今回は山梨県甲府市の塩澤寺(えんたくじ)について。
塩澤寺(塩沢寺)は甲府市街北西部の湯村温泉に鎮座する真言宗智山派の寺院です。山号は福田山。通称は厄除地蔵尊。
創建は『甲斐国社記・寺記』*1によると、808年(大同三年)に空海が当地で地蔵菩薩像を彫って祀り、955年(天暦九年)に空也が地蔵菩薩を本尊にして塩澤寺を開いたのがはじまりとのこと。1266年(文永三年)には、蘭渓道隆が伽藍を再建して中興したようです。室町時代は武田氏の庇護を受けましたが、江戸時代は同市山宮町の明王院という寺院の末寺となりました。
伽藍は湯村山の斜面にあり、主要な伽藍は近現代のものです。本堂に相当する地蔵堂は室町末期から江戸前期の建築と考えられ、国の重要文化財に指定されています。また、堂内の地蔵菩薩坐像が県の文化財に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒400-0073山梨県甲府市湯村3-17-2(地図) |
アクセス | 甲府駅から徒歩40分 甲府昭和ICから車で15分 |
駐車場 | 5台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり |
公式サイト | 厄除地蔵尊福田山塩沢寺 |
所要時間 | 15分程度 |
境内
山門
塩澤寺の境内は南西向き。境内は温泉地の北側にある山の斜面に鎮座しています。
入口の山門は、三間一戸、楼門、入母屋、銅板葺。
下層は正面3間。
中央の通路部分は広く取られ、左右の柱間には仁王像が安置されています。
柱は円柱。上部に挿肘木の斗栱が付き、上層の縁側を受けています。
通路内には天井が張られています。
門扉は板戸で、花菱の紋があります。
上層。扁額は「福田■」(■部判読できず)。
正面3間で、柱間は中央が桟唐戸、左右が連子窓。
軒裏は平行の二軒繁垂木。
向かって右の柱間。
柱間は貫でつながれ、頭貫に木鼻があります。
柱上の組物は出組。中備えはありません。
背面。
上層の中央は桟唐戸で、頭貫の上に蟇股があります。
左右の柱間は、上層下層ともに横板壁。
地蔵堂
山門をくぐると、石段の先に地蔵堂が鎮座しています。
本尊は地蔵菩薩。
梁間3間・桁行4間、寄棟(妻入)、銅板葺。
造営年代については、案内板*2によると室町後期、文化遺産オンラインによると江戸初期とのこと。「塩沢寺地蔵堂」として国指定重要文化財。
正面は3間。中央は桟唐戸、左右は格子の窓。
柱はいずれも円柱で、軸部は貫と長押でつながれています。
中央の桟唐戸の上の中備え。
蓑束が使われ、通肘木を介して軒桁を受けています。
右手前(南)の隅の柱。
頭貫には禅宗様木鼻があります。
柱上の組物は出三斗。実肘木ではなく、通肘木が使われています。
右側面。正面よりも側面のほうがやや長くなっています。
側面は4間。柱間は板壁と引き違い戸。
軒下の意匠は正面とほぼ同じですが、側面は平三斗も使われています。
軒裏は平行の二軒まばら垂木。
背面は3間。柱間は貫が多用され、縦板壁が張られています。
縁側は切目縁が4面にまわされています。欄干はありません。
地蔵堂を右後方(東側)の丘の上から見た図。
屋根は妻入りの寄棟で、短い棟が前後方向に伸びているのが確認できます。
写真奥が西の方角で、甲府市湯村地区や甲斐市の市街地を見下ろせます。
堂内の地蔵菩薩坐像。室町時代の作で、県指定有形文化財。
堂内は、前方の外陣と後方の内陣に区切られ、内陣部分に厨子と地蔵菩薩が置かれています。内陣外陣の境界部は、鴨居の上に菱組みの欄間が張られています。
西堂
本堂向かって左側には、西堂が隣接しています。
切妻、正面千鳥破風付、背面切妻(妻入)、銅板葺。
正面の軒下。扁額は「西堂」。
柱は円柱で、長押と貫でつながれています。建具は桟唐戸。
頭貫には禅宗様木鼻があります。
柱上の組物は平三斗。軒桁を直接受けています。
左側面。
側面は3間で、側面後方に縁側が設けられています。
妻飾りは二重虹梁で、板蟇股が使われています。
背面は中央の1間が突出し、切妻(妻入)の屋根が後方へ伸びています。
以上、塩澤寺でした。
(訪問日2020/06/20,2024/03/16)