今回は長野県上田市の生島足島神社(いくしまたるしま-)について。
生島足島神社は塩田平東部の集落に鎮座しています。
創建は不明で、タケミナカタ(諏訪明神)が当地で米粥を煮たことに由来するとのこと。『延喜式』に記載された式内社であることから、平安期にはすでに存在したようです。
社殿については、本殿が神社では非常に珍しい土間になっていて、この土間を神体とする独特の造りをしていますが、内部は拝観できません。
現地情報
所在地 | 〒386-1211長野県上田市下之郷中池西701(地図) |
アクセス | 下之郷駅から徒歩5分 上田菅平ICから車で25分 |
駐車場 | 100台(無料) |
営業時間 | 05:30頃-17:30頃 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 式内大社 生島足島神社公式ホームページ |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道
生島足島神社は境内の東西に入口があり、両方に駐車場が完備されています。
こちらは東側入口。
両部鳥居の扁額は「生島足島神社」。社号標は「国幣中社生島足島神社」。
こちらは西側入口。
西側の駐車場は「第2駐車場」となっていたうえ、停めているのが私しかいなかったので、たぶんこちらは事実上の裏口だと思います。
両部鳥居の扁額と社号標の字は東側と同様。
参道の南側には手水舎。銅板葺の切妻。
こちらは西側の手水舎で、東側にも同様のものがあります。
訪問時は、感染症対策のため使用禁止となっていました。
西側の門。銅板葺の切妻。
手水舎と同様、東側にもこれと同じ門があります。
時間外に来るとこの門が閉まっていて、後述の拝殿・本殿や諏訪社へは行かれないようです。
境内に中心部に来ると、拝殿・本殿へとつながる神橋があります。
屋根は銅板葺の向唐破風。梁の上には四角い大瓶束(たいへいづか)と、蟇股のような笈形(おいがた)が棟を受けています。
なお、この神橋は神事のとき以外は通行禁止となっており、参拝者は隣にある通常の橋を渡って奥の拝殿へ進みます。
拝殿・本殿
生島足島神社の拝殿と本殿は、池の中の島に鎮座しています。写真は東側の入口から見た図で、左端に見えるのが拝殿。
拝殿・本殿および神橋は北向き。神社本殿でも寺院本堂でも北向きはかなりめずらしいです。
拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。
母屋は円柱、向拝は角柱。
正面の向拝は3間。向拝柱は几帳面取りの角柱。
向拝の中央の柱間は若干広くなっており、梁の上の中備えにはカラフルに彩色された蟇股(かえるまた)が置かれています。蟇股は上部に斗(ます)が2つ載っていて、実肘木を介して桁を受けています。
母屋の頭貫の木鼻。
赤・青・緑の勾玉が彫られており、下部の渦巻きも植物の葉のような意匠。
拝殿の後方には本殿。本殿は銅板葺の切妻(平入)。
本殿と拝殿が切妻の屋根でつながれているため、案内板(長野県・上田市教育委員会)には「権現造」と書かれています。
1941年の造営。祭神は生島大神と足島大神。
この本殿は覆い屋に相当するもので、内部には内殿という社殿があるとのこと。内殿についての解説は、案内板によると下記のとおり。
現在の内殿の規模は、桁行(正面)柱間三間(4.82m)、梁行(側面)柱間二間(3.10m)で、屋根は切妻造の厚板張り(当初は杮葺き)です。内部は、向かって左側二間が内陣、右側一間が外陣となっています。
(中略)
床は、内陣・外陣とも土間となっており、内陣の土間が本神社の御神体とされています。これは、万物を育む大地を神として崇める最も古い神社の形式を伝えるものです。
主要な部材は欅材で、表面は手斧仕上げの上を丁寧に削り磨いています。外面した部材の一部には朱などで彩色した跡が残ります。軸部は、粽・礎盤・大瓶束等を用いた室町時代の様式で、その特徴から建築年代は、天文年間(一五二二~一五五五)頃と推定されます。
上記を要約すると、内殿は内陣・外陣が前後ではなく左右に分かれていて、粽(ちまき)や礎盤など寺院建築の意匠がつかわれているようです。また、神社なのに内部は土間で、土間になった床が信仰対象とのこと。
なお、内殿は長野県宝に指定されています。
諏訪社
境内の北側には、生島足島神社と向き合うようにして、摂社・諏訪社が南向きに鎮座しています。
写真は諏訪社の前に建つ神楽殿。桟瓦葺の入母屋(妻入)。
諏訪社本殿の前には、拝殿ではなく門があります。
銅板葺の切妻で、2つの切妻を十字に組み合わせたような形式。
案内板(上田市教育委員会)によると1610年の造営と考えられており、“当初は内部に床を張った諏訪系の神社にみられる「御門屋」の形式をとっていたことが痕跡から確認でき、この形式の門としては県内で一番古い”とのこと。
諏訪社本殿とともに長野県宝に指定されています。
内部に天井はなく、化粧屋根裏。柱は円柱で、頭貫と台輪には禅宗様の木鼻が使われています。
扁額は「諏方大明神」。案内板には諏訪社とあったので、当記事ではこちらの表記を使っています。
諏訪社本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
棟札より1610年(慶長十五年)の造営で、棟梁は宮坂勘四郎という大工。上田藩主・真田信之*1の寄進。
長野県宝に指定されています。祭神はタケミナカタ。
写真中央の向拝柱は、C面取りの角柱。右上に見える虹梁中備えの蟇股には竜が彫刻されています。
そして向拝柱の虹梁の下には、ふつうの神社本殿ではありえない場所に貫が通っており、柱の左側に象頭の木鼻がついています。この本殿の最大の特徴といって過言でないでしょう。
左奥に見える母屋の隅の木鼻は禅宗様で、寺院建築の意匠です。
境内社
諏訪社のほかにも多数の境内社があります。
こちらは西側入口の近くにある八幡宮。独立して鳥居があるだけでなく、門のようなものまであります。
こちらは生島足島神社拝殿の近くにある子安社。
境内社はほかにもありますが、どれも似た造りできりがないので割愛。
以上、生島足島神社でした。
(訪問日2020/08/01)
*1:真田幸村の兄、のちの松代藩主