今回は長野県東御市新張(みはり)の滋野神社(しげの-)について。
滋野神社(新張)は東御市北部の県道94号沿線に鎮座しています。
赤色の塀と本殿(?)が印象的な神社で、本殿は江戸中期のものとのことですが、長野県神社庁の解説とは合致しない点が多くあり、疑問符がつく内容となっています。
現地情報
所在地 | 〒389-0501長野県東御市新張310(地図) |
アクセス | 滋野駅から徒歩50分 東部湯の丸ICから車で5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道と拝殿
滋野神社の境内は南西向き。入口の石鳥居は柱の転び(傾き)がやや大きめに造られているのが印象的。
木の茂った参道を進むと二の鳥居があります。扁額は「滋野神社」。
先にある拝殿とは中心が少しずれています。
鳥居の先には拝殿。
拝殿は桟瓦葺の入母屋(平入)、向拝1間。
訪問日は歳末の最後の土日だったため、2年参りの支度で拝殿が開いていました。
拝殿の右側面。
入母屋の建物の左右に切妻がついた構成になっており、ちょっと変わった造りをしています。
本殿(?)
拝殿の裏手にまわると、赤い塀に囲われた本殿があります。
本殿は銅板葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。正面3間・側面3間、向拝1間。
長野県神社庁のサイトを見たところ、本殿は“一間社流造 杮葺き 元禄4年江戸中期建立の棟札”とのことで、説明と実態がぜんぜん一致しません...
長野県神社庁によると祭神はタケミナカタと事代主で、大同年間(806年)に御牧の役人の滋野氏によって創立されたとのこと。つまり諏訪神社の系統です。
本殿の右側面。
母屋(壁に囲われた空間のこと)は2つの区画に分かれているようで、正面側(写真左側)はおそらく各種の神事をおこなう場所、奥(右側)は神体が安置される空間になっていると思われます。
また、奥側は柱が円柱であるのに対し、正面側は角柱を使っています。寺社建築では角柱よりも円柱のほうが格上であるため、このように柱を使い分けることで空間の格のちがいを示すのが基本です。
右側面の全体図。
正面側が長く、ひらがなの「へ」のようなシルエット。これは流造の基本なのですが、その正面からさらに庇が伸びています。滋賀県の神社本殿でよく見かける構造です。
大棟の鬼板には諏訪梶の紋があり、諏訪大社の系統であることがわかります。
屋根の側面の破風板(はふいた)はシンプルな懸魚が1つ垂れているだけで、飾り気のない造り。
右後方から見た図。
背面の柱間は3間。縁側は背面にもまわされており、欄干は跳高欄(はねこうらん)。
妻壁の組物は、平三斗(ひらみつど)というタイプのものが使われているだけで、梁を持ち出すようなことは一切していません。組物の下に突き出ている緑色の木鼻もシンプルな造形。
正面の向拝(階段を覆う庇)の軒下。
階段は4段で、断面が長方形の角材を使っています。
以上、滋野神社(新張)でした。
(訪問日2019/12/28)