今回は山梨県甲府市の塩澤寺(えんたくじ)について。
塩澤寺は湯村の温泉街の北部に鎮座している真言宗の寺院です。山号は福田山。
開山は空海、開基は空也とされる古刹で武田氏や徳川氏からの庇護を受けたとのこと。伽藍については立派な山門があるほか、本尊が祀られている地蔵堂は江戸初期の造営で国指定重要文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒400-0073山梨県甲府市湯村3-17-2(地図) |
アクセス | 甲府駅から徒歩40分 甲府昭和ICから車で15分 |
駐車場 | 5台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり |
公式サイト | 厄除地蔵尊福田山塩沢寺 |
所要時間 | 15分程度 |
境内
山門
塩澤寺の境内は南西向き。境内は山の斜面にあります。
入口に立つ山門は銅板葺の入母屋。正面3間・側面2間。柱はいずれも円柱。三間一戸の楼門。
2階に掲げられた扁額は山号「福田山」。
柱は貫と虹梁(こうりょう)でつながれています。
柱上の組物は三つ斗ではなく挿肘木(さしひじき)になっており、斗(ます)を介して2階の縁側を受けています。
木鼻はすべての頭貫にあるのではなく、隅の柱にだけつけられています。
2階の柱上の組物は出三斗(でみつど)をベースとした出組。軒桁が一手先に持出しされています。桁下には軒支輪。
軒裏の垂木は平行にのびており、二軒(ふたのき)の繁垂木。
母屋は、広くとられた中央の柱間に2つ折れの桟唐戸(さんからど)が立てつけられています。その左右の柱間には連子窓。
左側面(北西面)。
側面の意匠は正面とあまり差異がなく、壁も板が張られているだけでした。
背面。
中央の桟唐戸の上に蟇股(かえるまた)が置かれており、左右の柱間に窓がない点が正面と異なります。
蟇股の内部には花菱の紋が彫られていました。
山門の内部から境内を見た図。
階段の先に見えるのは地蔵堂。
地蔵堂
境内の中心には地蔵堂が鎮座しています。
梁間3間・桁行4間、寄棟(妻入)、銅板葺。
造営年代については、案内板*1によると室町後期、文化遺産オンラインによると江戸初期とのこと。国指定重要文化財。
本尊は地蔵菩薩。
正面は柱間3間で、柱上の組物は出三斗。軒裏は二軒のまばら垂木。
中央の柱間には2つ折れの桟唐戸が立てつけられており、その左右の柱間は格子の窓のついた壁。窓の上には長押が打たれています。
右側面。
側面は4間。幅よりも奥行きのほうが若干長いです。
側面の組物や軒下は正面側とほぼ同じですが、こちらの面は正面から3つ目の柱間が引き違いの板戸になっています。
右後方から見下ろした図。
背面は補修のあとが見られますが、縦方向に壁板が張られています。また、貫を多用して補強している様子が見られます。
縁側は欄干のない切目縁が4面にまわされています。
床下。
縁の下はC面取りの縁束で支えられています。
母屋の柱は床下が八角柱に成形されていました。
右後方から俯瞰した図。写真左奥が正面です。
屋根は宝形のように見えますが、奥行きのほうが長いので棟があり寄棟です。正面に対して大棟が前後に伸びているので、この薬師堂は妻入。寄棟で妻入というのはちょっとめずらしいです。
屋根面は平面ではなく軒先がわずかに反っていて、くどくない程度に柔らかな曲面になっています。
最後に地蔵堂の隣にあった西堂なる仏殿。
銅板葺の切妻、正面と背面に千鳥破風(ちどりはふ)。柱は円柱。
以上、塩澤寺でした。
(訪問日2020/06/20)
*1:山梨県教育委員会と甲府市教育委員会による設置