺・大徳寺の跡地へ移りました。これが現在の大英寺です。江戸時代は真田家の庇護のもと隆盛しましたが、明治時代に寺領の大部分を失っています。

現在の境内は江戸中期以降のもの。江戸中期に改修された本堂(小松姫の霊屋)と、その表門の2棟が長野県宝に指定されています。

現地情報

所在地 〒381-1231長野県長野市松代町松代表柴町1314(地図)
アクセス 長野ICから車で5分
駐車場 3台(無料)
営業時間 09:00-16:00
入場料 無料
寺務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

表門

大英寺の境内は西向き。境内は寺町の一画にあり、入口は県道に面しています。

寺号標は左が山号「皓月山」、右が寺号「大英寺」と篆書で書かれています。

 

参道を進んだ先には表門があります。

一間一戸、四脚門、切妻、こけら葺。

案内板*1によると1624年(寛永元年)建立。後述の本堂とあわせて長野県宝に指定されています。

 

向かって右手前(南西)から見た図。

柱はいずれも円柱。柱上に組物はなく、柱の上に軒桁が直接乗っています。

軒裏は二軒まばら垂木。

 

内部。

門扉の上には冠木が通り、中央に角柱の束を立てて棟木を受けています。

妻面の梁の上には大きな板蟇股が置かれています。

 

破風板の拝みには蕪懸魚。左右には、小さな鰭のような意匠が見えます。

桁隠しはありません。

 

背面全体図。

構造や意匠は、ほぼ前後対象となっています。

 

本堂(小松姫霊屋)

境内の中心部には、当寺の本堂に相当する小松姫の霊屋(大蓮院霊屋)が鎮座しています。大蓮院こと小松姫(1573-1620)は真田信之の正室で、家を守った女傑として数々の逸話が伝わる人物です。

本堂は、桁行5間・梁間5間、入母屋、向拝1間、桟瓦葺。

1624年(寛永元年)造営、1785年(天明五年)改修。1872年(明治五年)には旧本堂の老朽化にともない現在地へ移築され、本堂として使用されています。

前述の表門とあわせて、長野県宝に指定されています。

 

真田家の霊屋というと、同地区に鎮座する長国寺西楽寺に極彩色の建物がありますが、こちらの霊屋は外観が質素なかわりに平面の規模が大きく造られています。

 

向かって右の向拝柱。柱は几帳面取りで、これは江戸中期の改修時のものかと思います。

側面には拳鼻。

柱上の組物は連三斗。拳鼻の上に巻斗が乗り、持ち送りされています。

 

虹梁中備えは蟇股。上の巻斗に彩色されていた跡が見え、おそらく当初は蟇股も桃山風の極彩色に塗り分けられていたのでしょう。

蟇股のはらわたには徳川家の三葉葵の紋があり、その左右には雲状の意匠が配されています。

 

向拝柱の上では板状の手挟が軒裏を受けています。

向拝と母屋のあいだに、海老虹梁などの懸架材はありません。

母屋は正面5間。中央の1間は桟唐戸で、ほかは連子窓と板壁です。

 

母屋柱は円柱が使われ、柱上は舟肘木で桁を受けています。

側面は5間。こちらは建具がありません。

内部は前方2間通りが外陣で、内外陣とも鏡天井、柱や組物は極彩色で荘厳されているとのこと。

 

縁側は切目縁が3面にまわされています。

軒裏は一重の繁垂木。

 

本堂向かって左には鐘楼。

切妻、桟瓦葺。

 

以上、大英寺でした。

(訪問日2023/10/07)

*1:長野市教育委員会と大英寺による設置