今回は山梨県北杜市須玉町下津金(すたまちょう しもつがね)の諏訪神社(すわ-)について。
諏訪神社は下津金集落の中心部に鎮座しています。
創建は不明。戦国期に武田氏に仕えた津金氏の居城があり、その鎮守社だったと思われます。山梨県神社庁によると元亀年間(1570-1573)、武田信玄が上州へ出兵するとき仮の社殿が設けられたとのこと。江戸中期以降は諏訪八幡神社と呼ばれたようです。
境内は津金学校の裏手にあります。現在の社殿は江戸後期以降のものと思われ、本殿は白木の彫刻で飾られた派手な造りとなっています。
現地情報
所在地 | 〒407-0322山梨県北杜市須玉町下津金2960(地図) |
アクセス | 須玉ICまたは長坂ICから車で15分 |
駐車場 | 津金学校に50台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
拝殿
諏訪神社の境内は南向き。拝殿手前のすぐ下には津金学校が隣接しています。
入口の鳥居は津金学校の南側の道沿いにありましたが、ここから少し距離があるうえ写真を撮り忘れたので割愛。
拝殿は入母屋、向拝1間、鉄板葺。
向拝柱の側面に拳鼻が設けられているほか、とくに目立つ意匠はありません。
拝殿右手には神楽殿。宝形、鉄板葺。
柱などの部材は金属製で、廊下で拝殿とつながれています。当地(山梨県北西部)でときどき見かける形式。
本殿
拝殿の後方には本殿が鎮座しています。
一間社流造、正面軒唐破風付、銅板葺。
造営年不明。私の推定だと江戸後期かそれ以降。
祭神は山梨県神社庁によると、タケミナカタと“大鶴鷯命”(おおさぎのみこと?、仁徳天皇のこと)。
向拝正面は、拝殿後方の幣殿部分が迫っていてよく見えず。茨垂木があるので、前方の軒先に軒唐破風が付いていることは確認できます。
向拝柱の側面には唐獅子の木鼻が使われています。
柱上の組物は連三斗。軒裏には手挟。
海老虹梁のような懸架材はありません。
向拝を内側から見た図。
虹梁は唐草が彫られています。中備えは中央に平三斗、その左右に蟇股。
母屋前面。
前面の柱間に建具はなく、奥まった場所に扉が設けられています。
母屋柱は円柱。頭貫には拳鼻。中備えは蟇股で、唐獅子や竜が彫られています。
母屋の側面は2間。
縁側は切目縁が3面にまわされ、脇障子が母屋背面側に立てられています。脇障子の羽目には何かの説話を題材にしたと思われる人物像が彫られていますが、私には題材が解らず。
側面の軒下と妻壁。
組物は二手先。持ち出された妻虹梁の下の板支輪は、菊が彫られています。
妻飾りは笈形付き大瓶束。大瓶束は結綿の部分が少し大きめ。笈形は繰型が小さくついているだけで、抽象的でシンプルな形状。
背面も中央に柱が入って2間になっています。
軒下の意匠は正面や側面とほぼ同じ。
母屋側面の床下。
母屋柱の床下は八角柱になっていました。
破風板の拝みには蕪懸魚。梶の葉(諏訪神社の紋)があしらわれています。
懸魚の上には鬼面。鬼面は山梨県内の神社本殿でよく見かける意匠で、たいていは大棟鬼板についているのですが、このように破風板の拝みについている例はめずらしいです。
以上、諏訪神社(下津金)でした。
(訪問日2021/11/03)