今回は群馬県のマイナー観光地ということで、富岡市の菅原神社(すがわら-)について。
菅原神社は富岡市郊外の山間の集落の中に鎮座しています。
社格は村社で、言うなれば村の鎮守といったポジションの神社なのですが、本殿は立派な三間社で、その壁面は極彩色の彫刻で埋め尽くされていて非常に見栄えのする内容となっています。
現地情報
所在地 | 〒379-0208群馬県富岡市妙義町菅原1389-1(地図) |
アクセス | 松井田妙義ICから車で15分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道
参道の大部分は階段になっており、駐車場は参道の中腹あたりにあります。
駐車場から少し下ったところには二の鳥居が立っています。両部鳥居で、扁額は「菅原神社」。
境内は南向き。
石段を登って行くと参道の両脇は杉並木になり、随神門が現れます。
随神門は鉄板葺の切妻(平入)で、正面3間・側面2間。柱は角柱。三間一戸の八脚門です。
拝殿と神楽殿
随神門をくぐるとすぐに拝殿が立っています。
拝殿は鉄板葺の切妻(平入)で、正面に千鳥破風、向拝1間。
賽銭箱には梅の紋があり、菅原という社名からもわかるように、祭神は菅原道真。合格祈願の絵馬がいくつもかけられていました。
拝殿の左手には神楽殿があります。
神楽殿は鉄板葺の入母屋(妻入)で、正面3間・側面3間。正面側の2間は壁のない吹き放ち。柱は角柱。
いくつか額がかけられており、おそらく奉納者の名簿と思われますが、退色がひどくてほとんど判読不能。
本殿
拝殿の裏側には本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。正面3間・側面2間、軒唐破風(のき からはふ)付きの向拝3間、正面に千鳥破風(ちどりはふ)。
詳細は、私の素人解説よりも案内板(富岡市教育委員会)のほうが正確かつ厳密なので、そちらに譲ります。
本社はかっての村社の一つで、天歴四(950)年の創建と伝えられ、祭神は菅原道真公であるが、神像は道真が二五歳の時、自ら彫った像であるとされている。
本殿は寛政八(1796)年に落雷のために焼失し、その後、領主松平氏により再建されたものが現在の建造物であるという。本殿内部に架けられている錦旗には文政五(1822)年の墨書銘が見られるが、建物細部の様式から判断して、そのころの建立と考えられる。
本殿の建築の構造は三間社流(原文ママ)の形式で、屋根は身舎に千鳥破風、向拝軒唐破風が付き、屋根は今は銅板葺であるがもとは茅葺であったという。
身舎は丸柱で切目長押、腰長押、内法長押、頭貫を廻している。組物は二手先で拳鼻、絵様実肘木、尾垂木で構成されている。身舎と向拝は海老虹梁で繋がれている。
(後略)
つまり、この本殿は1822年あたりのもののようです。
本殿の正面左側。正面には扉が3組あります。
正面の庇(ひさし)は白と黄色に彩色された角柱で支えられており、唐獅子と象の木鼻がついています。
角柱と母屋(建物の本体)をつないでいる白い部材が海老虹梁(えびこうりょう)。
このあたりの作風は、明らかに江戸期のものです。
側面にも唐獅子の木鼻がついており、その上には二手先の赤い組物が配置されています。組物から突き出ているのが尾垂木(おだるき)。
組物によって白い梁が持出しされており、その上にはさらに組物があります。
左側面の彫刻。
題材は、波と軍配でしょうか。甲信地方では見かけない題材です。
壁面はやや立体感に欠ける造形で、退色が進んでいるのがちょっと残念です。
木鼻の唐獅子は造形は悪くないと思いますが、さすがに諏訪の立川流・大隅流と比較してしまうと躍動感に欠け、見劣りの感がなきにしもあらず。
縁側に立てられた脇障子の彫刻は立体感がありますが、題材不明。
背側にも縁側がまわされています。縁側の床下は組物で支えられています。
こちら側にも壁面や木鼻の彫刻が配置されており、直射日光の当たらない北側なので退色があまり進んでおらず、左右側面と較べると若干ですが色鮮やか。
右側面。
千鳥破風の鬼板についているのは鬼面。案内板によるとこれは“類例がない”とのことですが、甲信地方の神社本殿では、鬼板に鬼面をつける例はべつだん珍しくないです。
具体的な例をあげると、武田八幡宮(韮崎市)や若一王子神社(大町市)など重要文化財が出てきます。文化財指定されていないものまであげると枚挙にいとまがありません。
おそらくこの案内板は「上州(群馬県)の神社本殿で鬼面はめずらしい」ということを言いたいのでしょう。
社殿の解説は以上。
富岡市は素晴らしい神社がいくつもあるせいでその陰に隠れてしまっていますが、この菅原神社もなかなか立派。
菅原道真にちなんだのか、この近辺は梅の名所なので、春先に訪れるとより楽しめるでしょう。
以上、菅原神社でした。
(訪問日2019/03/01)