今回は長野県小川村の高山寺(こうさんじ)について。
高山寺は小川村の中心地から少し山道を登った先の集落の中にあります。
伽藍は西にアルプス(飛騨山脈)を望む見晴らしの良い高台に鎮座しており、雄大な展望の中で北信唯一の三重塔を楽しむことができます。
現地情報
所在地 | 〒381-3301長野県上水内郡小川村大字稲丘7119(地図) |
アクセス | 長野ICから車で50分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり |
公式サイト | なし |
所要時間 | 15分程度 |
境内
仁王門
高山寺の境内入口。この時点ですでに表題の三重塔がのぞいて見えます。
仁王門は鉄板葺の切妻(平入)。正面3間・側面2間で、正面側は壁がなく吹き放ち。柱はいずれも角柱でした。
内部には仁王像が安置されています。山号は「宝珠山」。
鐘楼門と本堂
仁王門をくぐると山門と鐘つき堂が一体化した鐘楼門があります。
鐘楼門は2階建てで、鉄板葺の入母屋(平入)。正面1間・側面2間で、1階・2階ともに柱は角柱。
背面から見上げた鐘楼門。
屋根裏は平行の垂木が四方に伸び、鐘が吊るされた天井には花の描かれた絵が収められています。2階の縁の床板は切目縁(きれめえん)、欄干は跳高欄(はねこうらん)。1階の梁の上では組物と蟇股(かえるまた)が2階の縁の下を支えています。
年季が入っていて渋い印象ですが、この鐘楼門は一般の参拝者でも自由に2階に昇って鐘をついていいとのこと。
そういうわけで、2階に昇ってみました。2階からは三重塔もよく見えますが、これについては後述。
鐘楼門の北側には本堂があります。本堂は鉄板葺の寄棟(平入)。
三重塔
境内の東側には三重塔があります。右は前述の鐘楼門。
写真は本堂の前から撮ったもので、こちらが三重塔の正面になります。
三重塔は、三間三重塔婆、銅板葺。全高17.1メートル。
案内板(小川村教育委員会)によると1694年(元禄七年)の再建とのこと。再建前の塔は、1195年に源頼朝によって創建・建立されたものと伝えられています。
1層目。内部には胎蔵界大日如来、阿弥陀如来、釈迦如来の三尊が安置されており、それと思しき仏像を格子戸越しに拝むことができました。
扉は通常の板戸で、四方全ての壁面に設けられています。壁板は水平方向に張られています。
縁側は壁面と直交に板を張った切目縁。床下を観察すると、円柱である母屋の柱は床下が八角柱になっていました。
正面左側から見上げた図。
1層目・2層目・3層目いずれも屋根裏の垂木は二重の平行垂木で、丸桁(がぎょう)を受ける組物は三手先(みてさき)で尾垂木(おだるき)がつき出たものでした。
再度、鐘楼門の2階に昇って三重塔を眺めた図。左端に写り込んでいるのは鐘つきに使う撞木(しゅもく)です。
鐘楼門に昇ると2階の高さから眺めることができるので、上の層に行くにつれて屋根や母屋が小さくなっている様子を観察できます。
2層目・3層目は縁に擬宝珠(ぎぼし)のついた欄干が立てられており、縁の下は平三斗(ひらみつど)というタイプの組物で受けられています。
江戸初期~中期のものなので彫刻がないのは当たり前なのですが、蟇股のような装飾的な部材がほとんど見られず、無彩色の外観も相まって非常に質素で落ち着いた印象を受けます。
再建の折、資金集めに苦労したという旨が案内板に書かれていたので、無用な装飾にはお金を掛けられなかったのかもしれません。とはいえ、派手な装飾は鑑賞する際のノイズにもなり得るので、この質素な外観のほうが塔そのものの純粋で混じり気のない美しさを味わうことができて良いと思います。
観音堂
本堂の裏手には観音堂があります。
観音堂は銅板葺の入母屋(妻入)で、正面3間・側面5間。
内部は外陣・内陣に分けられており、外陣から奥を覗き込むと中央に厨子が安置されていました。また、その周囲には小さな仏像が壁一面に配置されており、とてもありがたみのある景色でした。
仏像の写真については割愛。三重塔を満足行くまで眺めたら、この観音堂も見て行ってください。
最後に、境内の外から伽藍を撮影した図。青く高く澄んだ秋の空に三重塔が映えます。
伽藍については以上。
県内に10基ほどしかない貴重な三重塔の1つがあるだけでなく、観音堂もまた一見の価値のある内容です。あと、鐘楼門に昇って2階の高さから三重塔を眺めるという体験ができる点も非常におもしろかったです。
以上、高山寺でした。
(訪問日2019/11/02)