今回は長野県千曲市の佐良志奈神社(さらしな-)について。
佐良志奈神社は千曲川西岸の市街に鎮座しています。
長野市・千曲市の一部に相当する更級郡(さらしなぐん)に11社ある延喜式内社の1つ。創建年などは不詳ですが、少なくとも平安時代には存在していたと思われる古社です。
社殿については大規模かつ素朴な本殿があり、境内や社叢の雰囲気も良好。“さらしな”の郡名を冠するにふさわしい神社です。
現地情報
所在地 | 〒389-0813長野県千曲市若宮2-イ(地図) |
アクセス | 戸倉駅から徒歩20分 更埴ICまたは坂城ICから車で15分 |
駐車場 | 20台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道と拝殿
佐良志奈神社の境内は南向き。
入口は境内の東と西にあり、こちらは千曲川に面した境内東側の入口。
鳥居は石製の両部鳥居で、扁額は「佐良志奈神社」。
そしてこちらは西側の入口。写真左奥の石碑は、幕末の松代藩士・佐久間象山の揮毫とのこと。
鳥居は木製の両部鳥居で、銅板の屋根がついています。扁額は「佐良級神社」。
ちなみに“さらしな”は更級・更科・讃科などいろいろな表記があります。郡名としては“更級郡”が正しいです。
拝殿の手前、参道の左手に手水舎。銅板葺の切妻。
手水舎の軒下は、木鼻や蟇股(かえるまた)などがあって凝った造り。
拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。向拝1間。
赤っぽい壁面が特徴的。
向拝の軒裏は二軒(ふたのき)のまばら垂木。軒を支える向拝柱は几帳面取りされた角柱。
向拝柱の木鼻は独特な造形をしていますが、しめ縄がかけられているせいでよく観察できず。
母屋の正面の引き戸にかけられた紫の幕には、三つ巴の紋が描かれています。
拝所の鈴を鳴らすための綱は、感染症の接触感染の予防のため脇へよけられて使用禁止となっていました。
本殿
拝殿の裏には塀に囲われた本殿が鎮座しています。
桁行3間・梁間2間、三間社流造、向拝3間、銅板葺。
本殿としてはかなり大規模な部類になりますが、派手な彫刻の類は見られず、全体的に質素で素朴な外観。
造営年代は不明。とくに文化財指定されていないところから察するに、おそらく江戸初期以降のもの。
祭神は誉田別命(応神天皇)、神功皇后、仁徳天皇の3柱。
正面の向拝は赤い桟唐戸(さんからど)でふさがれています。開いた桟唐戸の中には木製の狛犬が見えました。その他は暗くてよく見えず。
右側面。
破風板・懸魚・柱・頭貫・長押は赤色、梁・組物・台輪・木鼻は白色、壁板は黒色で塗装されています。
写真左で向拝と母屋をつないでいる白い梁は、海老虹梁ではなくまっすぐなものが使われています。母屋側は頭貫の高さから出ていますが、向拝側は組物の上から出ていて桁と同じ高さ。
母屋の側面(梁間)は2間、つまり柱間が2つあります。
柱上の白い組物と梁の上には、赤い豕扠首(いのこさす)が妻飾りとして配置されています。
組物と頭貫からは雲状の意匠がついた木鼻が突き出ています。よく見ると頭貫の上の台輪にも木鼻が付けられています。
台輪の木鼻は、前述の桟唐戸とともに禅宗様の意匠です。
背面(桁行)は3間、つまり柱間が3つ。
軒下を見ると、側面にはなかった白い間斗束(けんとづか)が柱間に立てられています。
縁側は切目縁(きれめえん:壁面と直交に板を張った縁)が4面にまわされており、赤い欄干は擬宝珠付き。脇障子はなし。
縁側の床下は赤い角柱の束で支えられ、黒い縦板でふさがれています。よって柱の床下は観察できず。
屋根は箱棟になっており、棟には千木と鰹木。千木は外削ぎで風穴があいたもの。鰹木は3本。棟の鬼板には三つ巴の紋。
千木と鰹木がついた屋根のシルエットが背景の社叢と青空に映えます。
以上、佐良志奈神社でした。
(訪問日2020/04/14)