今回は長野県佐久市中小田切(なかおたぎり)の五社神社(ごしゃ-)について。
五社宮は切原小学校の裏手に鎮座しています。
社名は五社宮とも言うようですが、当記事では長野県神社庁のホームページに準拠して五社神社とします。
創建、由緒、祭神は不明。小規模な境内に覆い屋があり、その内部には二間社を2つ連結させて1棟とした独特な本殿を見ることができます。
現地情報
所在地 | 〒384-0305長野県佐久市中小田切107(地図) |
アクセス | 青沼駅から徒歩40分 佐久臼田ICから車で5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
五社神社の境内は南東向き。
入口の鳥居は木造の両部鳥居。扁額は「正一位五社宮」。
鳥居をくぐると階段の先には拝殿を兼ねた本殿覆い屋があります。切妻、桟瓦葺。
扁額は「五社神社」。
本殿
本殿は桁行5間・梁間1間、流造、向拝3間、こけら葺。
「二間社流造、向拝1間」を2棟並べ、あいだに1間置いて屋根を一体化した造りをしています。神社本殿として非常にめずらしい構造をしています。
造営年は不明。彫刻などの意匠から、江戸後期あるいは明治以降のものと思われます。
祭神は不明。長野県神社庁ホームページにも、祭神の記載がありません。
五社神社や五社宮といった社名は、たいていは単に5柱の神を合祀しているという意味であり、同名の神社でも祭神はまちまちです。よって社名から祭神を推測することもできません。
1つの屋根の下に2つの母屋が独立している風変わりな連棟式本殿ですが、つまるところ横に長いだけの流造です。シルエットも通常の流造と大差ありません。
各所の意匠は右側・左側ともにほぼ同じです。
まずは向かって右から。
虹梁は薄く唐草が彫られています。中備えは波に亀ですが、題材がいまひとつ判りにくく、巧い造形とは言えないと思います。
向拝柱は几帳面取りで、柱上の組物は出三斗をベースとした二手先。
木鼻は正面が唐獅子、側面が象。
向拝柱と母屋をつなぐ海老虹梁には、昇り竜が立体的に彫刻されています。これは江戸後期あたりから見られる新しめの技法。左端に見切れている虹梁中備えとは造形や作風がちがうので、それぞれ別の工匠の作でしょう。
向拝の下、母屋の前には角材の階段が5段。階段の下に海老虹梁らしき形状の部材が通っています。ここにこの部材を使った作例は初めて見ました。
写真左端の浜床には擬宝珠付きの欄干がついています。ここも風変わり。
母屋柱は円柱。
正面には板戸が2組立てつけられています。
壁面にはくり抜かれた胴羽目がついています。題材は松に鶴。
縁側はくれ縁が3面にまわされ、背面は脇障子が立てられています。脇障子の題材は松に鷹。
縁側の床下は三手先の腰組。
母屋柱の床下は円柱の成形を横着して八角柱で止める、おなじみの工作。
頭貫木鼻は唐獅子。頭貫の上には台輪がまわされています。
組物は繰型のついた尾垂木(?)が出た二手先。桁下には板支輪。
妻虹梁は二重になっています。大虹梁の上では、出組と軒支輪によってさらに一手先に二重虹梁が持出しされています。そして笈形付き大瓶束が棟を受けています。
背面。こちらは羽目の彫刻などはなくシンプルな外観。
左右の母屋の接続部分。
脇障子や縁側の部材を左右で共有しています。
つづいて向かって左。大部分は右側とほぼ同じ意匠です。
虹梁中備えはこちらも波に亀で作風も同様なのですが、題材のレイアウト(亀の向きや波の配置)がちがっています。
胴羽目は松に鶴、脇障子は松に鷹。
ここも右側と同様ですが、こちらは翼を閉じてとまったポーズとなっています。
破風板は拝みと桁隠しに懸魚が下がっています。
大棟の鬼板には鬼面がついていました。
境内社
本殿覆い屋の右隣(東)にはもうひとつ覆い屋があり、小さな本殿が2棟収められています。
両者とも一間社流造、正面千鳥破風付。前者はこけら葺き、後者は板葺。
以上、五社神社でした。
(訪問日2020/12/27)