甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【上田市】常楽寺

今回は長野県上田市の常楽寺(じょうらくじ)について。

 

常楽寺は別所温泉の山際に鎮座する天台宗の寺院です。山号は金剛山。

創建については、鎌倉時代に円仁(慈覚大師)によって開基されたといわれ、当時「信州の学海」とまで呼ばれた塩田平の中枢をなす寺院の1つでした。伽藍については茅葺の本堂があるほか、境内の裏にある鎌倉中期の石造多宝塔が国重文に指定されています。

なお、常楽寺の所有・管理下にある北向観音については当該記事をご参照下さい

 

現地情報

所在地 〒386-1431長野県上田市別所温泉2347(地図)
アクセス 別所温泉駅から徒歩10分
上田菅平ICから車で30分
駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 100円
寺務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

本堂

境内に入ると、南東向きの本堂が鎮座しています。堂内は撮影禁止。

本堂の左手には常楽寺美術館(入場料500円)があり古瓦や宗像志功の作品が収蔵されているとのことですが、訪問時は感染症対策のため休館していました。

常楽寺本堂

本堂は茅葺の寄棟(平入)、向唐破風(むこう からはふ)の向拝1間。柱はいずれも角柱。

案内板によると江戸中期の享保年間(1716-1736)の造営。市指定文化財。

本尊は阿弥陀如来。

 

あまり古いものではありませんが、茅葺の建造物としては県内でも屈指の規模。

大棟は箱棟になっており、正面には菊の紋が描かれていました。

 

本堂向拝

向拝の向唐破風の軒下。

虹梁の中備えには蟇股が置かれ、宝輪が浮き彫りされています。

その上では大瓶束(たいへいづか)が棟を受けています。大瓶束の両脇の笈形(おいがた)は、うっすらと雲の意匠が彫られています。笈形の周囲の小壁は漆喰で塗られています。

 

本堂向拝

向唐破風を支える向拝柱は、エッジがC面取りされた角柱。柱上の組物は出三斗(でみつど)。

木鼻は象鼻が使われています。

 

本堂軒下

母屋の軒下。

柱上には雲状の意匠がついた舟肘木(ふなひじき)が置かれ、桁を受けています。

軒裏は一重のまばら垂木。軒先は、分厚い茅葺の断面が整然と切りそろえられています。

 

常楽寺本堂

本堂背面

案内板(上田市教育委員会)によると間口が十間(約18m)あり、長野県内の江戸中期後半の天台真言系本堂として屈指の規模”“江戸中期後半の特色をよく示した貴重な建築”とのこと。

 

石造多宝塔

常楽寺石造多宝塔

案内板にしたがって本堂の左側(西)から境内の裏手の墓地のほうへ入って行くと、その奥には石造多宝塔が鎮座しています。

 

常楽寺石造多宝塔

写真中央の石造多宝塔は総高274cm、安山岩製、銘文より1262年(弘長2年)の造立とのこと。国指定重要文化財(国重文)

案内板の解説は下記のとおり。

 石造多宝塔の類例は全国的に見ても少なく、特に重要文化財指定となると、本塔と滋賀県の小菩提寺の二基にすぎない。さらに本塔は、笠や裳階(もこし)が鎌倉時代の多宝塔の典型を示しており、全国的に見てもたいへん貴重な遺例である。

 

写真左端の石造多層塔は、散乱した状態で大正期に出土したものを組みなおして当地に再建したようです。

市指定文化財。“鎌倉時代の作になるものと思われる”とのこと。

 

常楽寺案内板

案内板の挿絵。

中央の石造多宝塔は「笠や裳階(もこし)に鎌倉期の典型」らしいですが、どういうふうに典型的なのかが解説されておらず、挿絵の図解には笠と裳階がのっていません。

私自身こういった石造物にはぜんぜん詳しくなく、それでも教養にはなるだろうと思って来てみたのですが、この案内板はやや手落ちの感がなきにしもあらずです...

 

以上、常楽寺でした。

(訪問日2020/08/01)

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