甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【京都市】車折神社

今回は京都府京都市の車折神社(くるまざき-)について。

 

車折神社は嵯峨地区の住宅地に鎮座しています。

創建は平安末期から鎌倉初期。儒学者の清原頼業(1122-1189)の死後、当地に彼の霊廟と菩提寺(宝珠院)が造られたのがはじまりです。その後、宝珠院は天竜寺の塔頭となったようです。明治時代の神仏分離では宝珠院から独立しますが衰微し、富岡鉄斎によって中興されました。

現在の境内は江戸後期以降のもの。境内には芸能神社という神社があり、多くの芸能人によって玉垣が奉納されているほか、当社境内は時代劇のロケ地になることも多いようです。

 

現地情報

所在地 〒616-8343京都府京都市右京区嵯峨朝日町23(地図)
アクセス 嵐電 車折神社駅から徒歩1分、または嵯峨嵐山駅から徒歩10分
沓掛ICから車で15分
駐車場 20台(無料)
営業時間 09:30-17:00
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト 車折神社
所要時間 15分程度

 

境内

参道

車折神社の境内は南向き。入口は、住宅地の生活道路に面しています。

 

笠木は円柱状のもの。

柱と笠木の接続部から腕木を出し、屋根の軒裏を受けています。

神明鳥居とも明神鳥居ともつかない造りです。

 

柱(主柱)の前後には、円い控柱が立ち、屋根と貫で接続されています。

鳥居の脇には袖塀がついています。

 

鳥居の手前には境内社。

参道左手には「昇竜」、右手には「愛宕社」。

 

鳥居をくぐると、芸能神社の向かいに「清少納言社」があります。

車折神社の祭神である清原頼業と同族、という縁で清少納言が祀られているとのこと。

 

芸能神社

参道右手には、芸能神社が西面しています。

1957年創建。祭神はウズメ。

入口には石造明神鳥居。

 

鳥居の先には拝殿と思しき建物が2つあり、その裏に本殿が鎮座しています。

 

芸能神社本殿は、一間社春日造、銅板葺。

昭和中期以降の造営と思われます。

向拝の両側面に、黒い枠の格子戸が入っており、正面だけが解放されています。

 

向拝の虹梁中備えは蟇股。

五山の桐の彫刻が入り、鮮やかに彩色されています。

 

向拝柱は角面取り。側面には拳鼻。

柱上の組物は平三斗。

 

向拝柱(写真左)と母屋柱(右)のあいだには、まっすぐな貫と、湾曲した海老虹梁がわたされています。

貫には蝶番がつき、蔀戸を吊っています。

海老虹梁の上には白い壁が張られています。おそらくこの壁の内外で、軒裏の垂木の取り合いをさばいているのでしょう。

 

右側面(南面)。

切目縁が3面にまわされ、背面側をふさぐ脇障子には牡丹と唐獅子が描かれています。縁の下の桁には、三つ巴の紋とU字の文様。

 

母屋柱は円柱で、柱上は舟肘木。

背面の妻飾りは豕扠首。

破風板の拝みと桁隠しには、猪目懸魚。

 

拝殿と本殿

参道に戻って先へ進むと、鳥居の先に拝殿があります。

二の鳥居は石造明神鳥居。

 

拝殿へまっすぐ進むことはできず、参道は右手(東)へ少し迂回します。

こちらは拝殿入口に東面する三の鳥居。石造明神鳥居。

 

拝殿は、入母屋、銅板葺。

1988年再建。

 

拝殿の正面の軒下。

中備えは蟇股、頭貫には拳鼻、柱上は大斗と花肘木を組んだものが使われています。

軒裏は二軒まばら垂木。

 

拝殿の向かいには「祈念神石」なるものがあります。

おそらく、中央に屹立するのが「祈念神石」。周辺に置かれた石は、祈願の成就した人がお礼に奉納したもの。

子宝や安産祈願の石に見えますが、案内板いわく「あらゆるお願い事、お悩み事に霊験あらたか」とのこと。

 

拝殿の後方には本殿。祭神は清原頼業。

入母屋(妻入)、向拝1間、銅板葺。

1752年(宝暦二年)再建。2014年改修。

 

本殿の向拝。

母屋柱は角柱で、海老虹梁で向拝とつながっているのが確認できます。

 

左側(東)から見た全体図。

大棟には3本の鰹木と、外削ぎの置き千木。

 

八百万社

車折神社本殿の後方には八百万神社(八百萬神社)。文字どおり、八百万の神々が祀られているらしいです。

流造、銅板葺。

屋根は反りが小さく、向拝部分の軒が異様に長く造られています。流造として、あまり美しい形とは言えないと思います。

 

柱は角柱。中央の柱のみ、柱上に舟肘木が使われています。

妻飾りは角柱の束。

破風板には猪目懸魚。

 

その他の境内社

境内の裏手にも、境内社が点在しています。

こちらは境内の裏参道にある「清めの社」なる社殿。東向き。

鳥居の奥には、白い円錐状の石。案内板いわく「さわるとご利益が受けられません」とのこと。

 

「清めの社」は、三間社流造、銅板葺。見世棚造。

 

「清めの社」のはす向かいには、弁財天社。

拝所は、4つの鳥居を組み合わせて屋根をかけた、独特な建物になっています。

本殿は、一間社春日造、銅板葺。

 

境内の北端にも石造明神鳥居が立っています。こちらは裏側(南面)。

奥に見えるのは車折神社駅。

 

境内南東の駐車場の近くにも境内社が点在しています。

こちらは「大黒天」。

大社造のような、妻入の切妻を組み合わせた形状の社殿になっています。

 

「稲荷社」。社殿は、流造、銅板葺。

駒狐は、こけしのような体形をしています。

 

「小唄堀派祖霊社」。春日造、銅板葺。

 

以上、車折神社でした。

(訪問日2023/02/22)