今回は長野県のマイナー観光地ということで、諏訪市の習焼神社(ならやき-)について。
習焼神社は、諏訪湖から諏訪大社上社本宮へ向かう途中の道沿いに鎮座しています。諏訪大社の系統の神が祀られており、諏訪湖の南岸の一体の総鎮守といったポジションの神社です。
現地情報
所在地 | 〒392-0131長野県諏訪市真地野4493(地図) |
アクセス |
上諏訪駅または茅野駅から徒歩1時間 諏訪ICから車で10分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 15分程度 |
境内
境内。左が拝殿、右が合併殿(ごうへいでん)です。諏訪大社の系統なので、境内の四囲には御柱が立てられています。
合幣殿
まずは境内の右のほうにある合併殿から見ていきましょう。こちらは銅板葺きの流造。垂木を見ても、切妻であることが解ります。本殿ではないので装飾も少なく、質素な印象。
しかし裏側に回ってみると、庇(ひさし)のようなものが。
これは、向拝...? 案内板では“流造り”と解説されていたのですが、これが向拝なら“両流造(りょうながれづくり)”と言うべきではないでしょうか?
神社建築では、本殿以外の社殿はわりと型にとらわれない自由な造りになっているものが多々見受けられますが、両流造りの社殿をこのような場所で見るとは思ってもいなかったので、かなり驚きました。
幣拝殿
気を取り直して、次は拝殿です。ここの拝殿は“幣拝殿”と言い、拝殿と幣殿が一体になっているようです。諏訪大社と同じですね。
こちらは装飾が多く派手な印象。銅板葺の入母屋(平入)で、向拝は軒唐破風(のき からはふ)付き。
唐破風の懸魚(兎毛通)の彫刻はおそらく鳳凰。虹梁の上は龍でまちがいないですが、その上はきんちゃく袋などが彫られていて、ちょっと変わった題材です。虹梁の両端の木鼻は、この地域だと唐獅子や象がつくのが定番なのですが、この拝殿ではただの波の意匠になっています。
案内板(設置者不明)によると1898年の造営で、棟梁は郷里の伊藤作蔵という宮大工とのこと。
奥の額には「郷社習焼神社」とあり、神社なのになぜか鈴ではなく鰐口(わにぐち)が吊るされていました。
別アングル。
垂木はもちろん二重ですが、向拝の垂木も二重になっており、二軒が2つ連なっているため四重に見えます。垂木の先端は屋根の銅と同じ緑青(ろくしょう)で、統一感があります。
本殿
本殿。合併殿と拝殿がすばらしかったので本殿はどうでもよくなってしまいそうですが、ちゃんと見ていきましょう。
本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。1754年の造営。神社のセオリーにのっとり母屋は円柱、向拝は角柱になっています。
真横から見た図。
海老虹梁は垂木に触れるくらい上に大きく反り曲がっていて、“海老”と呼ばれる理由がなんとなく解ります。
写真左のほうの母屋の壁面の蟇股(かえるまた)はくり抜かれていない簡易的な造り。左上で大棟を受けている束は、大瓶束(たいへいづか)というタイプのもの。大瓶束の両脇には波の意匠の笈形(おいがた)が添えられています。
大瓶束はもともと寺院建築の意匠ですが、神社に使われることもしばしばあります。
舞屋
最後にこちらは舞屋になります。シャッターとガラス窓が少々残念ですが、蟇股や極太の虹梁があります。拝殿とちがって垂木は二重にはなっていません。
以上の4件が習焼神社の社殿になります。境内は小さいですが、よく見てみると社殿はどれも立派で見応えがあります。こういった場所との意外な出会いがマイナー観光地や寺社巡りの醍醐味だと思うのです。
以上、習焼神社でした。
(訪問日2019/04/13)