世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【山梨市】大嶽山那賀都神社 ~甲州随一の荘厳さを誇る修験霊場~

今回は山梨県のマイナー観光地ということで、山梨市の大嶽山那賀都神社(だいたけさん ながと-)について。

 

大嶽山那賀都神社は、山梨市から秩父市へ抜ける国道140号線の沿線の山奥に鎮座しています。清流沿いの参道を1kmほど登った先に社殿があり、せせらぎの音に包まれた境内の中で、立派な社殿を楽しむことができます。

 

 

現地情報

所在地 〒404-0206山梨県山梨市三富上釜口617(地図)
アクセス

山梨市駅または塩山駅にて西沢渓谷行きのバスに乗車 天科バス停にて下車

勝沼ICから車で30分

駐車場 30台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト 大嶽山那賀都神社【公式情報サイト】
所要時間 1.5時間程度
備考 駐車場から拝殿まで片道30分程度

 

境内

参道

f:id:hineriman:20191030120844j:plain

駐車場に車をとめ、人家の庭先と間違えてしまいそうな道から川沿いに入ると、那賀都神社の参道が現れます。ここから拝殿まで片道30分くらいで、道は舗装されてはいますが、坂の急な個所があるので運動靴で参拝するのが無難です。

境内には紙と串でつくられた小さなのぼり旗が無数に立てられており、参道の脇を急な川が流れています。このような景色がしばらくつづきます。

 

f:id:hineriman:20191030120921j:plain

参道の下を流れる川。笛吹川(富士川)の支流です。

写真は、まるで城下町の「鍵の手」みたいに屈曲した箇所。なぜこうなったのかは謎。

水はきれいなのですが流れが急なうえ、すぐ下流には滝があるので川遊びは危険極まりないです。

 

f:id:hineriman:20191030120935j:plain

参道の中間地点あたりの鳥居。ここを過ぎると境内の景色が変わってきます。

 

f:id:hineriman:20191030121033j:plain

f:id:hineriman:20191030120959j:plain
鳥居の先は、苔の生えた石段になっており、右大臣・左大臣の像や狛犬が両脇に控えています。

参道のヒノキの幹がツルツルになっていますが、これはおそらく屋根葺きのために檜皮(ヒノキの樹皮)を剥がしたためでしょう。なお、この大嶽山那賀都神社に檜皮葺の社殿はありません。

 

f:id:hineriman:20191030121100j:plain

参道を進み、赤いトラス橋をわたると随神門が見えてきます。

このトラス橋は揺れるうえ真下に急流が水しぶきを上げているので、スリルを求めないなら脇道のコンクリートの橋を通ったほうが無難だと思います。

 

随神門

f:id:hineriman:20191030121134j:plain

f:id:hineriman:20191030121155j:plain

随神門は2階建ての楼門になっています。

屋根は入母屋(平入)で、正面に軒唐破風(のき からはふ)付き。正面3間・側面2間で、柱はいずれも円柱。案内板(大嶽山那賀都神社宮司による設置)によると1904年(明治37年)の造営とのこと。

 

f:id:hineriman:20191030121218j:plain

正面右側。随神門は多数の彫刻で埋め尽くされています。

写真右の木鼻は唐獅子と象、中央下半分は波に鶴、上半分は何かの故事を題材としたものと思われますが題材不明。

彫刻は都留市谷村の工匠・福田俊秀氏がこの地にこもり半生を捧げて作ったものとのこと。

 

f:id:hineriman:20191030121239j:plain

随神門の中には天狗が控えており、内部にも彫刻が配置されています。

このあたりで天狗を崇拝する寺社というと高尾山薬王院(八王子市)がありますが、高尾山が飯縄権現であるのに対し大嶽山那賀都神社はオオヤマツミ(大山祇)が主祭神なので、関連性はないでしょう。

 

f:id:hineriman:20191030121305j:plain

随神門の軒下を見上げた図。

屋根裏の垂木は二重になっており、それを受ける桁は二手先(ふたてさき)の組物で持出しされています。

木鼻は正面・側面ともに唐獅子でした。

 

手水舎と神楽殿

f:id:hineriman:20191030121322j:plain

随神門を過ぎると、参道の左側に手水舎が現れます。

鉢の奥には丸い鏡が置かれいるのが独特。すぐ横を川が流れているので、しっかりと水が出ており、よく手入れが行き届いている様子でした。

 

f:id:hineriman:20191030121337j:plain

あと一息で拝殿に到着するのですが、ちょっと脇道にそれた場所には立派な神楽殿が建っています。

神楽殿は銅板葺の入母屋。後述しますが棟が十字になっているため、妻入・平入どちらなのかわかりません...

案内板によると災害で手水舎とともに流失したため、1963年(昭和38年)に再建したものとのこと。

 

f:id:hineriman:20191030121409j:plain

随神門は垂木は二重で柱は円柱でしたが、こちらの神楽殿の垂木は一重でまばら、柱は角柱でした。

とはいえ、彫刻が各所に配置されていてにぎやかなのは随神門と同様です。

 

f:id:hineriman:20191030121422j:plain

神楽殿右側面の床下。

床下にも抜かりなく彫刻が配置されています。人物像が彫られていますが、題材は不明。

 

拝殿

f:id:hineriman:20191030121441j:plain

参道に戻ると、最後は急な階段になっています。この階段を登った先が拝殿です。

階段は、踏み板(?)の幅が短いわりに段が高いので、雨天の日や足腰の弱い人は要注意。

両脇には狛犬が控えていますが、小さい上に痩せていて、ちょっと貫禄に欠けます...

 

f:id:hineriman:20191030121500j:plain

なんとなく頼りなさが否めない狛犬の代わりなのか、最後の階段の途中には両脇に天狗の像が控えています。

どちらかと言うとコミカルで愛嬌のある造形なので、急な階段を上がる参拝者を応援してくれているように見えなくもないです。

 

f:id:hineriman:20191030121520j:plain

そして階段を登った先には社務所を兼ねた拝殿があります。

両脇にある懸造りっぽい構造物は、右が休憩所、左がお札やお守りの授与所。授与所ではバリエーション豊かなお守りが売られていたので、長い参道を歩いてここまで来た記念として買って行くのも良いでしょう。

 

f:id:hineriman:20191030121539j:plain

また、飛礫(つぶて)占いというアトラクション(?)もあります。

ここで専用の石を買い、参道の途中にある岩に向けて投げ、石の乗った場所で大吉・中吉・小吉を占うというものです。

 

f:id:hineriman:20191030121554j:plain

拝殿前の休憩所から見下ろした境内。

境内は深い谷の中にあるので見晴らしはあまり良くないですが、前述の神楽殿を上から眺めることができ、みごとな十字棟になっている様子がわかります。

 

本殿(立入禁止のため拝観できず)

f:id:hineriman:20191030121618j:plain

f:id:hineriman:20191030121631j:plain

拝殿の裏の山の頂上には立派な本殿があるようなのですが、大嶽山那賀都神社の公式サイトによると、拝観はお断りしているとのこと。

いちおう本殿へ向かう道があったので、上の写真にある砂防ダムを越えて駄目元で行ってみましたが、「禁足地のため立入禁止」という立て札があったので断念。ウェブで検索してみると、以前は一般の参拝者も本殿まで行けたようです。

 

本殿については山梨市公式サイトに写真が載っているので、下記リンクをご参照下さい。

大嶽山那賀都神社本殿 - 山梨県山梨市オフィシャルサイト『誇れる日本を、ここ山梨市から。』

リンク先の写真を見ていただくと、普通の神社本殿とはちがった独特の造りになっていることがお分かりいただけるかと思います。

本殿の様式は一間社入母屋(いっけんしゃ いりもや)で、正面と左右側面に向拝1間。屋根葺については不明。造営は明治時代とのこと。

独特な建築様式の豪華な本殿を見られなかったのは非常に残念でしたが、楼門や神楽殿が立派なので、これだけでも充分に見ごたえがありました。

 

この神社は普通に観光名所として楽しめる内容だと思うのですが、土曜日の昼間にもかかわらず境内には人影がなく、長い参道を往復してすれちがったのは3人だけで、ほぼ貸しきり状態でした。

どちらかといえば雰囲気を楽しむ感じのパワースポット的な観光地なので、寺社にあまり詳しくない人にもお薦めできます。

 

以上、大嶽山那賀都神社でした。

(訪問日2019/10/26)