今回は長野県須坂市の小坂神社(おさか-)について。
小坂神社は須坂長野東ICの近くにある井上集落に鎮座しています。
創建は不明ですが平安期の『延喜式』に記載がある式内社のようです。鎌倉期に当地を開拓した井上氏が八幡神を祀ったことから「小坂八幡」の別名もあるとのこと。社殿については規模・様式ともに至って標準的な内容ですが、境内はケヤキが茂っていて式内社にふさわしい雰囲気があります。
なお、社名の読みについて須坂市公式サイトの文化財のページに「おさかじんじゃ」とあったので、当記事ではこの読みを採用しています。
長野県神社庁のページを見ると「おざかじんじゃ」と書かれていたので困惑しましたが(2020/09/01現在)、urlには"osaka"とあるので、やはり「おさか」が正しいようです。
現地情報
所在地 | 〒382-0045長野県須坂市井上2578(地図) |
アクセス | 須坂駅から徒歩45分 須坂長野東ICから車で5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道と社殿
小坂神社の境内は南向き。
鳥居は木造の両部鳥居。稚児柱と笠木には屋根がかかっており、扁額の上にも唐破風(からはふ)の庇がついています。
扁額は「小坂神社」。
唐破風の上の庇には、小さいながらも虹梁(こうりょう)や蟇股(かえるまた)といった意匠があって凝った造り。
参道の右手には手水舎。銅板葺の切妻。
こちらもなかなか凝った造り。
柱は几帳面取りの角柱。虹梁の木鼻は象鼻。虹梁の上には蟇股。
拝殿は鉄板葺の入母屋(平入)。向拝なし。
壁は腰の高さまで板が張られているだけで、それより上は吹き放ち。
大棟の紋は左三つ巴。
本殿
拝殿の裏には板塀に囲われた本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
造営年は不明。おそらく江戸中期以降と思われます。
祭神は八幡神(誉田別命など)と建角身命(たけつねのみこと)。
正面の軒先を支える向拝柱は、几帳面取りされた角柱。向拝柱の側面(写真手前)には獏が彫られた木鼻がついています。
虹梁の上の中備えには蟇股が置かれていますが、正面から見ることができないので題材がわからず。
向拝柱と母屋をつなぐ海老虹梁(右上)は、向拝柱の柱上へ降りてきています。高い位置に降りているからなのか、向拝柱の柱上には手挟(たばさみ)が見当たりません。
母屋の右側面(東面)。
母屋柱は円柱で、上部は頭貫と長押で固定され、その上に台輪がわたされています。頭貫には唐獅子の木鼻がついているのですが、台輪にも木鼻がついており、唐獅子の頭に台輪木鼻が載っているという珍妙な外観。
組物は出組。二手先に持出された妻虹梁のでには、笈形(おいがた)付き大瓶束(たいへいづか)が大棟を受けています。
破風板は拝みや桁隠しに雲状の意匠が彫られた懸魚(げぎょ)が下がっています。
背面および縁の下。
縁側は切目縁(きれめえん)が4面にまわされ、欄干は跳高欄(はねこうらん)。脇障子なし。床下は縁束と平三斗(ひらみつど)で支えられています。
母屋柱は、床下が八角形に成形されていました。
最後に本殿の左手(西側)にあった境内社。こけら葺の一間社流造。
本殿と較べると簡素ですが古風な造り。
以上、小坂神社でした。
(訪問日2020/08/11)