今回は長野県根羽村の八柱神社(やはしら-)について。
八柱神社は国道153号沿線の山林に鎮座しています。
本殿は簡素な神明造でとくに目立った意匠はありませんが、そのかわりなのか境内や拝殿の構成が少し変わっていて、独特な雰囲気になっています。
現地情報
所在地 | 〒395-0701長野県下伊那郡根羽村万場瀬1552(地図) |
アクセス | 飯田山本ICから車で40分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
八柱神社の境内は西向き。鳥居は石製の両部鳥居。
境内入口には長野県飯田市と愛知県豊田市を結ぶ国道153号が通っており、線形の良い快走路のため飛ばす車も多く、横断注意。
石段を登って行くと、2段になった石積みの上に拝殿が見えてきます。
中央の大木は「八柱神社の神代スギ(右)」。拝殿の隣にこれと同じ規模の大木がもう1本あり、そちらは「八柱神社の神代スギ(左)」となっていました。
両者ともかなり立派なスギの木ですが、ここから国道を南下して1km足らずの距離には「月瀬の大スギ」という県下最大級の大木があったりします。
参道の右脇のほうをみると、ずいぶん離れたところに手水舎がありました。
この手水舎の位置からして、国道沿いの道からまっすぐと石段を昇る道は本来の参道ではないように見えます。
拝殿の前には独特な造形の狛犬が置かれています。
首と腰に布が掛けられており、まだあまり汚れていないところから察するに、氏子から大切にされている様子がうかがえます。
拝殿
拝殿は銅板葺の切妻(平入)で、正面3間・側面3間、向拝1間。
側面3間のうち正面側の1間は吹き放ちになっており、どことなく仏堂のような雰囲気。
大棟にはハトのシルエットを並べた八の字が描かれていました。大抵この紋は八幡宮で見られるものです。
拝殿の外陣(?)には3つの扁額が掛けられており、中央は「八柱神社」、右は「六柱神社」、左は「伊勢神明宮」とありました。
造営年代は不明ですが、江戸中期以降のものでしょう。
向拝は几帳面取りされた角柱が使われており、角柱を左右につなぐ虹梁(こうりょう)には菊水の意匠が彫刻されています。左右の木鼻は正面側が唐獅子、側面が象。
柱上の組物は、出三斗(でみつど)と連三斗(つれみつど)を組み合わせたもの。
向拝の奥は仏堂の外陣のような壁のない空間になっており、やはり角柱で支えられています。
虹梁の中備えの彫刻は題材不明、角柱の側面には象鼻がついています。柱上の組物は出三斗。
母屋の円柱と角柱は流麗なS字曲線を描く海老虹梁(えびこうりょう)でつながれており、正面の向拝の柱へも同形の海老虹梁でつながれています。個人的にこの海老虹梁を連続させるところが非常におもしろいと思いました。
やや大型の拝殿のため、妻壁も凝った造り。
出組で持出しされた妻虹梁の上に、腰が膨れた短い大瓶束(たいへいづか)が3本立てられており、その上の梁に長い大瓶束が立てられています。大瓶束の上の組物には拳鼻がつけられています。
破風板の拝み(最上部)には懸魚が付けられていますが、桁の木口をカバーする桁隠しはついていません。
本殿
拝殿の裏の一段高い場所には本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の神明造(しんめいづくり)。正面の間口はおそらく3間。側面は1間なので神明造としては略式です。
屋根には千木(内削ぎ)と鰹木(本数は6?)があり、破風板からは鞭懸(むちかけ)という4本の棒が突き出ています。垂木はまばらで一重。桁隠しはないですが鼻隠しが使われています。
母屋の外ではやや内に転んだ円柱が大棟を支えており(棟持柱)、縁側はありません。
以上、八柱神社でした。
(訪問日2020/02/08)