甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【松本市】四柱神社

今回は長野県の観光地ということで、松本市の四柱神社(よはしら-)について。

 

四柱神社は松本の城下町に鎮座しています。

松本駅から松本城への移動ルートの道中にあり、すぐ近くには縄手通り商店街があります。こうした位置関係から、「四柱神社を見て商店街で買物や食べ歩きを楽しんでから城を見に行く」というのが松本観光の鉄板コースとなっています。

神社としては良くも悪くも賑やかで、建築的な見どころはほとんどありません

 

現地情報

所在地 〒390-0874長野県松本市大手3-3-20(地図)
アクセス 松本駅から徒歩10分
松本ICから車で15分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト なし
所要時間 5分程度

 

境内

参道

四柱神社の鳥居

四柱神社の境内入口。境内は南向きで、すぐ南には女鳥羽川が流れています。

鳥居は直線的な両部鳥居で、笠木が円柱になったタイプのもの。

 

見てのとおり社叢はまばらで、青空が映えて開放感があるのはいいのですが背景にビルが写り込み、神社特有の幽玄な雰囲気はありません。

それどころか観光客や家族連れがひっきりなしに出入りしていて、良く言えば賑やか、悪く言えば落ちつきがないです。

 

四柱神社の手水舎

鳥居の左手には手水舎。手水舎は銅板葺の切妻。

重石のついた網が張られており、これはハト除けでしょう。このような網は、ハトの多さに定評がある善光寺(長野市)でも見たことがないので、ちょっと驚きました。

 

招魂殿

四柱神社の招魂殿

参道を進むと、右手に白木の社殿があります。

招魂殿と言うようで、屋根は銅板葺、三間社神明造(さんけんしゃ しんめいづくり)。

名前からして戦没者を慰霊するためのものと思われ、この手の社殿は神明造が採用されることが多いです。屋根の銅板の光沢からしてさほど古くない様子。

 

屋根には千木と鰹木があり、柱は床下まで円柱に成形されています。室外には棟を支える棟持柱(むなもちばしら)が立っています。

柱と柱をつなぐ部材は貫(ぬき)だけで、神社建築にしては珍しく長押(なげし)が使われていません。

 

拝殿

四柱神社の拝殿

拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。正面に千鳥破風、向拝1間で軒唐破風(のき からはふ)付き。

正面の唐破風から垂れ下がる兎毛通(うのけどおし)には彫刻が施されています。ほか、特筆するほどの点はありませんが拝殿として県内では大きめの部類に入るでしょう。

 

ほとんどの人はその存在を気にかけることすらしないと思いますが、拝殿の裏にはいちおう本殿があります

しかし拝殿の左脇から裏手にまわりこもうとしたところ、いかにも「この先へ入るな」と言わんばかりの縄が張ってありました。なので、本殿が見たいなら境内の東側にあるコインパーキングから覗き込むしかありません

四柱神社の本殿

こちらが四柱神社の本殿になります。

本殿は銅板葺の三間社神明造。先述の招魂殿と同じ様式です。

木の影になって見づらいですが、室外にはしっかりと棟持柱が立てられており、この本殿は前後左右の計4面に縁側がまわされています。欄干は跳高欄(はねこうらん)。

木材の色が黒ずんでいますが、これは古いからではなく、単に黒ずみやすい材質のものを使っただけでしょう。私の素人予想だと、明治期かそれ以降のものと思われます。

 

四柱神社の案内板

案内板を見ても本殿についての解説はない(そもそも本殿を見せる気は無さそう)ですが、その割に祭神とご利益については長々と書かれています。それによると祭神は上に掲載した案内板の写真にある4柱とのこと。テキストに書き起こすのは面倒くさいので割愛。

四柱神社という社名は4柱の神が祀られていることに由来します。ちなみに、神を数えるときの単位は「柱」であり、祭神の数をそのまま社名にした神社は非常に多いです。

 

なお、案内板によるとこの4柱はとてもありがたい神々だそうで、“すべての願いごとが相叶う”とのこと。歴史ある城下町の一等地にありながら、造営年や由緒についての解説が一切ないのは残念で、私としては社殿の造営年や神社の由緒についての話題のほうが知りたかったです。

 

以上、四柱神社でした。

(訪問日2019/04/06,2020/01/11)