今回は愛知県豊田市の野神社(の-)について。
野神社は国道153号沿線の野口集落に鎮座しています。
創建は不明ですが、『延喜式』に記載のある野神社に比定されている式内論社です。境内や社殿については標準的な内容で、吹き放ちの拝殿(神楽殿)やこけら葺の本殿を見ることができます。
現地情報
所在地 | 〒470-0314愛知県豊田市野口町水別日面226(地図) |
アクセス | 豊田勘八ICから車で30分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
野神社の境内は南向き。国道153号線から少し奥まった場所に鳥居が立っています。右の社号標は「郷社 野神社」。
鳥居は石造の明神鳥居で、扁額は「埜神社」。鳥居や扁額は社号標よりも新しいものに見えます。
参道の左手には「野口雨情 先祖ゆかりの地」の石碑があります。
野口雨情は童謡「しゃぼん玉」などの作詞で知られる人物で、彼の祖先が当地の出のようです。
拝殿(神楽殿)
参道の先には神楽殿を兼ねていると思われる拝殿があります。
壁がなくて神楽殿のような拝殿があるという点では、同市の猿投神社と似ています。
拝殿は桟瓦葺の入母屋(妻入)。正面3間・側面4間。柱間は吹き放ち、柱は角柱。
柱上の組物は平三斗(ひらみつど)と出三斗(でみつど)。
軒裏は二軒(ふたのき)の繁垂木。内部は格天井。
正面の柱間は若葉が彫られた虹梁(こうりょう)でつながれ、その上の中備えには波の意匠の蟇股(かえるまた)。蟇股の彫刻は曲線的で柔らかい造形。江戸後期あたりの新しいものに見えます。
柱はC面取り(角面取)で、C面の幅がやや広めにとられています。
側面も虹梁はありますが、蟇股はありません。
柱には筋交いのような部材を入れて補強されています。
正面の入母屋破風。
破風板(はふいた)の拝みからは懸魚(げぎょ)が下がっています。
暗くて見えにくいですが、破風の内部には蟇股、虹梁、束、笈形(おいがた)が確認できます。
本殿
拝殿の後方には石段があり、その先に塀で囲われて覆い屋をかけられた本殿が鎮座しています。
本殿はこけら葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
造営年は不明。
祭神はトヨクモノ(豊斟渟命)。
正面から見た図。
虹梁の上の中備えには蟇股が見えますが、シンプルな形状で彫刻もありません。全体的にこの本殿は年代推定の手掛かりにできる箇所が少ないです。
正面の軒先を支える向拝柱の面取りも見たかったのですが、塀に阻まれてこれ以上近づけず、カメラの性能や私の視力が悪いせいで確認できず。向拝柱の柱上の組物は、出三斗と連三斗(つれみつど)を組み合わせたもの。
右側面。
向拝柱と母屋をつなぐ海老虹梁は、大きく上へ湾曲したダイナミックな形状。母屋の頭貫の高さから出て、向拝の組物の高さに降りています。
母屋柱の柱上は出三斗。持出しはありません。
妻壁は、覆い屋の骨組みで見えづらいですが、妻虹梁の上にシンプルな束が立てられているだけでした。
縁側は切目縁(きれめえん)。背面にまでまわされているかは確認できず。欄干は跳高欄(はねこうらん)。床下は縁束。
以上、野神社でした。
(訪問日2020/09/12)