今回は京都府京都市の六角堂(ろっかくどう)について。
六角堂は京都の中心市街地に鎮座する天台宗の単立寺院です。正式名称および寺号は頂法寺(ちょうほうじ)、山号は紫雲山。
創建は寺伝によると飛鳥時代。聖徳太子が、丁未の乱の平定後に開いたらしいです。ただし、昭和中期の発掘調査では、飛鳥時代の遺構は見つからず、平安前期の創建と推定されています。史料上では、藤原道長の日記に「六角小路」という記述があり、平安中期には確立されていたようです。
鎌倉時代には、親鸞が当寺に参篭しています。室町時代は寛正の飢饉の際に当地に救済小屋が立てられ、以降は町民の集会場としての役割も果たしたようです。江戸時代は庶民から信仰を集め、周辺は宿屋の町として発展しています。
現在の境内は狭く、周囲をビルに囲まれています。伽藍は明治以降に整備されたもので、本堂(六角堂)は文字どおり六角形のめずらしい様式で造られています。
現地情報
所在地 | 〒604-8134京都府京都市中京区六角通東洞院西入堂之前町248(地図) |
アクセス | 四条烏丸駅または烏丸御池駅から徒歩5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 06:00-17:00 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり |
公式サイト | 『六角堂』 紫雲山 頂法寺 |
所要時間 | 15分程度 |
境内
山門
六角堂の境内は南向き。入口は六角通という路地に面しています。
右の寺号標は「六角堂」。
入口の山門は、一間一戸、高麗門、切妻、本瓦葺。
山門の左右には、本瓦葺の築地塀がつづいています。
柱は角柱。
主柱に冠木をわたし、前後に腕木を出して軒裏を受けています。
後方(写真左)には低い屋根が伸びています。
向かって左の柱上。
妻面には板蟇股が置かれ、棟木を受けています。
通路部分から、正面向かって左側を見た図。
後方に伸びた屋根は、角柱の控柱で支えられています。
拝殿
六角堂(本堂)の手前には、拝殿に相当する堂があります。
桁行3間・梁間2間、入母屋、正面背面千鳥破風、正面背面軒唐破風付、本瓦葺。
正面の軒下。
いずれの柱間にも建具はなく、4面すべてが吹き放ち。内部は石畳の床になっていて、土足で進入できます。
正面中央の柱間。扁額は寺号「頂法寺」。
柱は円柱で、上端が絞られた粽です。
柱間には飛貫虹梁がわたされ、中備えには竜の彫刻があります。竜の左右には大瓶束。
扁額の上の、唐破風の小壁にも彫刻がありますが、金網がかかっていてよく見えず。
向かって左の柱間。
左右の柱間は、飛貫虹梁の上の中備えに笈形付き大瓶束を置いています。
飛貫虹梁には、象鼻に近い形状の木鼻がついています。
柱の上部には頭貫と台輪が通り、禅宗様木鼻がついています。
柱上の組物は出組。
内部。
側面は2間ですが、室内は大きな梁を渡し、室内の柱をとばしています。
梁の上には大瓶束や蟇股が置かれ、内部は格天井です。
六角堂(本堂)
拝殿の後方には、当寺の本堂に相当する六角堂が鎮座しています。上の写真は向かって左側(西)から見た図。
二重、六角円堂、本瓦葺。
1877年(明治十年)再建。
拝殿と六角堂を上から見下ろすと、この写真のようになっているようです。
正面の軒下。
室内は高床になっていて、本尊の如意輪観音が安置されています。堂内には進入できず、六角堂の手前の拝殿の屋根の下で礼拝します。
左前の側面(南西面)。桟唐戸と火灯窓があります。
正面以外の面は2間。柱間には大小の長押が打たれています。
左奥の側面と、背面。
引き戸や連子窓が設けられています。
柱は円柱が使われています。頭貫木鼻はありません。
柱上の組物は、出組を六角形の平面にあわせて変形させたものが使われています。
組物と組物のあいだの中備えは、蟇股とも木鼻ともつかない形状の部材が入っています。
上層。
こちらも柱間は2間で、円柱が使われています。組物は出組。
軒裏は、放射状の二軒繁垂木。
頂部の宝珠。
礎盤は平面にあわせた六角形のものが使われ、宝珠には火炎の意匠がついています。
その他の伽藍
六角堂(本堂)の周辺には多数の伽藍が点在しています。
こちらは池の上に建つ太子堂。聖徳太子が当寺の池で沐浴したという伝説があるようです。
太子堂は、六角円堂、向拝1間、本瓦葺。
向拝柱は几帳面取り角柱。柱上は出三斗。
母屋柱は六角柱。柱上には六角形の大斗が置かれ、舟肘木で桁を受けています。
境内の東側には、親鸞堂が西面しています。寺伝によると、当寺に参篭した親鸞(浄土真宗の開祖とされる)は、聖徳太子の夢告を受けて浄土教に帰依したとのこと。
親鸞堂は、六角円堂、向拝1間、本瓦葺。
親鸞堂の裏手には、2棟の境内社が西面しています。
入口の明神鳥居は北向き。
向かって左は日彰稲荷。
一間社流造、こけら葺。
向かって右は、祇園社・唐崎社・天満宮の3社が合祀された社殿。
桁行3間、梁間2間、切妻造、向拝1間 向唐破風、こけら葺。
虹梁中備えには、なんらかの故事を題材にした彫刻があります。
向拝柱には唐獅子と麒麟の木鼻。
兎毛通の彫刻は鳳凰。
向拝を側面から見た図。
様式は流造ではなく、切妻造の軒下から向唐破風が突き出た、風変わりな様式です。
母屋は正面3間、側面2間。前方の1間通りは外陣で、奥のほうに神座があります。
山門へ戻って境内の外に出ると、通りのはす向かいに鐘楼堂があります。ここは境内の飛び地とのこと。
切妻、本瓦葺。
内部に吊るされた梵鐘は、太平洋戦争で供出されたのち、戦後に再鋳造して復元したもののようです。
以上、六角堂でした。
(訪問日2023/02/23)