甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【河内長野市】高向神社

今回は大阪府河内長野市の高向神社(たこう-)について。

 

高向神社は市東部の高向地区の集落に鎮座しています。

創建は不明で、高向・日野の両地区の氏神を祀った神社とのこと。現存する本殿は1608年のもので、遅くとも江戸初期には確立されていたようです。

現在の境内は前述のとおり江戸初期の本殿が現存し、独特の様式と檜皮葺が維持され、市の文化財となっています。ほか、神体である木像や、江戸期に奉納された絵馬なども市の民俗文化財に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒586-0036大阪府河内長野市高向291(地図)
アクセス 河内長野駅または三日市町駅から徒歩45分
岸和田和泉ICから車で20分
駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

鳥居と神楽殿

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高向神社の境内入口には木像の両部鳥居が西向きに立っています。

鳥居は主柱の台輪の上に小さな庇が付いているのが風変わり。

 

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鳥居の後方には土蔵(宝物殿?)。

宝形、桟瓦葺。

 

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境内の中央は小さな広場になっており、社務所と神楽殿があります。

 

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神楽殿の背面。

柱間には火灯窓が使われています。

軒裏は、母屋から腕木と軒桁を持ち出して支えています。

 

本殿

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広場の北側には、塀に囲われた本殿が南向きに鎮座しています。

手前にある鳥居は石造の明神鳥居。

 

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本殿の前には中門。高向神社には拝殿がなく、そのかわりにこの中門が拝所となっています。

中門は一間一戸、薬医門、切妻、檜皮葺。

虹梁中備えに蟇股、虹梁木鼻は象鼻、柱上には大斗と舟肘木。

 

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本殿は、桁行3間・梁間1間、三間社切妻、正面千鳥破風付、向拝1間・向唐破風、檜皮葺。

棟札より1608年(慶長十三年)造営。市指定有形文化財。

祭神はスサノオ、天児屋根、ヒルコ(えびす)、保食神、白山姫、菅原道真。ほかにも近隣の神社から合祀されているようです。

 

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正面の向拝の柱は几帳面取りされています。

柱の側面には象頭の彫刻。経年劣化で目元の造形がつぶれてしまったのだと思いますが、にこやかな表情にも見えます。

柱上の組物は出三斗。虹梁に中備えはありません。

 

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唐破風の小壁には蟇股。

はらわたの彫刻は雲と竜。当初は極彩色に塗られていた様子ですが、経年で塗料が剥げてしまっています。

 

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向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。海老虹梁は母屋の頭貫の位置から出て、軒裏すれすれを通って向拝柱の組物の上に降りています。

 

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母屋柱は円柱。頭貫には拳鼻。柱上は連三斗。

母屋の正面は引き戸になっています。扉の上の中備えには蟇股が配されていました。

側面は板壁で、中備えはありません。

 

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妻壁。

無地の妻虹梁の上に出三斗が2つ置かれ、そこに二重虹梁がわたされています。

二重虹梁の上では大瓶束が棟木を受けています。大瓶束は下端がすぼまった形状で、上部の左右に拳鼻が付いています。

破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚。

 

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背面は3間。

縁側は背面以外の3面にまわされ、背面側は脇障子を立ててふさいでいます。欄干は擬宝珠付き。

 

この本殿を平たく説明するなら、切妻の母屋の前面に千鳥破風と向唐破風の向拝を付加した、といった形式。流造ではなく、案内板(河内長野市教育委員会)には“三間社切妻造”と書かれていました。

神社本殿の大半は流造(切妻の一形態)なので、流造でない切妻はめずらしいです。

 

以上、高向神社でした。

(訪問日2021/11/20)