甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【京都市】福王子神社

今回は京都府京都市の福王子神社(ふくおうじ-)について。

 

福王子神社は市北部の住宅地に鎮座しています。

社伝によると、式内社の深川神社が当社の前身とのこと。深川神社は応仁の乱で焼失しますが、江戸時代に徳川家光と覚深法親王によって社殿が再建され、現在の社号に改められたようです。

境内は小規模ですが、本殿、拝殿、鳥居が国の重要文化財に指定されています。いずれも江戸前期の再建で、拝殿と本殿の屋根はこけら葺となっています。

 

現地情報

所在地 〒616-8208京都府京都市右京区宇多野福王子町52-6(地図)
アクセス 宇多野駅から徒歩5分
京都南ICから車で30分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

鳥居と拝殿

福王子神社の境内は南向き。仁和寺の二王門から道沿いに300メートルほど西にある、福王子という交差点に面しています。

鳥居の扁額と、左手の社号標は「福王子神社」。

 

入口の鳥居は、石造明神鳥居。

寛永年間(1624~1644)頃の造営。「福王子神社 2棟1基」として国指定重要文化財

 

鳥居のすぐ後ろには、拝殿があります。

拝殿は、桁行3間・梁間2間、入母屋、こけら葺。

鳥居と同様に、寛永年間頃の造営で、国重文。

 

左側面(西面)。

柱は面取り角柱。面取りの幅はあまり大きくありません。

柱間には長押が打たれ、六角形の釘隠しがついています。

頭貫木鼻や中備えはなく、装飾性のない質素な外観。内部は棹縁天井です。

 

入母屋破風には木連格子が張られています。

破風板の拝みには梅鉢懸魚。

大棟には鬼瓦。

 

拝殿の後方には、拝所(幣殿?)があります。中央奥に見えるのは本殿。

切妻、銅板葺。

 

破風板拝みには梅鉢懸魚。

妻飾りには角柱の束が立てられています。

内部は棹縁天井。

 

本殿

拝所と塀の奥には、本殿が鎮座しています。祭神は宇多天皇(仁和寺の開基)の母の班子皇后。

本殿は、一間社春日造、こけら葺。

1644年(寛永二十一年)再建。「福王子神社 2棟1基」として国指定重要文化財*1

 

向拝は1間。向拝柱は面取り角柱。

側面の木鼻は、象鼻に近いシルエットのもの。上には皿斗が乗っています。

柱上の組物は連三斗。

 

向拝の虹梁を正面から見た図。

虹梁は眉欠きと袖切が彫られ、渦状の絵様がついています。

中備えは透かし蟇股。雀と思しき鳥が彫られています。

 

向拝と母屋のあいだには、湾曲した海老虹梁がわたされています。向拝側は組物の上から出ていて、母屋側は頭貫の位置に取り付いています。

向拝の軒裏(写真左)と母屋の軒裏(写真右)は直交していて、破風板のような部材を境界にすることで軒裏の取り合いをさばいています。

縋破風の桁隠しには猪目懸魚。

 

母屋柱は円柱。

正面の柱間は格子戸、側面は白い横板壁。

縁側は3面にまわされています。欄干は跳高欄。背面には脇障子を立てています。

 

軸部は長押と頭貫で固定されています。頭貫には拳鼻。

組物は出三斗。

中備えは蟇股。彫刻の題材は雁。

 

正面の破風。

破風板の拝みには猪目懸魚。破風の奥の妻飾りは豕扠首。

大棟は甍棟で、鬼板に菊の紋があります。

背面も見たかったのですが、後方は塀や灌木に阻まれて観察できませんでした。

 

本殿向かって左には、夫荒神社(ふこう-/ぶこう-)。

一間社流造、銅板葺。

 

以上、福王子神社でした。

(訪問日2023/02/23)

*1:附:棟札、石燈籠2基