今回は長野県長野市の布制神社と幣川神社について。
布制神社(布施五明)
所在地:〒388-8011長野県長野市篠ノ井布施五明235(地図)
布制神社(ふせ-)は篠ノ井駅東側の市街地である布施五明(ふせごみょう)に鎮座しています。
創建は不明。平安期の『延喜式』に布制神社の名前があり、同じく長野市篠ノ井地区の山布施や石川にある同名の神社とともに式内社に比定されています。
社殿については本殿が江戸後期のもののようですが、覆い屋の中に収められていて見ることができません。
境内
布制神社の境内は東向き。生活道路に面した場所にあります。
写真右の社号標は「延喜式内布制神社」。
鳥居は木造の明神鳥居で、扁額は「布制神社」。
参道は鳥居をくぐった先には下りの階段が3段ほどあります。「下り宮」とまではいかないものの、参道の往路で階段を下るのはちょっとめずらしいです。
拝殿は入母屋(平入)、向拝1間、銅板葺。
向拝柱は上端が絞られた几帳面取り角柱。
虹梁は唐草が彫られ、中備えは蟇股。木鼻は象鼻。
母屋の扁額は「布制神社」。
拝殿の後方には本殿を納めた覆い屋があります。
案内板によると本殿は1811年(文化八)の造営。“一間社流造で花鳥風月の彫刻を多く施した本殿”とのこと。
主祭神は大彦命。ほか、タケミナカタ、八坂刀女といった諏訪神やトヨウケも合祀されているようです。
参道の右手には北野天満宮。
一間社流造、銅板葺。正面に縁側や階段がないのが独特。
祭神は菅原道真。合格祈願の絵馬が掛けられています。
以上、布制神社でした。
幣川神社
所在地:〒388-8006長野県長野市篠ノ井御幣川334(地図)
幣川神社(みことがわ-)は篠ノ井駅の南東部にある御幣川(おんべがわ)の住宅地に鎮座しています。
創建は慶長年間(1596-1614)。黄金の御幣を祀ったのが社名と地名の由来で、もとは八幡宮と称したようです。
社殿は拝殿に彫刻があり、伝承によると立川流の2代目和四郎の指導のもと造られたようです。
境内
幣川神社の境内は南向き。幹線道路に面した場所に入口があります。
鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「幣川神社」。
拝殿と御神木。
拝殿は入母屋(平入)、向拝1間、桟瓦葺。
正面と左右側面は壁のない吹き放ちになっており、長野市近辺でよくみるタイプの拝殿です。
境内の石碑によると1845年から1848年の再建とのこと。
造営にあたっては、武水別神社(千曲市)を造営していた立川和四郎(2代目和四郎富昌)の指導を受けたと伝えられています。
造営費用については、御幣川の住人たちが私財を投げうち節制につとめ、多額の借入をしてまで工面したとのこと。
向拝柱は几帳面取り角柱。
虹梁は菊のような花の入った唐草が彫られ、中備えには派手な竜の彫刻。
虹梁両端の木鼻は見返り唐獅子。
柱上の組物は皿付きの大斗をベースとした出三斗。
向拝柱と母屋は湾曲した海老虹梁でつながれています。
軒裏を受ける手挟は、菊の籠彫。良い造形だと思いますが、これはやはり立川和四郎の指導を受けたからでしょうか。
母屋柱は角柱で、虹梁には松が浮き彫りになっています。
左側面(西面)。
こちらの虹梁は楓と思しき樹木が浮き彫りになっています。
頭貫木鼻は拳鼻。
柱上の組物は持出しのない通常の三斗で、中備えは彫刻のない蟇股が配置されています。
右側面(東面)の破風。大棟鬼板の紋は三つ巴。
破風板の拝みには蕪懸魚。左右についた鰭は波の意匠。
網が張られた妻壁の内部は蟇股と虹梁が辛うじて見えますが、詳細はわからず。
拝殿の後方には本殿を納めた覆い屋。
本殿の造営年は、拝殿と同様に江戸後期と思われます。
もとは八幡宮だったので、祭神は誉田別命のようです。
以上、幣川神社でした。
(訪問日2020/11/21)