今回は岩手県盛岡市の報恩寺(ほうおんじ)について。
報恩寺は盛岡市街の北東に鎮座する曹洞宗の寺院です。山号は瑞鳩峰山。
創建は1394年(応永元年)で、南部守行によって三戸郡(現在の青森県)に開かれたとのこと。江戸初期の南部氏の盛岡移転にともない、当寺も現在地へ移転しました。 以降は盛岡藩内の寺院の僧録所となり、盛岡五山のひとつとして隆盛しました。
境内には499体の羅漢像を納めた羅漢堂があり、像と堂は両者とも市の文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒020-0016岩手県盛岡市名須川町31-5(地図) |
アクセス | 上盛岡駅から徒歩10分 盛岡ICから車で20分 |
駐車場 | 20台(無料) |
営業時間 | 09:00-16:00 |
入場料 | 境内は無料、堂内拝観は有料(300円) |
寺務所 | あり |
公式サイト | なし |
所要時間 | 20分程度 |
境内
山門
報恩寺の境内は南西向き。入口は住宅地の生活道路に面しています。
山門は、三間一戸、楼門、入母屋、正面背面軒唐破風付、桟瓦葺。
1978年造営。
正面の柱間は3間。中央の1間が広く取られています。
側面は2間で、前方の1間は吹き放ち。
左右の奥の柱間には仁王像が安置されています。
柱は下端が絞られ、そろばん珠のような形状の礎石の上に建てられています。
中央向かって右の柱。
柱は円柱。前面には唐獅子の木鼻。
柱上には台輪が通り、中備えの蟇股にも彫刻が入っています。
柱と虹梁の接続部には、波の意匠の持ち送りが添えられています。
右の隅の柱。
見返り竜の彫刻がつき、台輪にも木鼻がついています。
中央の組物は木鼻のついた二手先。
右側面には獏の彫刻。
隅の組物は大量の木鼻が付き、にぎやかな外観。
内部は格天井が張られています。
通路部分には虹梁がわたされ、笈形付き大瓶束が立てられています。
門扉は桟唐戸。
戸の羽目板には麒麟と思しき彫刻。
背面。
柱間は横板壁。
正面から見ると禅宗様の門に見えますが、背面を見ると、意外にも軸部は長押が多用されています。
上層は中央にも柱が立ち、正面(桁行)4間。風変わりな構造です。
扁額は山号「瑞鳩峰山」。
柱間の建具は、中央の2間が引き戸、左右の各1間が火灯窓。
上層の柱も円柱。
頭貫と台輪には禅宗様木鼻。
中備えの蟇股は、結綿が彫られています。
柱上の組物は四手先。
隅の組物には竜の頭の彫刻がついています。
軒裏は二軒繁垂木で、放射状の扇垂木。
唐破風の小壁には笈形付き大瓶束。
破風板の兎毛通は蕪懸魚。鰭と桁隠しは唐草の意匠。
上層の背面。
こちらも4間で、軒唐破風が設けられています。
鐘楼と本堂
山門の先には鐘楼があります。
入母屋、銅板葺。
柱は円柱。
柱の上部には台輪が通っていますが、頭貫はありません。虹梁の木鼻と頭貫の位置の木鼻が一体化していて、渦状の繰型が上下に2つついた風変わりな形状になっています。
柱上の組物は出三斗。
軒裏は平行の二軒繁垂木。
虹梁中備えは笈形付き大瓶束。
台輪の上の中備えは木鼻付きの平三斗。
本堂の手前には薬医門。
一間一戸、薬医門、切妻、桟瓦葺。
柱は角柱。
前方後方ともに、柱の側面に冠木が突き出ています。
妻飾りは板蟇股。
破風板の拝みは猪目懸魚。
本堂は、入母屋、向拝1間 入母屋(妻入)、桟瓦葺。
造営年不明。
本尊は釈迦三尊。
正面の千鳥破風。
拝みには鰭付きの蕪懸魚。
破風の内部に妻飾りはなく、白い壁になっています。
向拝は入母屋になっていて、左右方向にも垂木が伸びています。
向拝柱は几帳面取り角柱。柱上の組物は出三斗を2つ重ねたもの。
虹梁木鼻は拳鼻。
内部には格天井が張られています。
向拝と母屋の軒の取り合い部分。
屋根は一体化しているように見えますが、向拝の軒を低くすることで軒をおさめています。
境内の東側にも薬医門があります。
一間一戸、薬医門、切妻、銅板葺。
前述の薬医門と似た構造で、側面には冠木が突き出ています。
破風板の拝みは蕪懸魚、桁隠しは蕪懸魚。
羅漢堂
本堂向かって左にある土蔵は羅漢堂。
宝形、桟瓦葺。
棟札より1851年(嘉永四年)再建。宮大工は当地の工匠・戸沢甚助。
市指定有形文化財。堂内の五百羅漢も市指定文化財で、その附として棟札4枚(この堂の造営や改築の記録)があります。
堂内の拝観は有料(300円)。
内部や五百羅漢は撮影も可能のようですが、今回は時間がなかったため割愛。
扁額は「羅漢堂」。
軒下には渦状のパターンが付き、花狭間のような形状の窓が設けられています。
壁面はなまこ壁。
軒裏は放射状の一重繁垂木。
以上、報恩寺でした。
(訪問日2022/04/17)