世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【上野原市】犬島神社 ~川沿いの集落の長閑な産土神~

今回は山梨県のマイナー観光地ということで、上野原市の犬島神社(いぬしま-)について。

 

犬島神社は大月市との境界に近い桂川南岸の集落に鎮座しています。

境内は拝殿と本殿のみといった内容で、特筆するような箇所は見られません。標準的な産土神、村の鎮守といった神社ですが、本殿はとても状態がよく小ぎれいな外観となっています。

 

 

現地情報

所在地 〒409-0122山梨県上野原市川合3809(地図)
アクセス

四方津駅から徒歩20分

上野原ICから車で15分

駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

拝殿

犬島神社の鳥居

犬島神社の境内の全景。鳥居や社殿は南向き。

入口の鳥居は神明鳥居で、笠木が円柱になったタイプのもの。

ご覧のように灯篭と鳥居、そして拝殿と本殿くらいしかない非常にシンプルで小規模な境内となっています。

 

犬島神社の拝殿

拝殿は鉄板葺の入母屋(平入)。扁額は「正一位 犬嶋大明神」。

扁額がかかった梁にツタのような意匠があるほか、これといった装飾はなし。屋根裏は一重のまばら垂木。

 

本殿

犬島神社本殿

拝殿の裏には本殿が鎮座しています。

本殿は一間社入母屋(いっけんしゃ いりもや)、平入。向拝1間。

 

案内板などがなく造営年代は不明。山梨県神社庁の情報によると1751年の再建との記録があるようです。

祭神については、山梨県神社庁にはアマテラス、ツクヨミ、大国主、少彦名とあります。とはいえ、拝殿にあった「犬嶋大明神」なる神も祀られていると思われます。

 

犬島神社本殿の向拝

向拝の正面。

虹梁の中備えには黒く塗装された龍。虹梁の両端には、正面側は唐獅子、側面は獏の木鼻がつけられています。

 

犬島神社本殿の母屋正面

母屋の正面。

黒い扉の両面には梅と思しき彫刻。

頭貫の上には蟇股(かえるまた)が置かれており、その上の梁には鳳凰ともカラスともつかない黒い鳥の彫刻が取り付けられています。ここに鳥の彫刻を配置するのはちょっと風変わりで、他にないこの本殿の個性といえるでしょう。

 

犬島神社本殿の向拝右側面

右側面から見た向拝の軒下。

左側の向拝柱は角柱で、几帳面取りされた部分が黒く塗り分けられています。右端に見切れている母屋の柱は円柱。両者はゆるやかにカーブした海老虹梁(えびこうりょう)でつながれています。

向拝柱の上には組物が配置されており、その上では牡丹の意匠が彫られた手挟(たばさみ)が垂木を受けています。

 

犬島神社本殿の右後方

右後方。

側面・背面ともに頭貫の上には蟇股、木鼻は拳鼻。組物は二手先の出組で、尾垂木が斜めに突き出ています。

 

気になったのが壁面で、なぜかここだけ材質がちがううえ、板が縦方向に張られています。壁板を縦方向に張るのは禅宗様の寺院建築くらいで、神社では横方向に張るのが常識です。

この辺りの作法を知らない人が、適当な木材で修理してしまったのではないでしょうか...?

 

犬島神社本殿の右後方の床下

右後方の床下。

縁側の床板は、おそらく壁と平行に張ったくれ縁。縁側は前後左右の4面にまわされています。欄干は擬宝珠つき。

背面側は樹木の意匠が彫られた脇障子でふさがれていました。脇障子の彫刻は欠損してしまうことが少なくないですが、この本殿はしっかりと左右ともに残っています。

 

縁側の床下は二手先の組物で支えられており、横長な肘木の上に4つの斗(ます)がずらりと横並びして黒い梁を受けている様子が印象的。

母屋の柱は床下をよく見ると八角柱になっており、定番の手抜き工作がなされていました。

 

全体的に塗装がきれいであまり古さを感じられませんが、この規模の神社にしてはよく手入れされていて塗装の状態も良好。各所の意匠もくどくない程度に凝っていて、華やかでありながら適度な間があると思います。

文化財指定があったり歴史が古かったりする神社ではないものの、とても大切に保存されている様子がうかがえ、好印象を受けました。

 

以上、犬島神社でした。

(訪問日2020/01/24)

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