今回は奈良県桜井市黒崎(くろざき)の白山神社(はくさん-)について。
白山神社は市東部の国道165号沿線に鎮座しています。別名(正式名称?)は白山比咩神社(しらやまひめ-)。
創建は不明。伝承(境内案内板)によると、21代・雄略天皇が泊瀬朝倉宮(はつせ あさくらみや)を建立し、万葉集の冒頭を飾る歌を詠んだ場所が当地だと推定されているようです。
境内は旧街道に面しているようですが、国道によって南北に分断されています。本殿は標準的な規模の春日造で、鮮やかな壁画と彩色がほどこされています。
現地情報
所在地 | 〒633-0011奈良県桜井市黒崎339(地図) |
アクセス | 大和朝倉駅から徒歩20分 橿原北ICから車で20分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
白山神社の境内は南向き。
境内入口の手前は、旧初瀬街道(参宮街道)と思しき生活道路になっています。
いっぽう、鳥居の先には現在の幹線道路である国道165号が横断しており、境内が南北に分断されています。国道は交通量が多いうえ車のスピードも速く、信号も横断歩道もありません。
鳥居は石造の明神鳥居。社号標は「白山神社」。
社名については白山比咩神社という別名もあり、白山は「しらやま」と読むこともありますが、桜井市の公式サイトに“白山神社(はくさんじんじゃ)”とあったためこの表記と読みを採用しています。
拝殿
国道を渡って境内北側へ移ると、石垣の上に拝殿があります。
切妻、向拝1間・入母屋(妻入)、桟瓦葺。
拝殿の手前の国道に面した場所には雄略天皇の歌碑がありましたが、写真を撮り忘れてしまったため割愛。
向拝の部分。
木鼻などの意匠はなく、軒裏は一重でまばら。飾り気のない簡素な造りです。
正面の3間は蔀になっています。左右の蔀はふつうの格子ですが、中央は吹寄せの菱組になっています。
向拝の棟の鬼板には下り藤。白山神社とはあまり関係のなさそうな春日大社の紋です。やはり奈良県内は春日大社の影響力が強いのでしょうか。ちなみに総本社である白山比咩神社(石川県白山市)の紋は三子持亀甲瓜花です。
その下には長い尾を引いた亀の彫刻。
本殿
拝殿の後方には、土塀に囲われた本殿が鎮座しています。
一間社春日造、銅板葺。造営年不明。
祭神はククリヒメ(白山比咩)と思われます。
向拝。
遠くて見づらいですが、虹梁中備えの蟇股は竹に虎、木鼻は象。鮮やかに彩色されています。
肘木や組物は紅白に塗り分けられており、にぎやかな印象。
向拝と母屋は海老虹梁でつながれています。向拝側は組物の上から出て、母屋側は頭貫の位置に取りついています。
母屋の正面および側面の中備えは蟇股。蟇股の置かれた壁面は、繰型のような雲状の模様が描かれています。
母屋柱は円柱。
正面は板戸。右側面(東面)には独特な枝ぶりの松が描かれています。
縁側は正面と左右の3面にまわされ、跳高欄が立てられています。脇障子の絵は菖蒲(アヤメ、またはハナショウブ)。
後方から見上げた全体図。背面側は絵がありません。
春日造なので背面側は完全な切妻になっています。また、軒裏に隅木(母屋から軒先へ斜めに伸びる部材)のない古式で純粋な春日造です。
大棟の側面の紋は、下り藤に見えます。
大棟の上には、2本の鰹木と外削ぎの千木が置かれています。
反対側、左側面(西面)。
脇障子の絵は、右側面と同様で菖蒲。
壁面は牡丹に唐獅子。つぶらな瞳で口を開けていて、マスコットキャラクターのような愛嬌のある表情。絵の巧拙は私にはよくわかりませんが、印象に残る良い絵だと思います。
以上、白山神社(黒崎)でした。
(訪問日2021/10/14)