今回は長野県佐久穂町畑(はた)の諏訪神社(すわ-)について。
諏訪神社は佐久穂町の集落の山際に鎮座しています。
本殿は規模・内容ともに標準的な春日造ですが同様式の本殿が3つ並立しており、信州ではあまり見られない配置となっています。
現地情報
所在地 | 〒384-0701長野県南佐久郡佐久穂町畑1456(地図) |
アクセス | 八千穂駅から徒歩15分 八千穂高原ICから車で5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道
諏訪神社の境内は東向き。
入口の鳥居は石製の明神鳥居で、扁額は「産土神」。
鳥居の右手前の石柱は社号標のように見えますが、「常夜灯」と書かれているだけでした。
鳥居をくぐって坂を上ると、道が階段になります。
右側の旗立ての裏には佐久穂町教育委員会の案内板がありましたが、神代杉と神社の奉納品の板碑(塔婆)についての解説でした。
写真右下には「諏訪神社 伏見稲荷神社→」と書かれた小さい案内板もありますが、諏訪神社へ行くならこの参道をまっすぐ登ったほうが圧倒的に近くて早いです。
二の鳥居は木製の両部鳥居。
やや背が低く、笠木と貫がやや左右に長いです。前後の柱は角柱。
神明宮
二の鳥居の手前から参道を左手にそれると、別の神社とも境内社ともつかない建物があります。
社名は不明ですが、本殿の造りが神明造(しんめいづくり)だったので便宜的に「神明宮」としておきます。
写真は拝殿で、鉄板葺の切妻(平入)、切妻(妻入)の向拝1間。
木鼻などの意匠がまったくないシンプルな造りですが、向拝の妻はいちおう豕扠首(いのこさす)になっています。
拝殿の裏には神明造の本殿。
屋根は銅板葺、柱は角柱。屋根には内削ぎの千木と、2本の鰹木。
神明造は軒裏の垂木をまばらにするのが普通ですが、この本殿は繁垂木。ほか、いろいろと部材が省略されており、略式の神明造といったところ。
あまり古いものには見えませんが、本殿の周囲には柵、上には鉄骨の屋根があって大切に保存されている様子。
拝殿と本殿
諏訪神社の拝殿は鉄板葺の切妻(平入)。入母屋(妻入)の向拝が1間。
拝殿は本殿の覆い屋を兼ねており、拝殿の内部に本殿が収められています。
本殿は3棟が横並びに鎮座しています。
3棟いずれも隅木入りの一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)。屋根葺きはおそらくこけら。
向拝柱は角柱、母屋柱は円柱。縁側は3面にまわされ、欄干なし。
本殿(中央)。隅木入り春日造は切妻の様式の1つですが、正面側の垂木の収まりかたは入母屋に似ています。
正面の扉に描かれた紋は、桐。諏訪神社なのに梶の葉ではありません。
造営年代は3棟いずれとも不明ですが、作風からして安土桃山かそれ以降のものでしょう。
祭神は諏訪神社なので、中央の本殿はタケミナカタと見て良いでしょう。左右の本殿は不明。大国主と事代主(タケミナカタの父と兄)でしょうか?
余談ですが春日造の本殿は正面の扉を複数設けることは基本的にありません。なので祭神が1柱でない場合、似た造りの本殿が複数並ぶことが多々あります。
本殿(中央)の軒を見上げた図。
写真中央の象の木鼻は造形がやや粗めで、比較的古いもののように見えます。
松飾りがやや邪魔ですが柱上で桁や垂木を受けている組物も、よくみると極彩色に塗り分けられていたような形跡が見られ、ここもやや古風です。
本殿(右)は中央の本殿と同様の造り。
ただし向拝柱(手前の角柱)の側面についている木鼻が異なります。中央の本殿は象の牙まで造形されていたのに対し、こちらは象のようなシルエットになっているだけで牙などは造形されていません。
本殿(左)は本殿(右)と見分けがつかないくらいにそっくり。
こちらの本殿は四角く削られた石の基盤の上に置かれています。
最後に参道の途中にあった神代杉(かみよすぎ)。
案内板*1によると樹齢約1000年、高さ29メートル。
以上、諏訪神社(畑)でした。
(訪問日2020/02/23)
*1:佐久穂町教育委員会による設置