世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【静岡市】御穂神社と三保松原 ~「神の道」の果てに立つ式内社~

今回は静岡県の超メジャー観光地ということで、御穂神社(みほ-)について。

 

御穂神社は駿河湾に突き出した三保半島に鎮座しています。

式内社であるだけでなく、世界遺産・富士山の構成資産「三保の松原」(みほのまつばら)として御穂神社も登録されています。

海岸線では駿河湾の向こうにそびえる富士山を望め、「神の道」と称される長大な参道の先には江戸中期の社殿を拝むことができます。

 

 

現地情報

所在地 〒424-0901静岡県静岡市清水区三保1073(地図)
アクセス

JR清水駅にてしずてつジャストライン乗車、三保松原入口バス停で下車

清水ICから車で30分

駐車場 三保の松原に200台(無料)、御穂神社に5台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト なし
所要時間 三保松原-御穂神社は往復で30分程度

 

境内

三保の松原

三保の松原から眺める富士山

駐車場に車を置き、神社とは反対方向にある海岸線に向かうと名勝・三保の松原に出ます。

広い砂浜では、駿河湾の向こうに高々とそびえる富士山を望むことができます。

 

羽車神社

松原の中には海に向かって鎮座する羽車神社という祠があり、その裏手に羽衣の松が立っています。

 

羽衣の松

そしてこちらが伝説に語られる羽衣の松

羽衣伝説は全国各地に伝わっており、そのほとんどが「男が羽衣を見つけ、羽衣の持ち主である天女と結婚する」という導入は共通しています。しかし三保の羽衣伝説は根本的にストーリーがちがっていて、「男が素直に羽衣を返すと、天女はお礼の舞を披露して天へ帰っていった」というあっさりした結末になっているのが特徴的です。

 

そんな神秘的な伝説に水を差すようで申し訳ないのですが、この松を見ても、伝説に登場したほどの風格や貫禄があるようには思えません...

どうやらこの松はせいぜい樹齢200年程度のもののようで、何度も代替わり(植え替えや挿し木)を経て今に至るようで、生えている場所も当初の松とは別とのこと。

私の経験上、「〇〇公お手植えの松」(桜の場合もあり)みたいなのはだいたい3代目かそれ以降のもので、本物ではないです。

難癖はこの辺にして、本題の神社のほうに行きましょう。

 

御穂神社参道「神の道」

御穂神社参道、神の道

三保の松原から駐車場のほうへ引き返し、海岸とは反対方向へ向かうと、松並木の参道が伸びています。

羽衣の松に降臨した神が御穂神社へ向かうための道なので、「神の道」という名前がついているようです。

参道は板が敷かれた歩道になっており、このような道が一直線に500メートルほど続きます。徒歩で移動すると片道10分弱くらいかかります。

 

御穂神社参道、神の道を北から見た図

三保神社の鳥居の前から参道を振り返った図。

ご覧のように、参道は消失点に達するほど長いです。

 

御穂神社

御穂神社の入口

ここまで長かったですが、ようやく御穂神社に到着。

延期式内社の1社に指定されており、古くは三保大明神とも呼ばれたとのこと。

 

御穂神社の神楽殿

境内に入ると、拝殿の前に神楽殿が立っています。

神楽殿は銅板葺の入母屋(妻入)。正面1間・側面2間で、柱はいずれも円柱。屋根裏の垂木は一重でした。

甲信ではあまり見かけないタイプの神楽殿ですが、柱に円柱が使われているのがちょっと珍しいです。

神楽殿の右には手水舎がありました。

 

御穂神社の神馬舎

参道の右手には神馬舎(写真右)と末社(左)があります。

静岡浅間神社では「神馬が火災のときに御穂神社まで逃げていった」いう伝説がありますが、それに対応する内容がこちらの神馬舎の案内板にも書かれていました。

 

境内社

御穂神社の境内社、神明造

御穂神社には境内社も多数あります。

上の写真は神明造(しんめいづくり)の社殿で、正面に扉が3つあります。母屋の柱は円柱。右から神明社、八幡神社、八雲神社。

神明造なのに、神明社は真ん中ではなく右端のようです。

 

御穂神社の境内社、子安社

子安社のひしゃく

そしてこちらは子安社。流造(ながれづくり)で、柱はいずれも角柱。

大量のひしゃくが奉納されているので、案内板を見るまでもなく安産祈願の神社だとわかります。

ひしゃくは底が抜けていない通常のもので、「これで安産祈願になるのか...?」と疑問に思いましたが、よくみると底に指一本が通るくらいの穴が開けられていました。穴の開けかたがまちまちなので、おそらく奉納者が手作業で開けているのでしょう。

 

拝殿と本殿

御穂神社の拝殿

境内の中央に位置する拝殿は、銅板葺の入母屋(妻入)で、正面に向拝1間。柱はいずれも角柱で、屋根裏の垂木は一重。

 

御穂神社の拝殿の屋根

全体的に拝殿は特筆することがないのですが、屋根の上の意匠がちょっと変わっています。

鬼板についている鳥衾(とりぶすま ちょんまげみたいなやつ)には円盤のような装飾がついており、まるで手鏡が屋根に載っているかのよう。

 

御穂神社の本殿を左側から見た図

拝殿の裏には本殿があります。

本殿は銅板葺の三間社入母屋(さんけんしゃ いりもや)で、平入、正面3間・側面2間。向拝なし。柱はいずれも円柱。

1668年に火災で焼失したのち、「仮宮」として再建されたものが現在の本殿とのこと。

ふつうの神社本殿は正面に庇を伸ばすのですが、仮宮なのでそれがない理由にも納得が行きます。

 

屋根の上には内削ぎの千木と、6本の鰹木が載っています。

内削ぎの千木と偶数本の鰹木は女神の神社の特徴...と言われますが、『延喜式』によると主祭神は大国主(別名 三保津彦命)で、男神です。

千木と鰹木で祭神の性別がわかるという話はデマと大差ない俗説なので、このように矛盾してしまう例も珍しくないです。

千木・鰹木の俗説についての詳細は、下記リンクをご参照下さい。

【寺社の基礎知識】鰹木(かつおぎ)と千木(ちぎ)

 

御穂神社の本殿右側

本殿右側面。

壁の上のほうでは、多数の組物が屋根裏を支えています。

ふつうの組物は柱の真上に配置されるものですが、この本殿は柱の真上でない場所にも組物があります。こういった組物を詰組(つめぐみ)といい、神社ではあまり見かけません。たいていは寺院に使われるものです。

 

御穂神社の本殿の背面

右後方から見た背面。

三間社なので正面は柱間が3つでしたが、こちらも柱間は3つとなっています。

なお、背面には詰組は使われていませんでした。

 

社殿の解説は以上。

社殿についてはそこまで変わった個所はなく、建築的な見どころはそれなりといった感じでしょうか。

やはり最大の見どころは海岸から続く長大な参道で、砂浜で富士山と松原を眺めてから神の道をたどって御穂神社を参拝する散歩コースは、まさに贅沢の極み。素晴らしいの一言に尽きます。

 

以上、御穂神社と三保の松原でした。

(訪問日2019/11/29)

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