今回は山梨県甲府市の穴切大神社(あなぎり だい-)について。
穴切大神社は甲府駅の南西にある住宅地の中に鎮座しています。
甲府盆地に伝わる湖水・蹴裂伝説を創建の由緒としており、縁切りの神としても信仰されているようです。社殿については、江戸後期の楼門と安土桃山時代と考えられる本殿があり、後者は重要文化財に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒400-0034山梨県甲府市宝2-8-5(地図) |
アクセス | 甲府駅から徒歩15分 甲府昭和ICから車で10分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
入口
穴切大神社の境内は東向きで、入口には石の鳥居が立っています。
境内は住宅街の真っ只中にあって入口の鳥居は隣戸の影になっており、目立つ社叢もありません。
随神門
参道を進むと随神門があります。
随神門は銅板葺の入母屋(平入)で、正面1間、内部および背面は3間、側面は2間。2階建ての楼門になっています。
案内板*1によると随神門は1794年(寛政六年)の造営で、棟梁は竹下源蔵。彫刻は諏訪大社下社秋宮で知られる初代・和四郎こと立川和四郎富棟が担当したとのこと。
1階部分。
正面は虹梁のあいだに柱がなく、間口は1間。内部と背面は柱間が3つあるという、ちょっと変わった構造をしています。柱はいずれも円柱。
正面の柱には、正面側に唐獅子、左右には植物の籠彫(かごほり)の木鼻が配置されています。
虹梁の梁間には詰組(つめぐみ)が2つ。甲州の神社ではこういった柱のない箇所にも詰組を置く例がしばしばあります。
1階内部の虹梁。
虹梁の中央上部にはいかにも立川流らしい立体的な波の彫刻が配置されています。正面側の唐獅子も、立川流らしい眼光鋭い造形です。
2階部分。
屋根裏の垂木は二重で、平行。縁側の床板は壁面と直交に張られた切目縁(きれめえん)。
上の写真では見づらいですが、彫刻は唐獅子と象と龍のほか、波間に浮かぶ貝など多彩です。
神楽殿
神楽殿は銅板葺の向唐破風(むこうからはふ)。
柱は角柱で、正面と左右が吹き放ち。赤く彩色された欄干は跳高欄(はねこうらん)。
向唐破風の下の妻壁。
虹梁の上では大瓶束(たいへいづか)が棟を受けており、その左右には笈形が(おいがた)が添えられています。
小壁は縦方向に板が張られています。
ラッキーゴール
そしてこちらが穴切大神社の名物(?)アトラクション、ラッキーゴール。
神楽殿の前に設置されています。八咫烏(ヤタガラス)のイラストがあるのでこの神社は熊野信仰と思いきや、まったくの無関係のようです。
拝殿と本殿
拝殿についてはコンクリートで造られたもの。いちおう拝所のところの屋根が唐破風になっています。
拝殿の右手のほうから裏へ回ると、塀に囲われた本殿があります。
一間社流造、檜皮葺。
建築年代は不明のようですが1687年と1765年に改修を行った際の棟札が残っており、細部の意匠から安土桃山時代のものと推定されているとのこと。棟札とともに重要文化財に指定されています。
祭神は大国主、スクナビコナ、スサノオの3柱。前述したように熊野信仰とは無関係のようです。
後方から見た図。鬼板や大棟には武田菱が輝いています。
手挟(たばさみ)は松が描かれ、ハート形にくり抜かれているのが非常に個性的。
塀のせいで見づらいですが、手挟の下には普通だったら「繋ぎ虹梁」(つなぎこうりょう)という水平材が渡されるはずなのですが、この本殿にはそれがありません。この点も非常に個性的です。
境内社
最後に境内社。
こけら葺きの一間社流造で、正面は軒唐破風付き。この規模の境内社にしては細かな彫刻がついており、非常に凝っています。
いろいろな角度から眺めてみたところ、背面の床下はこんな風になっていました。
これは紛れもなく甲州名物・丸石神。信仰対象として置かれているのか、あるいはただの重石なのかは謎。
以上、穴切大神社でした。
(訪問日2019/11/09)
*1:甲府市教育委員会による設置