甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【長野市】西楽寺(真田信重霊屋)

今回は長野県長野市の西楽寺(さいらくじ)について。

 

西楽寺は松代町の南西部の山際に鎮座する浄土宗の寺院です。山号は関谷山。

創建は1574年(天正二年)で、西条氏による開基。江戸期には真田信之の三男・信重が当寺に帰依し、彼の死後に霊屋が建立されています。

真田信重霊屋は、真田信之霊屋(長国寺)と同様に漆塗り極彩色の華やかな造りをしており、国指定重要文化財となっています。

 

現地情報

所在地 〒381-1232長野県長野市松代町905(地図)
アクセス 長野ICから車で10分
駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
寺務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

総門

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西楽寺の境内は東向き。山に挟まれた住宅地の一角にあります。

総門は一間一戸、薬医門、切妻、桟瓦葺。

 

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内部。写真右が正面側。

主柱・控柱ともに角柱を使い、正面側へ女梁と男梁を伸ばして軒桁を受けています。ここは標準的な造り。

見たところ妻飾りがないようで、左右にわたした梁の上に立てられた束で棟木を受けています。

 

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総門の左手には名称不明の堂。

切妻?、向拝1間、桟瓦葺。

 

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向拝中備えには竜、向拝柱木鼻には見返り唐獅子の彫刻。両者とも白く塗装されています。

軒裏は吹寄せ垂木。

 

本堂

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総門の先には本堂が鎮座しています。

寄棟、向拝1間、桟瓦葺。造営年不明。

真田家の菩提寺である長国寺本堂と同じ様式ですが、松代地域ではこのような箱棟の寄棟本堂はかなりの頻度で見かけます。

 

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虹梁は菊水が浮き彫りになっています。

中備えは竜の彫刻。

 

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向拝柱は几帳面取り。

木鼻は正面が唐獅子、側面が象。

柱上の組物は、中備えの組物と肘木を共有しています。

 

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母屋の正面中央は、桟唐戸のような意匠の引き戸。

ほかの柱間はガラス戸と雨戸でした。

虹梁の上の扁額は「西楽寺」。

 

真田信重霊屋

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境内の案内板にしたがって本堂左手から墓地のほうへ坂を登って行くと、その先に真田信重霊屋(さなだ のぶしげ たまや)が東面して鎮座しています。

桁行3間・梁間3間、宝形、向拝1間、こけら葺。

1648年(慶安元年)建立国指定重要文化財。堂内の前机と釣灯篭が附となっています。

 

真田信重は松代藩初代・信之の三男。松代藩の支藩である埴科藩の2代目藩主。墓は埼玉県鴻巣市にあるようです。

真田信之霊屋(長国寺)とは様式こそ異なりますが、漆塗りの壁面や極彩色の軒下がよく似ていて、こちらも安土桃山期のなごりを感じる華美な作風です。

 

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正面軒下。

派手な彩色もさるものながら、母屋の桟唐戸や壁板の黒塗りも美しいです。

 

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虹梁は緑と赤の唐草が描かれています。

中備えの蟇股は、桃が彫られています。また、蟇股の両端は桃の葉の意匠がついているのが独特。

 

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向拝柱は角面取り。江戸初期なので、C面はあまり大きくありません。

柱の側面には拳鼻。上にのった巻斗が連三斗を持ち送りしています。

柱上の組物は出三斗。複雑な配色で塗り分けられています。

軒裏を受ける桁は、花菱のような模様が描かれています。

 

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向拝を左側面(南面)から見た図。

向拝柱の上では、紅白の菊花が彫られた手挟が軒裏を受けています。

母屋と向拝柱をつなぐ懸架材はありません。

 

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母屋柱は円柱。わずかに上端が絞られています。

柱の上部には頭貫が通って台輪がまわり、頭貫と台輪には禅宗様木鼻。

柱上の組物は出組。中備えは蓑束。組物と蓑束のあいだにも牡丹が描かれています。

 

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左後方(南西方向)から見た図。

側面と背面は横板壁になっており、扉や窓はありません。

軒下の意匠は正面側と同様。軒裏は一重の繁垂木。

縁側は切目縁が4面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。

 

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案内板にあった写真。内外陣の境界中央部の組物がこのような構造になっているようです。隅の部分でもないのに、出組の肘木を斜めに出すのは風変わり。

詳細および内部の様子については下記のとおり。

(前略)

内部は前面一間通りを外陣とし、鏡天井を張り、格子戸で内陣を区画し、内陣は格天井で、奥に禅宗様仏壇をおき、阿弥陀像及び信重夫妻の位牌をおく、内外共漆塗、極彩色を施す、今は上部のみ残っている、

内外陣境の中備に四十五度方向に肘木が出た組物をおくのは、中国には古くあるが、日本では他に例がない、全体として古風で細部の手法が洗練されていて、近畿地方工匠の手になるものかと考えられている、

関谷山十二神院 西楽寺

松代史跡文化財開委員会

 

 

以上、西楽寺(真田信重霊屋)でした。

(訪問日2021/08/09)