今回は愛知県岡崎市の滝山東照宮(たきさん とうしょうぐう)について。
滝山東照宮(瀧山東照宮)は岡崎市北部の山間に、滝山寺と隣接して鎮座しています。
創建は1646年(正保三年)。徳川家康は岡崎の生まれで滝山寺をよく訪れていたことから、3代将軍・家光の命によって当地に東照宮が勧請されました。もとは滝山寺の一部でしたが、明治期の神仏分離により現在は独立した神社となっています。
小さな境内には多数の文化財がひしめき、本殿や拝殿・幣殿のほか、鳥居や灯篭までもが国重文に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒444-3173愛知県岡崎市滝町山籠107(地図) |
アクセス | 豊田東ICまたは岡崎から車で20分 |
駐車場 | 30台(無料) |
営業時間 | 09:00-17:00 |
入場料 | 200円 |
社務所 | あり |
公式サイト | 瀧山寺 天台宗吉祥陀羅尼山薬樹王院 |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道
滝山東照宮の境内は南向き。
入口の鳥居は石造の明神鳥居。社号標は「瀧山東照宮」。
こちらは滝山寺本堂。滝山寺については当該記事で解説したので割愛。写真右奥が滝山東照宮の境内です。
境内の入口や参道は滝山寺と共通で、寺の敷地の一角に東照宮があります。
滝山寺本堂までは無料ですが、以降は有料(200円)の区画となります。
滝山寺本堂の右手にある社務所で受付を済ませて境内に入ると、西向きの鳥居が立っています。
鳥居は石造(花崗岩)の明神鳥居。扁額は「瀧山東照宮」。
1645年に岡崎城主・水野忠善によって奉納されたもの。後述の社殿などとあわせて国重文。
鳥居の右手には手水舎。
手水舎は切妻、銅板葺。1646年建立。こちらも鳥居とともに国重文。
手水鉢は花崗岩製。1645年、吉田城主・小笠原忠知の奉納。こちらも国重文。
写真奥には多数の石灯篭が並んで立っています。
全64基あるようで、諸国の大名によって奉納されたものとのこと。
拝殿・幣殿
境内の中央に位置するのは拝殿と幣殿が一体になった社殿。写真は拝殿の部分。
桁行3間・梁間2間、入母屋、向拝1間、銅瓦葺。
1646年(正保三年)の造営。国指定重要文化財。
なお、拝殿の手前にある灯篭2基も附(つけたり)として国重文となっています。灯篭は1648年、松平忠次の奉納。
正面の軒先を支える向拝柱は角面取り。
2本の角柱は極彩色の虹梁でつながれており、両端の木鼻には唐獅子が彫刻されています。虹梁中備えは蟇股で、鷹と思しき鳥が彫刻されていました。
柱上の組物は出三斗と連三斗をあわせたもの。極彩色に塗り分けられています。組物の上の桁もまた極彩色。
向拝柱と母屋をつなぐ懸架材(海老虹梁など)はありません。
軒裏では菊を籠彫りした手挟が垂木を受けています。
母屋は正面中央が両開きの桟唐戸、ほかの柱間は跳ね上げ式の蔀が立てつけられています。
縁側は切目縁が正面および両側面の計3面にまわされています。欄干はなく、床下は縁束。
母屋柱は円柱。軸部や軒裏は赤を基調とした配色。
長押や頭貫、その上の蟇股と組物はやはり極彩色に塗り分けられています。
軒裏から下がっている鉄棒は跳ね上げた蔀を吊るすためのもの。
左側面から見た拝殿・幣殿。
拝殿の入母屋破風の内部には豕扠首。
石灯篭の影になってしまっていますが、拝殿の後方には幣殿がつながっています。
幣殿は銅瓦葺の切妻(妻入)。拝殿とあわせて国重文です。
背面から見た幣殿の妻壁。
大まかな造りは拝殿と同じですが、妻壁には唐草模様の大瓶束が立てられ、その両脇には2羽の孔雀が舞う構図が描かれています。
中門
拝観受付の案内にしたがって拝殿・幣殿の中を通り抜けると、本殿の前に中門があります。
中門は一間一戸、唐門、銅板葺。1646年の造営、国重文。
軒裏はまばら垂木。門扉は両開きの桟唐戸。
柱はいずれも円柱で、主柱は上端がすぼまった粽。前後の控え柱は、禅宗様の欄干に見られるような笠状の装飾がつけられています。主柱の上端から横に突き出ている木鼻は、台輪と頭貫に設けられた禅宗様の木鼻。
この門は社殿にしては禅宗様の要素が濃いです。
中門の両脇にめぐらされた石柵は総延長57メートルで、附で国重文となっています。
なお、中門の先は進入禁止で、本殿は中門の下か敷地外から見ることになります。
本殿
本殿は桁行3間・梁間2間、三間社入母屋、向拝1間、銅瓦葺。
1646年(正保三年)の造営。国指定重要文化財。
祭神は東照権現こと徳川家康。ほか、アマテラスなどが合祀されています。
向拝柱は几帳面取りの角柱。虹梁は極彩色で、両端の木鼻は唐獅子。虹梁中備えの蟇股はおそらく鷹。
全体的に拝殿とよく似た構成ですが、こちらは彩色に金メッキ(金箔?)が多用されていて、拝殿よりも圧倒的に豪華です。
正面には角材の階段が5段。階段の下には浜床が張られています。
縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干は跳高欄、床下は縁束。
母屋の正面には3組の板戸が立てつけられています。
母屋柱は円柱。
長押、頭貫、木鼻、組物、軒支輪、桁など、軒下のあらゆる部材が極彩色。
柱上の組物は二手先。蟇股の彫刻は孔雀で、その両脇の欄間には赤と青の桔梗が描かれています。
軒裏は二軒繁垂木で、飛檐垂木(軒先の垂木)は先端が金具でカバーされています。
敷地外から見た本殿。
大棟には外削ぎの千木、そして2本の鰹木。入母屋破風の内部には極彩色の豕扠首がわずかに見えます。
最後に東照宮の左隣、滝山寺本堂の奥にある日吉山王社。滝山東照宮の境内社というあつかいのようなので、当記事で紹介。
修復工事中のため見られませんでしたが、この社殿は七間社流造(ななけんしゃ ながれづくり)という非常にめずらしい様式で、市指定文化財とのこと。
東照宮は素晴らしい内容だったのですが、七間社流造の日吉山王社が見られなかったのが悔やまれるので、これを見るためにもいずれ再訪したいところ。
以上、滝山東照宮でした。
(訪問日2020/09/12)