甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

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【名古屋市】龍泉寺

今回は愛知県名古屋市の龍泉寺(りゅうせんじ)について。

 

龍泉寺は守山区北部の高台に鎮座する天台宗の寺院です。山号は松洞山。寺号は竜泉寺とも表記されます。

創建は『龍泉寺記』によると延暦年間(782-806)で、最澄が熱田神宮を参拝したときに神託を得て開基されたと伝えられています。境内周辺は軍事施設として使われることがたびたびあり、織田氏や豊臣秀吉が境内に陣を置いたことがあるようです。戦国期に境内を焼失しており、現存の伽藍の一部は江戸初期に再建されたものです。

伽藍は江戸初期の仁王門が国重文に指定されているほか、明治期の多宝塔があります。加えて寺宝にいくつかの円空仏を所有しているようです。

 

現地情報

所在地 〒463-0801愛知県名古屋市守山区竜泉寺1-902(地図)
アクセス ゆとりーとライン竜泉寺駅から徒歩3分
名二環 小幡ICまたは松河戸ICから車で5分
駐車場 5台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
寺務所 あり(要予約)
公式サイト 尾張四観音 龍泉寺|公式サイト
所要時間 15分程度

 

境内

仁王門

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龍泉寺の境内は南西向き。

入口には仁王門が鎮座し、右奥に多宝塔が見えます。

仁王門は三間一戸、楼門、入母屋、こけら葺。

1607年建立国指定重要文化財

 

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下層。

柱は円柱で、軸部は貫で連結されています。頭貫木鼻は拳鼻。

柱上の組物は出組。断面は白く塗られています。中備えは間斗束。

 

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側面も同様の意匠。

壁面はしっくいで塗り固められています。

 

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内部は格天井で、斜めに渡された梁が縁側の隅へ向かって伸びている様子を見てとれます。

 

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中央の通路部分にわたされた梁の蟇股。

はらわたの彫刻は蓮華と思われる花。

造形は決して悪くないと思うのですが、江戸の最初期のものだからなのか立体的ではありません。

 

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上層。扁額は山号「松洞山」。

組物は尾垂木三手先。柱間は下層と同じく間斗束。

桁下には軒支輪。

軒裏は二軒繁垂木。

 

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柱の上部は長押で固定されています。頭貫木鼻はありません。

縁側は切目縁。欄干は擬宝珠付き。

 

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上層側面。

軒下の意匠は下層や側面と同様。

入母屋破風は板でふさがれています。

破風板の拝みには、三花懸魚をアレンジしたような形状の懸魚が下がっています。

 

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背面。

下層に対して上層は二回りくらい低く小さく造られています。全体を見ると、どっしりとした安定感のあるプロポーション。

上層中央の中備えには蟇股が使われていました。

 

手水舎

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仁王門の先の参道右手には手水舎。

切妻、銅板葺、箕甲は檜皮葺。

 

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柱は几帳面取り角柱。内に転びがついています。

虹梁の上に台輪がまわり、禅宗様木鼻がついています。

柱上には舟肘木、台輪には波の意匠の蟇股。

 

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妻虹梁の上には笈形付き大瓶束。

大瓶束は太く短い角柱。笈形は波の意匠。

 

多宝塔

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参道左手には多宝塔。

三間多宝塔、桟瓦葺。1895年再建。

 

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下層。

柱は円柱で、柱間は3間。

中央の柱間には桟唐戸が設けられています。

縁側は切目縁。欄干は擬宝珠付き。

縁側に「上がらないで下さい」という立札がありましたが、その目の前で猫が縁側に上がって寝ていました。

 

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縁の下は縁束で支えられています。

猫の侵入を防ぐためか、束のあいだは金網が張られています。

母屋柱の床下は八角柱になっています。

 

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柱は上端が絞られ、粽になっています。

頭貫と台輪には禅宗様木鼻。

組物は出組。中備えの蟇股は、はらわたに彩色された彫刻があります。写真左上の題材は波に千鳥。

軒裏は並行の二軒繁垂木。

 

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上層。軒裏は扇の二軒繁垂木。

多宝塔なので上層の縁側と母屋は円形の平面。

組物は尾垂木四手先で、円形の母屋から腕(肘木)を伸ばして軒桁を受けています。

 

本堂

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境内の中央には本堂。

右奥に見える模擬天守(龍泉寺城)は宝物館。開館は日曜のみで、この日は見学できず。円空仏や国重文の木造地蔵菩薩像が収蔵されているらしいです。

 

本堂は入母屋(妻入)、向拝1間・軒唐破風付、桟瓦葺、向拝は銅板葺。

1906年に放火で焼失し、その後に再建されたもの。

本尊は馬頭観音。

 

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大きな唐破風の向拝が前方に長く伸び、非常に正面性の強いデザイン。

破風板と鬼板には宝輪の紋が描かれていました。

軒裏はまばらな茨垂木。

 

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向拝柱は几帳面取り角柱。

木鼻は正面が唐獅子、側面は拳鼻。

 

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水引虹梁は緑の線で唐草が彫られています。

中備えは板蟇股。斗や実肘木を介さずに虹梁大瓶束を受けています。

小壁には笈形付き大瓶束。大瓶束は束が赤、結綿が緑で、トウガラシのような外観。笈形は唐草と蓮華で、鮮やかに彩色されています。

 

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向拝は桁行(奥行き)が2間あります。

こちらの向拝柱には、側面に獏の木鼻。組物の上では菊の籠彫りされた手挟が軒裏を受けています。

 

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奥の水引虹梁の中備えには、牡丹に戯れる唐獅子が彫られた蟇股。こちらも鮮やかな彩色。

 

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母屋外陣。内部は格天井。

扁額は「開運厄除観世音」。

 

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母屋柱は上端が絞られた円柱。

頭貫木鼻は拳鼻。中備えには極彩色の蟇股。

軒裏は二軒繁垂木。

 

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正面の妻壁。

破風板には鰭のついた蕪懸魚。

入母屋破風には極彩色の笈形付き大瓶束。

 

鐘楼

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本堂の向かって左には鐘楼。

入母屋、桟瓦葺。

 

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柱は円柱。上端が絞られています。上部には頭貫と台輪、およびに禅宗様木鼻。

柱上は出三斗、中備えは平三斗。

軒裏は一重まばら垂木。

 

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最後に鐘楼からの眺め。

眼下には庄内川が流れ、その向こうには名古屋市の北にある春日井市街が見えます。

 

以上、龍泉寺でした。

(訪問日2021/02/22)