今回は神奈川県鎌倉市の八雲神社と常栄寺について。
八雲神社(大町)
所在地:〒248-0007神奈川県鎌倉市大町1-11-20(地図)
八雲神社(やくも-)は市街東部の大町(おおまち)地区の住宅地に鎮座しています。
創建は不明。社伝によると永保年間(1081-1084)に、源義光が祇園(京都市)の八坂神社(牛頭天王)を勧請したのがはじまりとのこと。以降、祇園社、天王社と呼ばれ、明治時代に現在の社名に改められました。関東大震災で社殿が倒壊し、現在の社殿は昭和初期の再建です。
境内
八雲神社の境内は西向き。入口は住宅地の生活道路に面しています。
入口には石造の明神鳥居。
二の鳥居は石造の明神鳥居。扁額はなく、額束です。
拝殿は、入母屋、桟瓦葺、向拝1間、銅瓦葺。
1930年(昭和五年)再建。
屋根噴きは、向拝の部分だけ銅瓦が使われています。
屋根の上の鬼板には、織田木瓜のような紋が見えます。
唐破風の兎毛通の彫刻は、松の木と2羽の鳩。
向拝。
虹梁中備えには竜の彫刻。
向拝柱は几帳面取り角柱。側面には見返り唐獅子の木鼻。
虹梁の眉欠きには波に千鳥の彫刻がありますが、しめ縄と紙垂がかかっていてよく見えず。
虹梁の端部の下面に添えられた持ち送りにも、波に千鳥の彫刻が入っています。
柱上の組物は、出三斗を左右に並べて連結した構造のもの。
海老虹梁はゆるやかにカーブした形状。向拝側には、波が彫られた持ち送りが添えられています。
母屋柱は角柱。軸部は長押と頭貫で固定され、柱上に台輪が通っています。
隅の柱には、斜め方向に唐獅子の木鼻がついています。
組物は出組で、柱間にも組物が配されています。
拝殿の後方には本殿。
桁行3間・梁間2間、三間社神明造、銅板葺。
柱は角柱で、棟持柱がなく、神明造としては簡略化された造り。棟覆板や鞭掛などの意匠が見えるため、神明造だと解ります。
境内案内板によると、祭神はスサノオ、クシナダ(稲田姫)、八王子神。加えて「佐竹氏の霊」なるものも祀られていて、これは室町時代に佐竹氏の屋敷の祠が当社に合祀されたことに由来するようです。
本殿の右手(南)には境内社。
鳥居の右の階段を進むと「祇園山ハイキングコース」なるものがあるようです。
境内社は一間社流造、銅板葺。
縁側の欄干が省略されていて、やや簡素な造り。
ほか、境内には宝物館もありましたが、時間外で入れなかったため割愛。
以上、八雲神社でした。
常栄寺(ぼたもち寺)
所在地:〒248-0007神奈川県鎌倉市大町1-12-11(地図)
常栄寺(じょうえいじ)は大町地区の住宅地に鎮座する日蓮宗の寺院です。山号は慧雲山。通称はぼたもち寺。
創建は不明。寺伝によると、源頼朝が当地の山上に造った桟敷が前身とのこと。1271年(文永八年)の龍ノ口法難の際、当地の尼僧が日蓮にぼたもちを届けたのが「ぼたもち寺」の通称の由来とされます。
正式に寺院として開かれたのは江戸初期で、1606年(慶長十一年)に池上本門寺(東京都大田区)の日詔によって開山されました。
境内
常栄寺の境内は西向き。前述の八雲神社(大町)の入口の通りを、北へ数十メートルほど行った場所にあります。
境内入口には、高麗門と冠木門を組み合わせた形式の門。
本堂は、入母屋、向拝1間、正面小屋根付 切妻(妻入)、瓦棒銅板葺。
屋根の上には、千鳥破風ではなく切妻の小屋根が乗り、印象深いファサードとなっています。母屋の大棟は反りがついていて、手前の小屋根とともに独特な稜線を形成しています。
小屋根の部分。
破風の端が途切れていて、母屋の屋根から独立しているのがわかります。
小屋根の軒下には組物(出三斗)と蟇股、大瓶束が使われています。
向拝部分。こちらは簡略的な造り。
向拝柱は几帳面取り。柱上には皿付きの出三斗。
虹梁中備えは蟇股。
以上、常栄寺でした。
(訪問日2022/09/28)