今回は愛知県岡崎市の上地八幡宮(うえじ はちまんぐう)について。
上地八幡宮は岡崎市外の住宅地に鎮座しています。
創建は平安末期で、源頼範(頼朝の異母弟)が当地で戦勝祈願をしたのがはじまりとのこと。社殿は本殿が国重文に指定されており、本殿は桧皮葺の端正な流造となっています。
現地情報
所在地 | 〒444-0824愛知県岡崎市上地町宮脇48(地図) |
アクセス | 岡崎駅から徒歩25分 岡崎ICから車で30分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 上地八幡宮 |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
上地八幡宮の境内は南向き。
一の鳥居は住宅地の一角にあり、石造の明神鳥居。扁額は「八幡宮」。
鳥居をくぐって進むと、参道が東海道本線で分断されています。
踏切は歩行者と自転車しか渡れない小規模なものですが、遮断機と警報機がついています。
踏切の先は社地となっています。
二の鳥居も石造、明神鳥居、「八幡宮」。
手水舎と拝殿
参道の左手には手水舎。切妻、銅板葺。
拝殿は切妻、銅板葺。扁額は「八幡宮」。1948年の造営。
中央の柱間の扉が開け放たれ、奥にある中門が見えます。ただし中門は門扉が閉じていて、後方にある本殿を真正面から見ることはできず。
本殿
拝殿と中門の後方には本殿が鎮座しています。
本殿は桁行3間・梁間1間、三間社流造、向拝3間、檜皮葺。
国指定重要文化財。
祭神は八幡神のほか、アマテラスや秋葉権現も祀られているようです。
造営年については案内板(岡崎市教育委員会)によると“建築様式からみて室町時代後期の建立と考えられるが、江戸時代以降、度々修理が実施されている”とのこと。また、市内の神社建築として最古の模様。
岡崎市の寺社建築というと滝山寺三門(鎌倉末期)などなど古いものが多数あって非常に充実していますが、神社建築に限っては大半が徳川氏の時代(安土桃山から江戸初期)のもののようです。室町後期に造営されたこの本殿が市内最古の神社建築というのは、ちょっと意外に思えます。
黒い破風板からは懸魚が下がり、写真右端の桁隠にも渦状の繰型がついています。
妻壁には繰型のついた妻虹梁。その上では大瓶束が棟を受けています。
写真右の向拝柱と中央の母屋は、軒裏すれすれを通る海老虹梁でつながれています。海老虹梁の母屋側は妻虹梁の少し下から出ていて、下部を肘木と斗で支えられています。向拝側は出三斗の高さまで降りています。
母屋柱は円柱。柱上の組物は舟肘木(ふなひじき)。軸部は長押(なげし)で固定され、長押には紋様らしきものがついていた痕跡が見えます。
構造から各所の意匠に至るまで、線路をはさんですぐ反対側に鎮座している土呂八幡宮と非常によく似ています。土呂八幡宮は江戸初期のものなので、この本殿を参考にして造った可能性が高いです。
後方から見た図。目立った装飾や意匠はありません。
屋根が強くカーブし、大棟が高々とそびえている様が印象的。大きく反った屋根と破風ぎわの箕甲が美しいです。市内の神社建築の中でも白眉といえる傑作ではないでしょうか。
個人的に、流造の本殿の中でもかなり印象的な物件。ありきたりな様式のうえ規模も決して大きくはないですが、これほど高く鋭く尖った流造は初めて見ました。
以上、上地八幡宮でした。
(訪問日2020/09/12)