今回は京都府京都市の妙心寺(みょうしんじ)について。
妙心寺は市の北西部の寺町に鎮座する臨済宗妙心寺派の大本山です。山号は正法山。
創建は室町初期。花園上皇の発願を受け、1342年(暦応五年・康永元年)に関山慧玄によって開かれました。3代将軍・義満の時代には幕府の弾圧により徳雲庵という寺の末寺となりましたが、1432年(永享四年)に日峰宗舜によって再興されました。応仁の乱では境内伽藍を焼失しますがすぐに復興され、以降、天皇家や大名家の庇護を受けて隆盛します。
現在の境内は、山門から仏殿が南北の軸上にならんだ典型的な禅宗式伽藍配置となっています。周辺の町内は、多数の塔頭が並ぶ独特な景観となっており、塔頭も含めた境内全体が「妙心寺境内」として国指定史跡となっています。伽藍は安土桃山時代から江戸後期のもので、13棟が国の重要文化財に指定されています。
当記事ではアクセス情報および南門、勅使門、山門について述べます。
玄関、経蔵などについては「その3」をご参照ください。
現地情報
所在地 | 〒616-8035京都府京都市右京区花園妙心寺町64(地図) |
アクセス | 花園駅から徒歩10分 京都南ICから車で30分 |
駐車場 | 40台(700円) |
営業時間 | 境内は随時、拝観は09:00-12:00,13:00-15:30 |
入場料 | 境内は無料、法堂などの堂内拝観は700円 |
寺務所 | あり |
公式サイト | 妙心寺 |
所要時間 | 妙心寺の主要伽藍は1時間程度 |
境内
南門
妙心寺の境内は南向き。入口は花園駅北側の住宅地に面しており、門をくぐると一帯の区画は広大な寺町になっています。
入口の南門(なんもん)は、三間一戸、薬医門、切妻、本瓦葺。
1610年(慶長十五年)再建。「妙心寺 13棟」として国指定重要文化財*1。
正面は3間で、うち1間が通路(三間一戸)。
柱は面取り角柱が使われています。
柱の上には冠木がわたされ、冠木の上から手前(写真右上)に腕木を突き出して、桁で軒裏を受けています。
梁の上の妻飾りは板蟇股。
内部に天井はなく、化粧屋根裏。軒裏は二軒まばら垂木。
門扉は縦板の扉が使われています。
勅使門
南門向かって左(西)には勅使門(ちょくしもん)があります。こちらは通行できません。
勅使門は、一間一戸、四脚門、切妻、檜皮葺。
南門と同様に、1610年再建、国重文。
背面の虹梁。眉欠きと袖切がつき、両端に渦状の絵様が小さく彫られています。
中備えは出三斗。ここに平三斗ではなく出三斗を置くのは風変わりだと思います。
内部には、虹梁と直交する梁がわたされています。四脚門ではあまり見ない構造です。
背面向かって右手前(北西)の柱。
柱はいずれも円柱で、上端が絞られています。
四脚門は前後の控柱を角柱にすることが多いですが、この門は勅使門*2であるためか、格式の高い円柱*3が使われています。
柱の正面と側面には木鼻。
柱上の組物は出三斗。側面の木鼻に皿斗が乗り、組物を持ち送りしています。
左側面(西面)。
妻飾りは虹梁と大瓶束。大瓶束の左右には、板蟇股のような笈形がついています。
破風板の拝みは、鰭付きの蕪懸魚。桁隠しは猪目懸魚。
山門(三門)
勅使門の後方には石橋のかかった放生池があり、その先に大きな山門が鎮座しています。
石橋と山門は通行できず、右手を迂回して境内奥へ進みます。
山門は、五間三戸、楼門、二重、入母屋、本瓦葺。
1599年(慶長四年)再建。「妙心寺 13棟」として国重文。
下層は正面5間。中央の1間は広く取られています。
5間のうち、中央の3間に板戸があります(五間三戸)。
左右の各1間や、側面は白い壁が張られていますが、前面は壁や建具がありません。
向かって右の柱間。
柱はいずれも円柱で、上端が絞られた粽です。
柱間には飛貫と頭貫が通り、柱上は台輪がわたされています。頭貫と台輪には禅宗様木鼻。頭貫の木鼻についた渦は、2回転ほど巻いています。
組物は出組。柱間にも詰組があります。
右側面(東面)。左手前は山廊。
側面2間のうち、前方の1間は壁がありますが、後方の1間通りはすべて吹き放ちです。
扉は、正面から見ると板戸でしたが、背面から見ると桟唐戸のような意匠になっていました。
つづいて上層。
上層も正面は5間。欄干にかぶっていて見づらいですが、正面の建具は5間すべてが桟唐戸です。
軒裏は上層下層ともに二軒繁垂木。下層の垂木は平行であるのに対し、上層の垂木は扇(放射状)。禅宗様建築でよく見られる技法で、このあと紹介する伽藍でも多用されています。
上層も、上端の絞られた円柱が使われ、頭貫と台輪に禅宗様木鼻があります。
組物は尾垂木三手先。
縁側は切目縁。欄干の親柱には逆蓮のような意匠がついています。
右側面。
前方の1間は桟唐戸。後方の1間は縦板壁です。
破風板の拝みには、鰭付きの三花懸魚。
奥まっていてほとんど見えないですが、妻壁には大瓶束があります。
背面。
上層の背面は、5間すべて縦板壁となっています。
山門の左右には、上層へ昇る階段を覆った山廊がついています。こちらは右側面のもの。文化庁のデータベースによると、この山廊は山門の一部というあつかいのようです。
桁行2間・梁間2間、切妻、本瓦葺。
妻面。
柱は面取り角柱。柱間は、縦板壁と連子が入っています。
柱上は舟肘木。
破風板の拝みには、鰭付きの蕪懸魚。
反対側(西側)の山廊は、こちらの山廊を左右(東西)反転させた構造となっていました。
南門、勅使門、山門については以上。