甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【諏訪市】岩久保観音堂

今回は長野県諏訪市の岩久保観音堂(いわくぼ かんのんどう)について。

 

岩久保観音堂は諏訪市南東部の山際に鎮座しています。

創建は不明。もとは古岩久保という場所にあったのを当地に移転したようです。現在の観音堂は大隅流の名工・柴宮長左衛門の作で、各所に多数の彫刻が配された派手な造りになっています。

 

現地情報

所在地 〒392-0012長野県諏訪市四賀山崎6563(地図)
アクセス 上諏訪駅から徒歩40分
諏訪ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

参道と仁王門

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岩久保観音堂の境内は西向き。

旧甲州街道に面した場所に入口があります。目印らしいものは写真の石碑くらいしかないため、訪問時は要確認。

 

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参道を登って行くとすぐに仁王門が現れます。

仁王門は三間一戸、桁行3間・梁間1間、切妻、鉄板葺。

一見すると八脚門のような形式ですが、梁間に柱が1本足りないので八脚門とは言えません。どう呼称したらいいのか困ってしまう形式です。

 

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母屋柱は円柱で、上端が絞られ粽になっています。

柱間には虹梁がわたされ、虹梁の下部は拳鼻と組物によって持ち送りされています。

扁額は「大照閣」。

 

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柱の上には台輪がまわされ、台輪と頭貫には禅宗様の木鼻がつけられています。

柱上の組物は出三斗で、中備えは蟇股。写真の蟇股は兎と思しき彫刻が入っています。

 

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妻飾りは古風な板蟇股。妻虹梁の上の板蟇股が棟を受けています。

軒裏は一重のまばら垂木。

破風板の拝みからは懸魚が下がっています。

 

岩久保観音堂

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仁王門から階段を登った先には岩久保観音堂があります。

桁行3間・梁間3間、入母屋(平入)、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。

1792年に移転、翌1793年再建棟梁は大隅流の柴宮長左衛門矩重

内部の厨子と格天井は、移転前の古岩久保観音堂のものが使われているとのこと(諏訪市教育委員会の案内板より)。

 

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向拝柱は几帳面取り角柱。

虹梁は唐草が彫られ、中備えは空間いっぱいに大きな龍の彫刻が配されています。

扁額は「観音堂」。

 

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向拝柱の木鼻は正面が唐獅子、側面が象。どちらも非常に良い造形。

柱上の組物はベースとなる大斗が二重になっており、下側は木鼻がつき、上側は肘木を受けています。

 

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海老虹梁と手挟の彫刻もみごと。

向拝と母屋をつなぐ海老虹梁は竜が彫刻され、こちらは昇り竜。

手挟は「波に亀」。柴宮長左衛門が多用した題材です。

 

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向拝の反対側、左側面(北面)。

こちらの海老虹梁は降り竜。

手挟は波に亀ですが、反対側とは構図がちがいます。

 

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母屋柱は通常の円柱。上部には台輪がまわされています。

正面中央の柱間には両開きの桟唐戸。

扁額は判読できず。

 

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正面左右の柱間は引き戸。その上の欄間にも彫刻が配されています。

柱上の組物は出組。持ち出された桁の下にも菊水の彫刻があります。

 

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頭貫の木鼻にも彫刻があり、題材は唐獅子と獏。

唐獅子の彫刻は、向拝のものとは作風がちがっています。

 

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右側面(南面)の全体図。

柱間は引き戸。縁側は欄干のない切目縁が3面にまわされています。

引き戸の上の欄間には、正面と同様に彫刻があります。

 

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妻壁。

妻飾りは単純な大瓶束で、その左右はただ板が張られているだけの状態。

破風板は拝みと桁隠しに懸魚がついています。

懸魚はあるものの、軒下の派手さとくらべると妻はやや地味な感が否めません。

 

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母屋の左側面(北面)。

こちらの欄間には彫刻がありませんが、柱の上部にはやはり唐獅子・獏・象の木鼻がついています。

軒裏は二軒の繁垂木。

 

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背面は3間で、孫庇のようなものがついています。

 

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最後に鐘楼。入母屋、鉄板葺。

柱は角柱、木鼻は象鼻。内部は格天井になっています。

 

以上、岩久保観音堂でした。

(訪問日2020/11/16)

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