甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【葛城市】當麻寺 その1(仁王門、薬師堂)

今回は奈良県葛城市の當麻寺(たいまでら)について。

 

當麻寺(当麻寺)は市西部の山裾に鎮座する真言宗および浄土宗の寺院です。山号は二上山。

創建は不明。寺伝によれば、612年に聖徳太子の異母弟・麻呂古王によって開かれ、天武天皇(在位673-686)の時代に現在地へ移転したとのこと。本堂(曼荼羅堂)は奈良時代に建立されたもので、平安期に2度の改造を経て現在の姿になっています。平安末期の南都焼討では、境内伽藍の一部を消失しました。室町期には知恩院(浄土宗)の僧侶が奥の院を開いたことで、2宗派が並立する寺院となります。江戸期には31もの子院があったとのこと。

現在の境内はおもに奈良時代から鎌倉時代にかけてのもの。本堂と東塔は奈良時代末期のきわめて古い建造物で、国宝に指定されています。また、2基の三重塔(西塔・東塔)が現存する唯一の寺院とのこと。本堂内陣では巨大な當麻曼荼羅を間近で拝観でき、必見の内容です。

 

当記事ではアクセス情報および仁王門、薬師堂などについて述べます。

本堂、講堂、金堂については「その2」を、

東塔、西塔については「その3」をご参照ください。

 

現地情報

所在地 〒639-0276奈良県葛城市當麻1263(地図)
アクセス 当麻寺駅から徒歩15分
橿原北ICから車で30分
駐車場 奥院に30台(無料)
営業時間 随時(※堂内拝観は09:00-17:00)
入場料 無料(※堂内拝観は有料、本堂などの3棟は500円、奥院は500円)
寺務所 あり
公式サイト 當麻寺 奥院 | 浄土庭園 納骨堂 綴織當麻曼陀羅
所要時間 1時間程度

 

境内

仁王門

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當麻寺の境内は東向き。浄土系の寺院は西方を拝むために伽藍を東向きにすることが多いです。

境内入口は山際の斜面に広がる集落の最奥部にあります。奈良県の寺院の中でもかなり著名な古刹・名刹だと思うのですが、その割に道幅が広くなく、周辺もあまり観光地化されていないのが意外でした。

境内は自由に出入りでき、入場無料。主要な伽藍の堂内や、周辺の塔頭を見たい場合は拝観料を払うというシステムになっています

 

仁王門は三間一戸、楼門、入母屋、本瓦葺。

造営年不明。おそらく江戸期以降のもの。県指定文化財。

 

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下層。

正面は3間で、3間あるうちの1間が通路になっています(三間一戸)。

左右の柱間には仁王像。

 

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柱は円柱。頭貫木鼻は象鼻。

中備えは中央の柱間が蟇股、左右の柱間が間斗束になっています。

柱上の組物は二手先の出組。

 

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上層。

組物は木鼻のついた二手先。

左右の柱間の中備えは蓑束になっていました。

軒裏は平行の二軒繁垂木。

 

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背面の全体図。

下層の左右の柱間は、何も置かれていない空間になっています。

 

鐘楼

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仁王門の先には鐘楼。

切妻、本瓦葺。下層は袴腰。

 

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柱は円柱、柱上は舟肘木。

妻飾りはありません。内部は化粧屋根裏のようです。

 

内部に吊るされた梵鐘は當麻寺の創建当初のものと推定されており、日本最古級の梵鐘とのこと。国宝に指定されています

 

中之坊

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鐘楼のすぐ近く、境内南側には塔頭(境内寺院のこと)の中之坊。こちらは山門で、北向き。

内部の拝観は後述の本堂などとは別料金

書院と茶室が国重文、庭園が国の名勝と史跡に指定されているようですが、後述の本堂などの拝観ですっかり満足してしまい、ここまで拝観する気になれなかったので今回は割愛。入口の門のみを紹介します。

 

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中之坊の山門は切妻、本瓦葺。通路部分に向唐破風、銅板葺の庇がついています。

通路部分の水引虹梁の上では、笈形付き大瓶束が唐破風の棟を受けています。

 

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山門向かって右(西側)には名称不明の門。

一間一戸、四脚門、切妻、本瓦葺。

 

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前後の控柱は角柱。木鼻は正面側面ともに拳鼻。

柱上の組物は大斗と実肘木。

 

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内部の通路の桁の上には蓑束が立てられています。

側面の中備えは蟇股。妻飾りは大瓶束。

内部は化粧屋根裏。

 

薬師堂

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前述の鐘楼や参拝者用トイレのあるあたりから門をくぐり、境内の外に出て十数メートルほど行くと、當麻寺の敷地外の住宅地に薬師堂が鎮座しています。南向き。

桁行3間・梁間3間、寄棟、本瓦葺。

1447年(文安四年)造営国指定重要文化財

 

後述の講堂と同じ寄棟の堂ですが、こちらは比較的新しい時代のもののため禅宗様の意匠が一部に取り入れられています。見たところ構造や意匠は正連寺大日堂(橿原市)と似ていて、どちらかと言えば真言宗の密教本堂に近い造りだと思います。

 

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正面。

柱はいずれも円柱で、柱間は正面側面ともに3間(方三間)。

正面の柱間は3間とも桟唐戸。中央の間口が若干広く取られています。

頭貫の上の中備えは、左右の柱間は間斗束、中央には中備えはありません。

 

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頭貫木鼻は拳鼻。

柱上の組物は出三斗。

軒裏は平行の二軒繁垂木。

 

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右側面(東面)。

前方の1間は桟唐戸、後方の2間はしっくい塗りの壁になっています。

中備えはいずれも間斗束。

 

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背面。中央には引き戸が設けられています。

堂内は背面側に1間四方の内陣が設けられているらしいです。

縁側はなく、内部はおそらく土間になっていると思われます。

 

仁王門、薬師堂などについては以上。

その2では本堂、講堂、金堂について述べます。