今回は奈良県桜井市の安倍文殊院(あべのもんじゅいん)の白山堂(はくさんどう)について。
安倍文殊院は市南部の高台の住宅地に鎮座している華厳宗の寺院です。山号は安倍山、寺号は崇敬寺(そうきょうじ)。
創建は645年(大化元年)、安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)の開基とされます。当初は同市の安倍寺跡に鎮座し、法隆寺式の大伽藍だったようですが、平安時代に妙楽寺(談山神社)との抗争で全焼しました。鎌倉時代に現在地へ移転して再興されましたが、1563年に松永久秀の軍勢による兵火で主要な堂宇を焼失しています。江戸時代には現在の本堂が再建されました。
当記事ではアクセス情報および白山堂とその周辺の境内について述べます。
現地情報
所在地 | 〒633-0054奈良県桜井市阿部645(地図) |
アクセス | 桜井駅から徒歩25分 橿原高田ICまたは橿原北ICから車で20分 |
駐車場 | 200台(500円) |
営業時間 | 09:00-17:00 |
入場料 | 白山堂周辺は無料、本堂・金閣浮御堂の共通券は1,200円 |
寺務所 | あり |
公式サイト | 安倍文殊院 |
所要時間 | 白山堂周辺は10分程度 |
境内
白山堂(白山神社本殿)
白山堂は安倍文殊院の境内の東端に、西面して鎮座しています。
安倍文殊院の鎮守社で、別名は白山神社。案内板では、縁結びの神であることが強調されていました。
白山堂の手前には木造の明神鳥居。扁額は「白山大権現」。
周囲は赤い板塀に囲われています。
白山堂は、一間社流造、正面軒唐破風付、こけら葺。
室町後期の造営と考えられています。「白山神社本殿」の名称で国指定重要文化財となっています。
祭神は案内板によるとククリヒメ。おそらくイザナミとイザナキも祀られています。
正面の向拝は1間。
向拝柱のあいだには虹梁は渡されておらず、神社本殿としてかなり風変わりな造りをしています。
奥の母屋は正面に3組の扉が設けられています。よって3柱の神が祀られていると思われます。
向かって左の向拝柱。
柱は角柱で、小さく面取りされています。
虹梁はなく、柱の上部には内側・外側ともに木鼻がついています。内側(写真右)の木鼻は象鼻、外側(左)の木鼻は拳鼻を大きくしたものが使われています。
柱上の組物は連三斗。外側の木鼻が、巻斗を介して組物を持ち送りしています。
正面の軒唐破風。
破風板の拝みには兎毛通。
唐破風の小壁には透かし蟇股。はらわたの彫刻は一部が欠損しているのか、題材がよく解りません。
母屋の手前には角材の階段が7段。
柱の陰になってしまっていますが、階段には昇高欄があります。
縁側の欄干は跳高欄。脇障子は母屋の前面に立てられています。
母屋の扉の上には長押が打たれ、その上には巻斗と花肘木が使われています。
花肘木は透かし蟇股を上下逆にしたような形状で、蓮の花が彫られています。
母屋柱は円柱。見えにくいですが、柱上は舟肘木。中備えはありません。
妻飾りはよく見えず。破風板の拝みと桁隠しに猪目懸魚が下がっています。
軒裏は一重のまばら垂木。
白山堂向かって左手(北)には、東古墳なるものがありました。通称は閼伽井窟(あかいくつ)。
7世紀前半に造られたとのこと。県指定史跡。
不動堂など
白山堂の手前には不動堂。こちらも西向きです。
宝形、桟瓦葺。
正面・側面ともに3間。縁側はなく、内部は土間のようです。
母屋柱は円柱。頭貫の上に台輪が通っています。
中備えは、中央の「不動堂」の扁額(?)の上に蟇股があります。
軒裏は二軒まばら垂木。
頭貫木鼻は象鼻。その上に添えるように台輪木鼻がついています。
柱上は出三斗。
不動堂の前の広場からは、金閣浮御堂が望めます。堂内拝観は有料。
ほか、本堂では国宝の仏像を拝観できるようで、こちらも有料です。あいにく私は仏像のありがたみが解らないので遠慮しておきました。
以上、安倍文殊院の白山堂でした。
(訪問日2022/02/23)